2019年公立高校訪問1校目は、毎年安定の秦野高校から。
本編のレポートに入る前に前置きから。毎年秦野高校は快く高校訪問の依頼を受けて入れてくださいます。私が毎年近隣の公立高校を訪問し、校長先生にあれこれとインタビューできるのも、私が所属している学習塾団体の私塾協同組合が各高校に依頼し、それを快く引き受けてくれる高校があるからです。
毎年多くの高校に訪問の受入れをお願いするのですが、秦野高校のレスの早さはダントツです。だから毎年の高校訪問は秦野から始まります。校長先生が代々変わっても、外に対して柔軟でオープンな姿勢は毎年変わらずなので、校長先生が云々というよりも、これは秦野高校の校風と言ってもいい。
さて、そんなオープンマインド精神溢れる秦野高校に今年もお邪魔し、校長先生にお話を伺ってきました。
(過去記事もどうぞ)こうやって掘り返すと、めっちゃ秦野高校の記事書いてる。
- 秦野高校の誠実さと秦高生の真面目さに感動したという話。(2018年)
- 新校長体制の秦野高校は、生徒が「骨太」な古き良き伝統校!(2018年)
- 【学校訪問レポート】この4年間で秦野高校はこう変化してきた。(2017年)
- これが秦野高校の「学校力」!創立90年を迎えた秦高がとにかく熱い!(2016年)
- 大学進学実績で大躍進!変わりつつある秦野高校の教育改革の秘訣。(2015年)
- 進学校?部活校?秦野高校の現実(2014年)
とにかく「骨太」な秦高生
これまで県内の超進学校や工業高校や総合高校、定時制高校まで、実に様々な10校の公立高校で教鞭を執ってこられた経歴を持つ今田校長が秦野に着任されたばかりの1年前、秦高生の印象を「今まで着任してきた高校の中で秦高生が一番『骨太』だ」とおっしゃっていた。
あれから丸1年が経過し、着任2年目となった今の今田校長の目に秦野高校はどう映っているのだろうか。
今田校長「昨年と変わず、『骨太』な生徒が多いなという印象です。これはもともと骨太な生徒が多く入学してくるという意味ではなくて、秦野高校で3年間を過ごす中で生徒が骨太に育っていくんだなと、この1年間秦野高校で過ごしてみて実感しました。」
では、1年経過したことで新たに見えてきた課題は何だろうか。
今田校長「課題はもちろんあります。一番は、生徒たちの勉強の仕方に対する意識です。秦高生は、通学途中の電車やバスの中で勉強している子がとても多い。いわゆるスキマ時間を有効に使っているようです。ICT推進校でもあるので、生徒たちは自分のスマホで勉強できる環境にあります。ただ、そういったスキマ学習だけで勉強した気になっていて、自宅でじっくりと学習する時間が不足していると感じています。」
「文武両道」を日々実践している秦高生だ。一生懸命部活動をしてクタクタになって帰宅した後に勉強時間を一定時間確保するのはなかなか難しいことだろう。ただ、学力向上には問題集と格闘するまとまった時間が絶対的に必要で、通学途中のスキマ時間での勉強では不十分だ。校長先生の言い分も分かる。
その課題に対してどのように対策しているのかと伺うと、「家庭学習の時間を確保できるように、課題を多く出しています。」とのこと。
秦高生は部活も本当に一生懸命頑張る。その中で、家庭学習の時間もきちんと確保するように求められるし、それ相応の家庭学習も出される。まさに、文字通り「文武両道」を求められる忙しい生活を送ることで、心身ともに鍛えられ、「骨太」な生徒に育っていくのかもしれない。
秦野の代名詞”ICT”は文房具のように
もはや「文武両道」と並ぶ秦野高校の代名詞となったICT教育。
県内の公立高校に先駆けていち早く校内にWIFI環境を整えるなど様々な場面でICT利活用をリードしてきた秦野高校だが、現在はどの公立高校でもWIFI環境が整備されるようになった。WIFI環境やICT環境のハード面はとっくに整備されている秦野高校は現在、ICT利用のソフトの面の充実に目を向けているようだ。
今田校長「今後は生徒のスマホを使った授業や指導をもっと研究し、効率化していくつもりです。ICTを特別な機器ではなく、鉛筆などの文房具と同じような感覚で使えるようになればと思っています。」
ICTを文房具のように。さすが、秦野のICT教育は、WIFI等のハード面の整備で大満足しているだけの他校よりも、一歩も二歩も先を進んでいると感じた。
大学入試制度が変わる中での秦野の取組み
現高2生からセンター試験がなくなり、激変と言っていいほど大学入試が大きく変わる。そんな中、秦野高校はどのように対応しているのだろう。
今田校長「やはり指定校推薦の利用は増えてきていますね。秦野は伝統校なので、指定校推薦枠は充実しています。ただ、上を目指す生徒が多いのと、必ずしも希望の学部学科が揃っているわけではないので、毎年指定校推薦の枠を全部は使いきっていない状況です。」
とのこと。ちなみに主な大学の指定校推薦枠は、東京理科大4/上智3/青山学院16/明治4/中央16/法政9/立教2/学習院3/横浜市立大1など(平成30年度)。
公立トップ校の先生の中には昔から指定校推薦枠を嫌う人がいて、指定校推薦を使うなんて逃げだ的なことを言い出したり、そこまでハッキリと言わないまでも指定校推薦に関してはお茶を濁したり言及したがらない先生も多いが、今田校長先生はそうではなさそうな印象を受けた。
今田校長「うちは何がなんでも国公立とは思っていません。ただ、難関大学を最初から諦めるのではなく、それぞれが目指す大学に合格できる学力を身につけてもらいたいと思っています。一方で、全国的に有名ではない地方大学にも、専任教授1人あたりの学生数が少なく、とても良い環境で勉強できるところもあります。そういった情報も発信していきながら、生徒たちには視野を広げてもらいたい。」
国公立にこだわらない。ただ難関大を諦めない。
これは秦野高校が県の学力向上進学重点校へのエントリーに手を挙げなかった理由の一つでもある。
学力向上進学重点校にエントリーすれば、否が応でも国公立や早慶上智のような難関大の合格者数を追わなければいけない。でも、秦野はそれをやりたいわけではない。かといって、そういった大学進学を諦めてもいない。秦野は秦野のやり方で、入ってきた生徒を伸ばす。これが過去数年の秦野高校のスタンスだ。今田校長先生も、そのスタンスをしっかりと受け継いでいるようだ。
外部試験の利用で混迷を極める英語についてはどうか。今田校長によると、他の多くの公立高校同様GTECを採用しているとのこと。また、学力向上進学重点校でよくあるような、2年生のうちに全員英検2級程度を目標などといった数値目標はないとのこと。英検は生徒が個人的に受験しているよう。
この時代に、あえて秦野高校を選ぶメリットは
補助金による私立高校の実質授業料無料により、いまや公立高校と私立高校の金銭的格差はほとんどない。また、不透明な大学入試改革により、早くから安心を手にしたい家庭は高校入試の時点で大学付属の学校を選ぶ傾向にある。
そんな時代に、私立の整った設備の綺麗な校舎とは対照的な伝統とは聞こえが良いが実際は所々ボロがきた校舎で、私立の手厚い指導とは対照的な生徒の自主性を重んじる指導の公立高校に通う意味とはなんだろうと、考える時がよくある。
その質問を直球で、今田校長先生にぶつけてみた。
今田先生、いまの時代に、あえて公立高校に、もっと言うと秦野高校に通うメリットとは何でしょうか。
今田校長「骨太なたくましい人になるということです。秦高生は、部活動も、勉強も、学校行事も一生懸命頑張る伝統が脈々と受け継がれている。それはとてもしんどいことだけれども、それによって骨太なたくましい人間に育っていく。公立高校には元々そういう文化があって、特に秦野はそれが顕著です。それが一番のメリットではないでしょうか。」
感想
秦野高校訪問後に帰宅する際、同席していた先生と「秦野、ホントあいかわらずだね」と笑い合った。
そう、相変わらずなのだ。
校長先生が変わろうが世の中が変わろうが、秦野高校は相変わらずなのだ。
働き方改革や部活動問題が盛んに議論される昨今においても、相変わらず「文武両道」を叫び、生徒も先生も部活動にも勉強にも一生懸命になっている。県立高校改革で進学重点エントリー校が雨後の筍のように増え、特色検査だ何だと話題になっても、秦野高校は「うちはうちのやり方で入ってきた子をしっかり伸ばす」とスタンスを一切変えない。
秦野は、何年経っても相変わらず秦野なのだ。
それが秦野高校の強さであり、らしさであり、伝統であり、校長の言う「骨太」な生徒が育つ環境なのだと、改めて思った。
秦野は、チャラついたイメージがなく、何事にも一生懸命取り組む素直な生徒が多い。それゆえ、近隣の同偏差値校(海老名・座間等)と比較しても、大学進学実績は安定している。うちの卒塾生を考えても、秦野へ進学した生徒はみな、素直で真面目で頑張り屋で落ち着いていて、いろんな意味でバランスの良い生徒たちばかりだ。
秦野、良い学校だなと、行くたびに思う。
【秦野高校入試説明会スケジュール】
・ 10月26日(土)12:50〜15:10(授業公開・部活動見学含む)
・ 11月23日(土)10:00〜11:20
詳細はhttps://www.pen-kanagawa.ed.jp/hadano-h/nyugaku/gakkousetumeikai.htmlにて