賢くなりたければ本を読め!私と湘南生、小田高生がオススメする本など

2015年6月12日

湘南に進学した卒塾生が昨日、後輩のためのノートを届けるために塾に来てくれて、ついでに読んでいる本の話で大変盛り上がりました。彼女との会話の中から、私が最近読んだ中でのオススメの本や、彼女のオススメの本などについて紹介してみたいと思います。

中高生、そしてお父さんに読んで欲しい一冊

philipわが息子よ、君はどう生きるか フィリップ チェスターフィールド著 三笠書房

18世紀のイギリス最大の教養人であり、文人政治家でもあるフィリップが、青年期の自分の息子に宛てて書いた手紙を記した一冊です。およそ300年前に書かれたものですが、21世紀の現代に読んでも全く古めかしくは感じません。いつの時代に生きる人々、またどんな環境に生きる人々にとっても最も大切であろう普遍的で珠玉のような「人生の教訓」が記されています。人生論の名著として、イギリスのみならず全世界で1100万人もの人々に読み継がれているという事実もうなずけます。

まだ2015年は半分残っていますが、私の中でこの本は今年最大のヒットと言えると思います。できれば、もう少し早いうちに、少なくとも10代後半から20代前半の学生のうちに読んでおきたかったです。そうすれば、惰性的で無駄な日々を過ごすことはなかったのかもしれません。

この本の中の文を引用することはこれから読もうとしている人の妨げになってしまうので、本の小見出しのみを少し紹介してみます。

自己向上に「努力のしすぎ」はないーやがて社会で成功する日のために

友人は君の人格を映す鏡だ ー「温まりにくくさめにくい友情」こそが、ほんとうの友情だ

「虚栄心」を「向上心」に押し上げるーいつも「一番になりたい」という気持ちが能力を引き出す

生最大の教訓「物腰は柔らかく、意志は強固に」—「北風と太陽」に学ぶ自分の意見の通し方

少し難しい内容も含まれますが、基本的には息子宛に書いた手紙なので、口語調で中高生にも読みやすいと思います。なにより、父親から息子への深い愛が感じられ、読んでいるとまるで自分の父親に説教でもされているような、なんだか恥ずかしくも暖かい気分にもさせてくれる内容です。一度読んだだけで分からなければ何度も読んでみましょう。そして、自分が成長する過程で、折に触れて読み返してみてください。自分の成長度合いで、読む度に新しい発見をすることでしょう。

中高生だけでなく、子どもを持つお父さんにも是非読んで欲しい一冊です。

生物と無生物のあいだをも凌ぐ面白さ

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動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか 福岡伸一著 木楽舎

以前このブログで紹介した「生物と無生物のあいだ」と同じ著者福岡伸一のエッセイ集です。生物と無生物のあいだも面白かったのですが、動的平衡は、生命現象について、生物と無生物のあいだよりも私たちの身近に存在する具体例によって解き明かしているので、理系本に取っ付きにくい文系人間でも楽しく読めると思います。

たとえば、「記憶とは何か」では、人の記憶を司るモノの正体を明らかにしていたり、「なぜ、学ぶことが必要なのか」では、「生物学的制約から自由になるためである」と、生物学的な視点から学ぶことへの重要性を説いています。他にも、もっと身近な具体例だと、分子生物学の視点から科学的に検証された「ダイエットの科学」では太らない食べ方を紹介していたり、「なぜ歳を取ると一年が短く感じられるのか」についてを科学的に検証してみたりなど、とても興味を持って読める内容になっています。

福岡さんは分子生物学者なのですが、文章の書き方が非常に面白くもあり芸術的でもあり、読んでいるとどんどん引き込まれていく魅力があります。中でもこの本の第8章『生命は分子の「淀み」』に記された、象牙乱獲のターゲットとなり、ついには最後の一匹になってしまったアフリカの象が最後に行き着いた場所についてを読んだ時、不覚にも涙が溢れてしまいました。理系本で泣かされたのは、この本が初めてです。それほど、福岡さんが書かれた本は、科学的で、文学的で、芸術的でもあります。もしかしたら、「福岡さんが」ではなく、科学とは、文学的でもあり芸術的でもあるものなのかもしれません。

湘南生が選んだ、中学生のうちに読んでおいて欲しい本

湘南に進学した卒塾生は、中学生の頃から無類の読書家でした。食わず嫌いではなく、色々なジャンルの本をもの凄いスピードで読んでいた子です。ちなみに、この卒塾生だけでなく、昨年度小田原高校に進学した2名の女子もかなりの読書家でした。やはり、頭の良い子は本を読んでいます。しかも、ライトノベルや流行の小説だけではなく、昔の文学的小説や新書まで、色々なジャンルを読んでいます。

「中学生に、これだけは読んでおけと本を勧めるなら何を選ぶ」と湘南生に聞いてみたところ、以前この記事でも紹介した「嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え」と、ハーバード大学の超人気哲学講義をまとめた「これからの「正義」の話をしよう」の2冊をあげてくれました。どちらも決して中学生向けに書かれた本ではありませんが、この子は中学生の間にこれらを読破しています(嫌われる勇気は、私が彼女にプレゼントしたものです)。しかも、これからの「正義」の話をしようについては、中2のうちに読破したというから驚きです。

この子が勧めるように、この2冊のどちらも良書です。「これからの「正義」の話をしよう」はとても分厚い本ですが、読んでみると意外にも読みやすいのではないかと思います。正しい行い(のように見えること)がはたして本当に正義なのか、正しくない行い(のように見えること)が正義ではないのか。様々なケースを紹介しながら、正義の正体について読者に深く考えさせてくれる一冊です。

小学生も積極的に本を読もう

中学生以上に向けた本ばかり紹介してますが、小学生でも本を読むことは当然大切なことです。小学生に対してオススメの本は、100歳を超える今もなお現役で医師として活動しておられる日野原重明先生が8年前に書いた「十歳のきみへ―九十五歳のわたしから」です。タイトル通り、10歳を超えたあたりから読める内容となっています(さすがに10歳の小4では厳しいかもしれませんが)。

あとは、小学生のうちはなるべく良い小説を読みましょう。小学生が読むべき小説としては、重松清、灰谷健次郎、宮沢賢治あたりがいいのではないかと思います。私も、小学校教諭の母親の勧めというよりも半分強制的に、灰谷健次郎の「兎の眼」を5年生のときに、「太陽の子」を6年生のときに読みました。作者は違いますが、「二十四の瞳」も6年生のときに読んだ記憶があります。

新書なら、岩波ジュニア新書シリーズが面白いと思います(自分も思わず大人買いしたくなるほどです)。

まとめ

私は今、「ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)」という本を読んでいます。この本は、2年前に小田原高校に進学した卒塾生が、中学生の時に読んで非常に感銘を受けたと話をしていたものです。ちなみにこの卒塾生にも、先ほどの湘南生と同じように「中学生にオススメの本」を聞いてみたところ、「進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)」をあげてくれました。さすがです。

賢い生徒は、時折こちらがハッとさせられるような本を読んでいます。生徒に本を紹介するのではなく、生徒から紹介された本を読むのも私の楽しみの一つです。

生徒が読んでいる本について尋ねてみると、その子の知的レベルが手に取るように分かります。本を読んでいない子は、やはりモノを知りません。本を読んでいる子は知的好奇心も旺盛で、知識も豊富にあり、私などの大人と同じレベルで会話ができます。

本は教養を身に付けるためには欠かせないものです。「本を読んだ方が良い」というレベルのものではなくて、「読まなければいけない」というレベルです。特に10代の若いうちに、多くの良書を読みましょう。読んだ本の数とレベルが、必ずこれから生きていく上での皆さんの基盤となります。