先週は、定期テスト勉強会(カンヅメ)の生徒面談ウィークでした。私は毎年中3生の生徒面談を担当します。面談では、テスト勉強の進捗状況や間違い直しノートの精度のチェックや、現時点での成績から志望校に向けての今回のテストでの課題、前回のテストの結果を踏まえて今回改善するべきところをアドバイスしたりします。
自分で考え、分析し始めている中3生
定期テストに対してはある意味ベテランの域に達してきている中3生なので、私が修正する余地がたくさんある子はそこまでいません。精度の差こそあるものの、ほぼ全員自分の課題や前回の反省を考えた上で、定期テストの勉強をしています。
たとえば、前回国語のテストの結果が良くなかった生徒に対して、「前回の国語の定期テストで点数が思うように取れなかった原因は?」と聞くと、
「学校で配られたプリントを解いて満足して、プリントの解説部分までちゃんと目を通さなかった。だけど、テストでは解説部分からの出題が多く、結局取れませんでした。」というように、非常に正確な失点分析がなされています。
その後で「じゃあその反省を今回のテスト勉強に取り入れている?」と聞くと、「ハイ。取り入れています。」との返事がすぐに返ってきます。
他にも、前回の定期テストの解答用紙を一緒に振り返りながら、「なぜこの科目は目標点にいかなかったのだと思う?」と質問を投げかけると、
「この部分は、教科書の隅々まで覚えていなかったことが原因なので、今回は教科書の隅々までチェックするために一問一答を作ろうと思います。この部分は、正直言うと、勉強不足というよりも実力不足です。」と、失点の原因が、準備不足によるものなのか、もしくは実力不足によるものなのかの分析もできている生徒もいました。
教えない勉強会の成果
このブログでも何度も書いてきたように(たとえばこの記事「定期テスト対策授業は死んでもやりません。」)、うちの塾は定期テストの対策授業は対策授業をせずに、ひたすら何をやればいいのか生徒に考えさせる勉強会を続けています。これを続けるうちに、生徒はこのように、「点数を取るためにはどうすればいいのか」、「前回の失敗は何が原因だったのか」などを自発的に考えるようになります。
不安を抱いているからこそ、丁寧な勉強ができる
定期テスト対策授業をしないと、少なからず生徒は不安に思います。「これをやっておけば点数が取れる」というお墨付きがないからです。不安な気持ちを抱えた子供はどうするか。不安を払拭するために、学校のワークをコピーして何度も解いてみたり、前回のテストをよく分析してみたり、一問一答集を作ってみたりなど、色々な勉強法を試してみます。効率が良いものもあれば悪いものあったり、またテストの点数と直接結びつかないような勉強もありますが、このように試してみることにより、どんな勉強をすれば点数が上がるのか、または上がらないのかを体感できるようになります。不安を抱えながらやるからこそ、入念に、丁寧に勉強するのです。
大手塾時代に経験した対策授業の功罪
大手塾時代は、会社の方針に従って、血眼になりながら対策授業を行っていました。教科書の隅々までチェックして、過去問をくまなく分析し、生徒から学校で使っているノートやプリントを借りてどんな問題が出そうかを必死で予測し、対策プリントを作ったり対策授業に反映させたりしました。そこまですれば、当然ながら、生徒のテスト結果はメキメキと上がっていきました。
ところが、いくらこちらが必死になって対策授業をしても、講師は学校で実際に授業を受けているわけではないので、思わぬところからの出題があったり、対策授業で扱わなかったところから出たりします。あるいは、同じ意味の事柄であっても、学校の先生が教えた表現と塾で教えた表現との違いから、塾で教えた通りに回答したらバツを喰らうこともありました。
それで生徒が点数を取れないと、「先生が対策授業でやってくれなかったから点数が取れなかったじゃん!」となるわけです。そう言われてしまうと、「ごめんね。次の定期テストでは、もっとしっかりと分析するからね。」と、生徒に謝ります。もっとヒドいときには、「塾で教わった通りにテストで回答をしたら、バツになったんですがどうしてくれるんですか。」と保護者からクレームが来たこともあります。この場合も、「こちらの力量不足で、申し訳ございません。」と言うしかありません。
対策授業をやればやるほど、定期テスト対策に対して生徒、そしてその保護者の塾への依存度はますます強くなり、学校で配られたプリントやノートをせっせと塾に提出する以外は、ほとんど何もやらなくなってしまいました。そして、教えられたこと以外の勉強はせず、「対策授業さえ受けていれば安心」というスタンスになっていきました。点数が悪ければ、「塾で教えてもらえなかったからできなかった」と、自分の勉強法を省みることは一切なくなっていきました。
対策授業を欠席していた子
一方で、大手塾時代でも、上位層の生徒は意外にも定期テスト対策授業になると塾を休みます。休む理由を聞くと、「対策授業に出るよりも、自分で勉強したいので。」と言うのです。そして、対策授業に毎回出席している生徒よりも、家で自分で勉強をしていた子の方が、だいたいにして結果は上でした。もちろん元々の能力差の違いもあるとは思いますが、決してそれだけではありません。
対策授業に出席している子は、基本的に受身です。「先生が対策してくれる。私はその授業を受けさえすれば大丈夫。」というスタンスです。一方、自分で勉強する子や、うちの塾のカンヅメは、基本的に能動的です。「自分で対策しなくては、誰も自分の代わりにやってくれない。」というスタンスです。どちらの方が、より丁寧で綿密に勉強ができるか、明々白々でしょう。
まとめ
たくさんの塾が、生徒のために良かれと思って定期テスト対策授業をやっています。もちろん、対策授業をしてあげた方が、「早期的に」結果が出せるでしょう。しかし、長いスパンで考えれば、対策授業を受け続けるよりも、自分で勉強ができるようになった方が確実に結果が出ます。しかも、定期テスト勉強を自分でできるようになった子は、それを受験勉強など他の勉強にも応用できるようになります。
魚を与えるのではなく、魚のつり方を教えよ。
というのは老子の言葉です。与える=してあげるばかりではなく、つり方=自分でできる方法を教えよという意味です。しかし、もっと大切なのは、魚のつり方を本人自らが学ぶ、考え続けるということだと思います。
うちの塾は、こと定期テストに関しては、魚も与えず、つり方はある程度「型」を教えるだけ、あとはその「型」をもとに自分で考えなさいというスタンスです。このやり方だからこそ、各中学の定期テストでの学年トップクラスをうちの塾生が独占しているのだと信じています。