秦野高校、厚木高校と続いて、公立高校訪問3校目は平塚江南高校にお邪魔してきました。弊塾からは、2年生で2名、1年生に1名の卒塾生が通学しています。
3年ぶり2回目の訪問となった今回も、新たな発見がいくつもありました。平塚江南高校の今をレポートします。
3年前のレポートはコチラ→【平塚江南高校訪問レポート】昔ながらの進学校ながらも、トップ校としては珍しい面倒見の良さ!
数々の伝説を残されたパワフルな女性校長先生
今回我々の訪問に対応いただいたのは、昨年平塚江南高校に着任され、2期目を迎えられる土佐校長先生。前回訪問した3年前は前任の小野校長先生の時だったから、校長先生が変わるとやはり学校の印象はガラリと変わる。
土佐校長は、これまで大和や茅ヶ崎北陵のような平塚江南と同レベルの旧学区トップ校を始め、看護学校や夜間学校や、福祉科のある高浜高校等、バラエティーに富んだ高校を歴任され、各高校で色々な伝説に残る改革をされてこられたというとてもパワフルな女性校長だ。
そんな多種多様な高校生を見てこられた土佐校長は、平塚江南生のことをこう表現された。
「大人しく、純朴な生徒が多めだけれど、皆とても地頭がよく素直で真面目。まだまだ磨けば伸びそうな生徒がたくさんいる学校ですね。」とのこと。
そんな磨けば光る原石達が多く集う平塚江南高校で、土佐校長は今度はどのような改革に着手しているのだろうか。
学力向上進学重点エントリー校+理数教育推進校の2兎を追う教育
土佐校長「我が校は、学力向上進学重点エントリー校という顔と、理数教育推進校という2つの顔を持っています。その2兎をどちらもきちんと追っていくというのが、今の江南高校がやろうとしていることです。」
平塚江南は土佐校長が着任される前から理数教育推進校の指定を受けていたが、いよいよSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定に向けて本格的に動き出したとのこと。
具体的にはどのような変化があるのか。
土佐校長「主に大きく変えたのはカリキュラムです。令和2年度の入学生から、カリキュラムが大きく変わります。具体的には、2年生までは文系理系に分けず、生徒全員に5科目をきちんと勉強してもらいます。3年生は今までと同様文理に分け、さらに理系を2つに分けて個人個人の受験体制に対応しやすいようにしています。」
2年生まで文系理系に振り分けず、5科目をきちんと学ばせるというのは、最近のトップ校では主流になってきているカリキュラムだ。もちろん国公立に対応できるというのもあるが、各高校の校長先生の話を聞けば、単に国公立の実績作りのためという単純な話ではなさそう。そもそも、学問は文理の2つの領域のみに簡単に分けられるほど単純で狭いものではない。
土佐校長もこのようにおっしゃった。
「うちは理数教育推進校で、SSH取得に向けても動いていますが、何も理系に特化しているわけではありません。SSHや総合学習の研究だって、題材が理系でなくても、例えば歴史だっていい。SSHは、文系理系問わず、課題解決のための論理的な思考や創意工夫できる人物を育てようというのが一番の目的です。」
なお、平塚江南が正式にSSHに指定されるかどうかは、まだ定かではない。万が一SSHの申請をして正式に認定されなくても、基本的な方針は変えるつもりはないとのことだ。
湘南翠嵐厚木柏陽にはできないことを:ICT活用でリード
平塚江南は秦野のようなICT利活用推進の指定校ではないものの、ICTの活用に関しては積極的に動いている高校の1つだ。土佐校長も、早い段階で1人1台タブレットが持てる環境にし、授業のタブレット活用をより加速していきたいと意気込んでいる。
土佐校長「湘南・横浜翠嵐・厚木・柏陽にはできないことを、平塚江南の特色として打ち出していきたい。その一つがICTの積極的な活用です。進学重点エントリー校の中でICTについては本校がリードしていくつもりで動いています。」とのこと。
今年から神奈川県内の全県立高校にはWiFiが整備され、生徒全員分とはいかないまでもChromeBook数十台が導入されたとのこと。平塚江南はそれらをただ利用するだけでなく、Googleの教育プログラムの導入や、数学でのAIを利用したQubenaなども積極的に導入・活用しているとのこと。
丁寧で面倒見のよい指導
平塚江南を訪問した今日11月26日は、定期試験の真っ最中だった。我々がアポイントをとった13時にはすでにテストは終了していたようで、多くの生徒が帰宅していた時間帯だったが、我々が話をしている校長室の横の職員室の前に出された新品の机では、ずっと数学の先生が熱心に生徒達の質問対応をしておられた。
3年前の小野校長先生のときも、「うちの高校は派手さはありませんが、丁寧で面倒見のよい指導が売りです。」とおっしゃっていたように、面倒見のよい指導は土佐校長体制にもきちんと受け継がれているようだ。
土佐校長「どの高校も職員室の前に机を出して質問対応していると思いますが、平塚江南の職員室前の質問コーナーは本当にいつも多くの生徒達でいっぱいです。同窓会もそんな生徒達のために、今年新品の机を寄贈してくれたくらいです。」
とのこと。他にも、1年生の4月〜6月には、土曜日の部活動を禁止してまで全員必須参加の「土曜講習」を実施したり、1年生〜3年生の全学年対象に「難関大対策講座」が5科目全て毎週土曜日に実施されていたりと、「自主自律」が校訓ではあるが、勉強面についてはきちんとバックアップ体制を整えている。
中でも私が今回の訪問で一番驚いたのは、校長と教頭が、各教師が作成する全ての定期テストをチェックしているとのことだ。
土佐校長「平塚江南の先生達は、授業準備や教材研究で、他の高校に比べてもとにかく忙しくしています。私も定期テストの前はこの校長室で教頭と遅くまで残業しながら定期テストをチェックしていますが、この高校の定期テストは本当によく出来ているし、大学の入試問題をよく研究されていると感心します。」
やはりエントリー校とは言え、そこは学力向上進学重点校。授業や試験に対しては、学校が一丸となって取り組む体制が当たり前のように整っているようだ。
まとめ
前回平塚江南を初めて訪れた際、ここは「穴場だな」と感じた。
今回2回目の訪問でも、その感想は変わらない。いや、もっと強く確信したとも言える。
入試の偏差値は学力向上進学重点校エントリー校の中でも低く、加えて倍率も他校ほど高くない。昨年度の倍率なんて、最終倍率は1.14倍と、学力向上進学重点校とは思えないほどの低倍率だった。
しかし、低倍率だからと言って平塚江南が悪い高校なのかというと、そうではない。むしろ、部活や学校行事一辺倒の高校生活ではなく、きちんと勉強も大切にし、派手さはないが堅実で丁寧な指導をしてくれる良い高校だ。
進学実績はというと、昨年度の実績で国公立が63名、早慶上智が47名、MARCHが209名と、他の学力向上進学重点校と比べると国公立大への合格者数がやや劣ってしまうが、入り口の偏差値の低さから考えると健闘している方だと言える。
気になった人は、是非11月30日(土)の学校説明会に是非足を運んでみて欲しい。生徒会主導の手作りの学校説明会に、きっと平塚江南が大切にしているものを感じることができるだろう。