高校訪問3校目は平塚江南高校です。昨年度うちから2名の塾生が進学し、今年度も何名か第一志望としている塾生がいますが、なかなか訪問の機会がなく、今日念願の初めての訪問となりました。
初めての高校訪問はいつもウキウキします。今回も結果から言うと、とても有意義な高校訪問となりました。
では、初の江南レポ、始めます。
2020年に創立100周年を迎える県内有数の伝統校
「昭和38年に現在の校舎が完成し、翌39年に体育館が完成しました。あと4年後に100周年を迎えます。そんな伝統校であるがゆえに、施設は見た目にも古く、最近はいろんなところにガタもきています。この校舎から巣立ったOBやOGが、平塚市内だけでなく、全国で活躍されています。これは長い伝統の中で培われた財産です。この財産が、今の生徒達にも引き継がれていきます。」
今年の4月から平塚江南に就任された小野校長先生は、開口一番でこのようにおっしゃった。校長先生の言葉通り、平塚江南の校舎は古い。説明を受けるために通された2階の社会科教室も、薄型テレビが設置されてあるとは言え、教室の内部には、いわゆる昔の公立高校特有の古めかしさを感じる。
新しい校舎の高校に魅力を感じる中学生は多い。古い校舎の高校は、見た目で嫌厭されてしまう。しかし、自分自身も1933年(昭和8年)に建てられた校舎の高校で3年間学んだ経験から言えば、古い校舎には新しい校舎にはない独特な「空気」がある。
学校というのは毎年生徒が入れ替わる場所である。生徒だけではなく教職員も入れ替わる。校舎に集うメンバーは毎年違うはずなのに、なぜか共通した雰囲気を醸し出す。似たような「らしさ」を醸し出す。それが学校の伝統の力なのだと、色々な高校を訪問するたびに思う。ボロボロの壁にも、歩くと軋む床にも、その伝統の力が宿っている。それがその高校独特の「空気」となり、またそこに集う人の「らしさ」を作っていく。
地元平塚のトップ校としてそこに存在し続けている平塚江南の古い校舎にもまた、独特の「らしさ」を感じた。
平塚江南は昔ながらの進学校。派手さはないが丁寧な指導がウリ!
「学校としては非常に落ち着いています。部活動もさかんで、運動部だけでなく吹奏楽や競技カルタなどの文化部も頑張ってくれています。体育祭をはじめとした学校行事も大変盛り上がる。学習面では、国公立大を目指してしっかりと学習します。うちは、いわゆる『昔ながらの進学校』です。」
と、校長先生はおっしゃった。
今回の訪問で特に印象強かったのが、平塚江南の丁寧な学習指導・進路指導だ。
「90%以上の高3生がセンター試験を受けるので、国公立や難関大学にきちんと合格するような授業を心がけています。学区が撤廃になってから、平塚地区のトップ層が湘南や横浜翠嵐・柏陽に流れるようになりましたが、江南には優秀な生徒が多く、出口の大学実績の質は維持しています。」
とのこと。
校長先生のおっしゃる通り、過去3年間毎年現役で東大合格者を出しているのをはじめ、2015年度は東京工業大5名/一橋大2名/北海道大3名/横浜国立大14名/首都大学東京5名など、合計68名(うち現役42名)の国公立大学合格者を出している。
以前、「特色検査実施校・未実施校それぞれの2016年度大学合格実績を追う」という記事の中でも言及したように、平塚江南は他の高校と比較しても、入口の偏差値の低さを考えると出口の実績がなかなか健闘しているのが特徴だ。
その秘訣はどこにあるのか。
「うちのウリは、昔ながらの進学校であることと、きめ細かく進路指導を行うことです。」
と、校長先生・教頭先生が口を揃えておっしゃった。
「うちの校訓は『自主自律』ですが、それと矛盾するようですが、学習面においてはきちんとレールを敷いてやっています。勉強の習慣付けができるように、英数国を中心に課題は多め、副教材で持たせている問題集の数も他校と比べて多めです。部活を完全にストップして行う土曜講習も年8回程度あります。」
と、岸川教頭先生は付け加えられた。
公立トップ校は、どちらかというと勉強面に関しても生徒主体でやらせるところが多い中、平塚江南のように面倒見よく指導してくれるところは珍しい。生徒からすると、「勉強をやらされている」という印象を受けることもあるかもしれないが、先生達が一生懸命になって丁寧に指導してくれる校風も、平塚江南「らしさ」のひとつなのだろう。
理数教育推進指定校であるが・・・
平塚江南と言えば、今年度から理数教育推進指定校となっている。今も、8クラス中5〜6クラスは理系クラスという、理系を選択する生徒が多いのが平塚江南の特徴ではある。
「理数教育推進指定校ということですが、これはなにも理科数学の勉強を一生懸命力を入れてやっていくわけではありません。理数に限ったことではなく、課題解決のための論理的な思考を鍛えようというのが、一番の目的です。なので、理数に強くないと平塚江南を選べないということはありません。」
とのことだ。
どうやら理数教育=理数に特化というわけではなく、特に理数の勉強には欠かせない課題解決力を身につけさせたいという目的で、今後3年間、指定校として取り組んでいくとのこと。
平塚江南の特色検査の作問コンセプトは?
平塚江南の特色検査は、毎年出題パターンが固定されており、年々難しさを増す他の特色検査校と比べて問題の難易度も決して高くはない。ただ、江南の大きな特徴として、問題数が多いということが挙げられる。
参考:
- H28年度平塚江南高校特色検査研究と分析:攻略のポイントは、おなじみの文系問題で点数を稼ぐこと。
- 各高校の特色検査と学力検査の相関関係を調査してみた結果。
- 平塚江南2015年度特色検査研究:分析と対策法をまとめてみた
「基本的に、中学校までで培われた学力と、文章を読み取る力があれば得点できるような試験にしています。問題が多く、時間的に厳しい中での理解力と柔軟な発想もみたい。」
と校長先生はおっしゃった。
とは言え、平塚江南の特色検査は、他校に比べて文章読解力がなくてもなんとかなるような構成ではあるが、ユニークな発想が必要な問題は毎年出題されている。
校長先生が変わると特色検査や面接の内容も変わるということがあるが、来年度に関しては大きな変更点はなさそう。
まとめ
今回平塚江南を初めて訪れてみて、率直に感じたことをそのまま言葉にすると、「穴場だな」ということだ。
入試の偏差値はW合格もぎの基準でいうと66と、特色検査実施校の中では最も低い。加えて特色検査も他校のようにいたずらに難しい問題はない。倍率も直近2年間は1.2倍程度と、トップ校の中ではかなりの低倍率と言って良いだろう。
しかし、出口の大学進学実績ではきちんと結果を出している。部活や学校行事一辺倒の高校生活ではなく、きちんと勉強習慣を大切にし、派手さはないが堅実で丁寧な指導をしてくれる。
平塚江南には、教育の根本である「人を育てる」という土壌がある。学区が撤廃されて、決して昔みたいに1番手の生徒たちばかりが入ってくる状況ではなくなったとしても、入学してきた生徒を丁寧に導き、育てるという「学校らしい学校」だと感じた。