「分かる」と「できる」は違う。「できる」と「使える」は、もっと違う。

弊塾の算数・数学では、全学年で「10問テスト」というテストを毎回の授業で取り入れています。

「10問テスト」にはその名の通り問題が10問並んでいて、制限時間10分間で解きます。解いた後は答え合わせをし、間違えた問題は各自次回の授業までにやり直しをして、全部やり直しができたら終わりという流れです。

これは中3生の5月のある日の10問テストですが、このように基本的な計算問題はもちろん、1行問題のような小問集からちょっとした応用問題までその時々で身に付けるべき内容を出題しています。

この10問テストですが、特に数学の苦手な生徒には、「10問テストを毎日やりなさい」と言っています。

毎日やれというのは、一度解いてやり直しまで終えて、すべて答えや解き方がわかっている状態の過去の10問テストを、繰り返し毎日10分間で解きなさいということです。

特に数学が苦手な生徒が多い今の中2生には口酸っぱく言っています。どれだけ言っても結局毎日やる子は一握りなんだけれど、それを分かった上でそれでも「毎日10問テストをやりなさい」と言っています。頻繁に言うことで、こちらの真剣さとことの重大さが分かる子が一人でも増えたなら。そんな思いで言っています。それでもやらない子はやらないだろうけど。

では、なぜ「10問テストを毎日やりなさい」と言っているのか。決して根性論のみでやれと言っているわけではありません。

今日はその理由について、もう少し論理的に話をしてみたいと思います。

「わかる」と「できる」は違う

よく言われることですが、「分かる」と「できる」は違います。授業を受けて単元の内容や問題の解き方が頭で分かったとしても、それはイコール「できる」ということではありません。「できる」というのは、自力で問題を解けるようになることです。「分かる」状態からこの「できる」状態にするには、当然反復練習が必要になります。

中学生であれば、こんな話の一度や二度は聞いたことがあるでしょうし、「分かる」と「できる」の違いはさすがに理解しているとは思います。しかし、受験に通用する力まで身につけるためには、特にトップ校に合格するための得点力を鍛えるためには、「できる」状態でもまだ不十分なのです。

必要なのは、「できる」を「使える」に昇華させること

では「できる」の次に必要なのは何か。

それは「使える」ということです。特に受験生は「できる」を「使える」にまで昇華させないと、勉強しているのに実力が付かない、定期テストは取れても実力テストになればさっぱりという状態に陥ってしまいます。

10問テストに話を戻します。うちの塾の10問テストは、まず10分でテストを解き、間違った問題はできるようなるまでやり直しをします。10分で解けなかった問題も、じっくり時間をかければ解けるかもしれません。解き方が分からない問題は自分で復習をしたり、場合によっては先生にやり方を質問します。こうして、10問をすべて解ける状態に仕上げます。

このように、間違った問題を復習してやり直しすることは大切です。解けなかった問題はもう一度じっくり考えることも当然必要です。その結果、1時間かけて復習とやり直しをし、全部解けるようになったとします。しかし、矛盾するようですが、最終的に全部自力で解けたとしても、それではダメなのです。「できる」ようになったかもしれませんが、受験で「使える」状態には程遠いのです。

10問テストは10分で解くことを前提に作成しています。もっと言うと、10問テストを10分で解き切る力がついてはじめて、受験で「使える」力として定着するように作成しています。

「全部解けたけど1時間かかった」ではダメなのです。基礎的な問題を短時間で確実に正解まで辿り着けるスピードと正確さ、これを養う目的で作成しているのです。そしてその力こそが、入試で「使える」力なのです。

だから毎日10問テストを繰り返しなさいと言っています。

1時間かけてやり直しをしたものを、今度はきちんと10分で解き切る力を付けるためです。「できる」状態から「使える」状態へと昇華させるためです。10分でできるようになったら、今度は9分、8分を目指しましょう。そうやって毎日訓練していくと、どんどん「使える」力が蓄積されていきます。

あらゆる勉強やテストでも同じ

これはなにも弊塾の10問テストだけではなく、ほかのいろいろな勉強やテストでも同じことが言えます。

例えると、小学校で習う九九と同じです。九九で最も重要なのは、正確さと速さです。

たとえ自力で「できる」状態だとしても、「サブロク、えーっとなんだっけ…えーっと3が6こ分だから、15…いや違うな、あ、18だ!サブロク18!」という具合では九九が使えるとは言えません。「サブロク18!」と、反射的瞬間的に反応できるようにならないと、全く使いものになりません。

模試や定期テストを受け、間違ったところをやり直しする。多くの人はそれで満足してしまいます。でも、入試で「使える」力にまで昇華させるにはそれだけではダメで、もう一歩先の、制限時間内に全て解き切る練習が必要不可欠なのです。

模試やテストだけでなく、普段の勉強でも同じです。問題集を解いていて、最終的には自力できたけれど、ものすごく時間がかかってしまったのなら、それは「できた」かもしれませんが「使える」状態ではありません。使える状態に昇華するためには、本当にこのアプローチで良かったのか、ほかの方法はないのか、なぜ自分の計算が遅いのかなど、短時間で解く方法を分析し、実際に短時間で解けるように何度も練習をする必要があります。そこまでして、ようやく「使える」力として蓄積されていくのです。

まとめ

「わかる」から「できる」にするためには、解き直しが必要です。そして「できる」から「使える」にするためには、スピードを意識した上での反復練習の積み重ねが必要です。

最近の入試問題では、「思考力」が重視されています。パッと見ただけで解法が思いつくような典型的な問題が減少し、じっくりと考える必要のある問題が増えています。

思考力重視=基礎力軽視ではありません。むしろ、思考力が重視されているからこそ、余計に強固な基礎力が必要なのです。基礎を澱みなく自由自在に「使える」ことができるからこそ、思考できる余白と時間が生まれるのです。

そして、どれだけ数学が苦手な人でも、日々の反復練習を継続すれば基礎力は身につきます。週末だけ3時間みっちり数学の基礎練習をするより、毎日10分でもスピード感を持って基礎練習を継続した方が断然効果があります。

ここまで書いた上で塾生に向けてもう一度言いたいと思います。

毎日10問テストをやりましょう。