2期生の中学校の学生が対象のうちの塾では、来週あたりからそろそろ定期テスト期間になります。
定期テスト対策授業をやらないうちの塾では、たまに「定期テストの勉強法が分かりません」といった頓珍漢な質問をしてくる生徒がいます。そのような質問には、「問題集を4回繰り返したら嫌でもできるようになる。方法論ではない。」と答えるようにしています。だいたいこのような質問をしてくる生徒は、「4回やったら出来るようになる」と聞いたとしても実践はしないのですが。
別に適当に答えているわけではなく、物事をマスターするためには、徹底して同じ問題をしつこく繰り返すことに尽きます。そこで今日は、学習効果が絶大になる繰り返し方について書いてみたいと思います。定期テストだけでなく、受験勉強にも応用できる繰り返し方です。
これが実践できれば、大抵のことは出来るようになるでしょう。定期テストレベルなら、言わずもがなです。
初めて解くときは制限時間を決める
手持ちの問題集なり、学校で配布された問題集なりを自分で初めて解くときは、必ず制限時間を設定しましょう。1ページずつ、あるいは見開き2ページずつに区切り、自分で「○○分以内に解く」と目標を決めます。余程の高レベルの問題を解くのではない限り、気の向くままにのんびりと問題を解いてはいけません。日頃から制限時間を設けて問題を解いていくと、時間感覚が敏感になり、思考や動作にかかる時間もだんだん短縮されていくので、入試やテストでも強くなります。
また、モチベーションの面でも制限時間は一役買ってくれます。ダラダラと勉強するよりも、時間の目標があった方がヤル気と集中力が高まります。さらには、制限時間を意識することで、自分が問題を解くために必要な所要時間も把握できるようになります。つまり、自分の学力を客観的に捉えられるのです。
このように、制限時間を決めて問題を解くことは、あらゆる面でメリットが大きいのです。是非取り入れてください。
2度目に解くときは制限時間を縮める
さて、ここからが大切です。
問題を1度解き終わり、丸付けとやり直しをして満足し、次の問題やページに進む人が多いのですが、そこをぐっと我慢して、再度同じ問題やページを解きましょう。このとき、1度目と2度目の間隔をできるだけあけないこと。1度目を解いてすぐに2度目に取りかかっても良いくらいです。「そんなにすぐだと答えを覚えてしまっているから非効率だ」と思う人もいるでしょうが、答えを覚えてしまっている方がむしろ都合が良いのです。
すぐに2度目を解くメリットを整理してみます。
記憶が強固になる
1度目に問題を解くときは、ほとんどの場合手探り状態です。次にどんな問題が出てくるのか、どんなアプローチの仕方をするのか、どんな知識が必要なのかが分からない状態で解いていきます。問題を解くという行為は「アウトプット型」の勉強ですが、1度目はどんなアウトプットの仕方が有効なのかを「インプット」している状態であり、つまりは「インプット型」の勉強に近いのです。
このブログでも何度も触れていますが、勉強はインプットが4割、アウトプットが6割程度のバランスが最も効果が発揮されます。問題を1度解いただけでは、アウトプットが不十分なのです。
そこで1度解いた問題に再チャレンジします。すでに1度問題を解いているので、その問題の解き方や考え方、覚えなければいけない知識はすでに頭の中にインプットされている状態です。その状態で問題を解くと、本当の意味でのアウトプットの練習になります。1度目はつっかえながら解いていた問題でも、2度目は1度目に比べるとかなりスムーズに解けるはずです。再度アウトプットの練習をすることにより、インプットされた記憶・思考法・アプローチが強固になっていくからです。
新しい発見がある
同じ問題を2度解けば、別の解法を発見したり、問題文の見落としていた部分に気が付いたり、もっと効率的な解法を思いついたりと、1度目のときに気付かなかった新しい発見をする可能性が高くなります。別解を思いつくということは、一つの問題を多角的に捉えることができるということです。色々な側面から同じ問題を考えることにより、問題への理解がより一層深くなります。
速くなる
2度目に解くときは、必ず1度目よりも制限時間を短く設定してチャレンジしましょう。当然ですが、2度目は必ず1度目よりも速く解けるようになっています。できれば1度目の制限時間の半分の時間で、無理なら3分の2程度の時間で解きましょう。同じ問題でも、1度目の半分の時間で解くのはかなり厳しいはずです。その厳しい環境で2度目にチャレンジするからこそ、かなりのスピードが身に付きます。
数学の計算や英語の長文読解が遅くて悩んでいる人は、是非この方法を取り入れてください。これを続けると、計算スピードや読解スピードは短期間でかなり改善されるはずです。
3度目に解くときは「一人先生ごっこ」
次は3度目です。同じ問題を3度も解くとなると、そろそろマンネリ化が始まります。「もういいよ、分かったよ」という愚痴の一つでもこぼしたくなるでしょう。そうなってきたとき、ようやくあなたの学力は高まります。
受験生に対する授業で、「もういいよ、先生分かったよ。しつこいよ。と思えるくらいになれ。それくらいになったら、その問題は本当の意味で身に付いている証拠だ。いつまでも『へーそうなんだ』と新しい発見をしているような顔をするな。」とよく言いますが、しつこいと思えるくらい繰り返してようやく解法や知識・理論が身に付くのです。
3度目は、2度目から少し間隔をおいてチャレンジするといいでしょう。時間をおいたとしても、3度目ともなれば、多くの人は問題を見ただけで解法が分かります。場合によっては瞬時に答えまで分かるでしょう。しかし、3度目の挑戦で大切にしたいのは、スピードではありません。「解説」です。
3度目は特に制限時間を設けなくてもいいので(制限時間を設けてしまえばただの答え暗記に走ってしまう危険性が高くなる)、問題一つ一つに自分で解説を加えていきましょう。解説を全てノートに書く必要はありません。自分が先生になって生徒に解き方を教えてあげるつもりで、問題一つ一つを解説しながら解いていきましょう。ノートに書く必要はありませんが、心の中で解説するのではなく、できれば実際に声に出して解説します。この問題を解くのに何がポイントなのか、どういうところがつまづきやすいのか、すべて言語化してみます。
問題の解説を言語化してみると、本当にそれが分かっているか分かっていないのかが一目瞭然になります。話は逸れますが、よく「選択問題なら正解できるのに、記述問題になると得点できない」といった話を耳にします。これは、問題に対して漠然としか理解していないから、つまり頭の中で明確に整理できていないからに他なりません。選択問題であれば得点できるのは、「自分では説明できないけれど、漠然とは分かっているので、正解の選択肢があれば何とかなる」という状態に過ぎないのです。
3度目に解くときに解説を言語化する中で、スムーズに解説できない問題は、実は漠然としか理解していません。「分かったつもり」になっていただけなのです。それをあぶり出し、解説につまづいた問題は、もう一度なぜそうなるかを論理的に考え、ノートに筋道立てて解説を書いてみましょう。書けない時は、必ず学校や塾の先生にたずねるのです。このような勉強を繰り返すと、「選択問題ならできるのに記述問題になるとできない」という現象も少なくなっていきます。
4度目は、言語化に失敗した問題
まだ終わりではありません。次は4度目です。
4度目となると、全ての問題を解く必要はないでしょう。時間の効率を考え、3度目に言語化に失敗した問題のみをピックアップして解きましょう。しかし今回は、解説を口でぶつぶつと言語化するのではなく、最初からノートに文章化します。問題を解くというより、解説を書くと言った方がいいかもしれません。
これでスラスラとノートに書くことができれば、もうその問題なりページに書いてあることは、完全に自分のものになっています。定期テストや入試で、出題のされ方が少々変わったとしても、記述問題で出題されたとしても、きちんと対応できるまでになっているでしょう。