授業をしていると嫌でも気がつく「勉強ができない子の共通点」

2016年5月18日

この塾を開校してから今年で9年目になります。毎年思うことですが、なぜかそれぞれの学年の出来不出来に「隔年現象」というものがあります。学力的に楽しみな学年と不安な学年が、ほぼ1年ずつ交互にやってくるという現象です。

私が今頭を悩ませている学力的に不安な学年が、小6生と中2生です。そして今日はその2つの学年の授業がありました。学力的に不安な学年の授業には、他の学年の授業と比べ物にならないくらい生徒の一挙手一投足をジッと観察します。必ず、勉強ができない原因が行動に現れているからです。

今回は、学力的に不安な2つの学年の授業の中で気がついた、「勉強できない子の共通点」をまとめてみます。

聞き写しができない

聞き写しができない生徒で、勉強ができる子を見たことがありません。逆に、聞き写しはできるけれども、現状はイマイチ勉強ができないとしたら、それは今後伸びる余地は十分あります。

聞き写しとは、誰かが読み上げているのを聞きながら、それをそっくりそのままノート等に写すことです。うちの塾では、問題をホワイトボードに板書するとき、必ず問題をハッキリと読み上げながら板書します。勉強ができる生徒は、そのとき板書をほとんど見ることなく、講師が読み上げる問題をそっくりそのまま写すことができます。そのため、講師が問題をホワイトボードに書き終えるタイミングと、生徒がノートに問題を書き終えるタイミングがほぼ同じです。一方、勉強ができない生徒の場合、いちいちホワイトボードを見ながらノートに書いていきます。しかも、まとまった文章を一気に書き写しできないため、少し書いては顔を上げてホワイトボードを見て、また少し書いての繰り返しで、問題を書き終わるのに非常に時間がかかります。

最近は、学校でも塾でも、「書く時は書く」、「聞く時は聞く」とハッキリ行動を分けているところも多いようですが、私は「聞く」と「書く」という動作が並行連係できるように訓練することが大切だと思っています。

聞き写しは、正しく「聞く」と「書く」の並行連係動作です。これができるようになるためには、

  • 一言一句きちんと聞き取るための集中力
  • 聞いたことを瞬時に噛み砕くことのできる理解力
  • 聞いた言葉を文字化できる書く力

の3つの力が必要となり、これらの力は何の学習をする上でも欠かすことのできない能力です。また、聞き写しの発展系が「メモ書き」です。話を聞いていて大切だと思ったことを瞬時にメモを取ることは、高度な学習では必要不可欠になりますが、聞き写しに慣れていない人はメモすら取れません。

つまり、聞き写しができない生徒は、先ほど挙げた3つの能力のいずれかが欠けており、またメモを取る習慣もないために、なかなか勉強できるようにならないのです。

聞き写しは訓練次第でできるようになる

ただ、この聞き写しは訓練次第でかなり改善させる能力でもあります。うちの塾では、聞き写しの力が弱い学年には、問題を読み上げるスピードを落としながら読む代わりに、できるだけホワイトボードを見ずに聞きとったものを書けと指示をします。あえてホワイトボードに書かず、ただ問題や板書事項を読み上げて、それを書かせることもあります。

このような訓練を積んでいくと、生徒の聞く姿勢や聞くための集中力が少しずつ変わってきます。また、人によって差はありますが、だんだんと目に頼らずに耳で聞いた言葉を文字化できる量も増えてきます。その結果、メモを取ることができるようにもなり、同じ量の勉強をこなしていても、その成果はまるで変わってくるのです。

板書を写すスピードが遅い

先ほどの聞き写しの部分でも少し触れましたが、成績と板書をノートに書くスピードは比例します。勉強が苦手な子が、板書をノートに書くスピードが遅い最たる原因は次の通りです。

文章をまとまりで理解できない=書いてあることを「文章」として理解していない。

よって一文字ずつ、一文節ずつしか写せないので時間がかかる。

結果、「写す」という行為に「理解する」という行為が伴っていない。つまり、ただ写しただけ。

逆に、書くスピードが速い子は、板書の文章や図を自分でひとまず噛み砕いてからノートに書いていくので、板書を写すために顔を上げる頻度が極めて少ない。そして、ノートに写し終わったと同時に、写した内容をほぼ理解しています。つまり、板書を写すスピードが遅いということは、ただ文字を書くのが遅い、行動が遅いという以上に、そこに理解が伴っているか伴っていないかに依るところが大きいのです。

姿勢が悪い

勉強ができない子は、一定時間机に向かって勉強するという動作自体に慣れていないため、勉強するときの姿勢が良くないケースが非常に多く見られます。足をだらんと投げ出していたり、左手でノートを押さえずに書きにくそうにしていたり、背中が極端に曲がっていたりで、とてもじゃないけれど長時間勉強に耐えられる姿勢ではありません。それゆえ、勉強をしていて疲れるのも早く、集中力も欠けていきます。

登山に耐えるための筋肉は、登山を繰り返すことで鍛えられます。勉強も同じです。長時間の勉強に耐えるための姿勢は、習慣づいた勉強で鍛えられます。姿勢が悪い子は、一定時間の勉強を習慣付けてこなかった証拠です。

テストの問題を選り好みする

ここで一つ確認しておきたいことは、テストの問題を選り好みすることと、できる問題を先に選んで効率的に解くことは似て非なるものであるということです。

できる問題を先に選ぶという行為は、制限時間内に1点でも多く正解をしたいという心理からくる一方で、テストの問題を選り好みする行為は、自分にとって面倒くさい問題を解きたくないという心理からきています。つまり、両者はテストに対する心構えが全く違うのです。

一見するとどちらも同じに見えるでしょう。しかし、生徒がテストを解いている様子をよく観察していると、その違いは手に取るように分かります。
できる問題を先に選んで解こうとしている子は、それが自分にとって解ける問題であれば、たとえ計算が面倒そうに感じたとしても、頑張って答えを出そうとします。また、時間を常に気にしているため、時計をチラチラと見ながらテストの問題と格闘しています。一方で、テストの問題を選り好みしている子は、問題を解く基準が「解けるか解けないか」ではなく、「楽そうかそうでないか」で選んでいます。つまり、たとえ解法を知っていて、頑張れば解けそうな問題だとしても、面倒臭そうだと感じるといとも簡単に飛ばしてしまいます。時間内に1点でも多くとろうという意識はないので、時計を気にすることも滅多にありません。

問題を選り好みするタイプの生徒は、残念ながらいくら勉強したとしても伸びていきません。そもそも、テストで良い点数を取りたいという意識よりも、いかに楽にこの場をやり過ごすかを考えているので、制限時間に対する時間感覚も身に付かないし、負荷のある問題を時間内に解く持久力や瞬発力も身に付きません。

またこういうタイプの生徒は、テスト中の集中力も極めて低いです。一つの問題を解いてもすぐに次の問題に移らず、少しの間休憩を入れているのか、シャーペンを触ってみたり、しばらくどこか一点を見つめてぼーっとしてみたりと、次々と一心不乱に問題を解き進めることができません。そのため、必要以上に時間がかかり、制限時間内に解き終わらないのです。

「問題を解くのに時間がかかる」「制限時間に解き終わらないことが多い」というケースは、もちろん能力の問題や練習不足からくるものもありますが、実は本人のテストに対する意識の低さ、点数に対する執着心のなさ、もっと言うと勉強に対する意識の低さが大きく影響している場合があるのです。

まとめ

一口で「勉強できない」といっても、その理由は多岐に渡ります。そもそも勉強する気に欠ける場合もあるし、人並みの勉強に耐え得るための基礎的な力が備わっていない場合もある。ただ勉強の内容を教えていても、その子の持つ能力を自体を上げていかないと、本当の意味で学力の向上は見込めません。

授業中に生徒の様子をよく観察し、なぜこういう行動を取るのか、なぜ理解が乏しいのかの原因を探っていくと、実に色々なことが見えてきます。その細かな一つ一つに対して、対策を講じ、指導を繰り返していく。学力を向上させるためには、このような地味で地道な日々の取り組みが必要不可欠なのです。