当然、来年度も全員合格を目指します。

2016年3月1日

全員合格というと、「受験校のレベルを下げて、受かりそうなところを受けさせているでしょ」と思われる方がいらっしゃるようです。生徒全員合格を目指して当然の同じ塾業界から、そういう声が聞こえるのが残念でなりません。

今回は折角なので、生徒全員合格を毎年目指す上で実際に行っている進路指導法を書いてみたいと思います。

生徒にボーダーラインを偽って教えています

うちの塾の進路面談は年3回〜4回。3回になるか4回になるかは生徒によって異なりますが、必ず毎回三者面談をお願いしています。そのときに、生徒それぞれの内申点から算出したボーダーラインを親御さんにも生徒にもお伝えしますが、ギリギリのラインは決して言いません。本当のボーダーラインにある程度の点数を上乗せした点数を目標点として提示しています。

何点上乗せするかは、生徒の内申や学力、また性格を考慮してそれぞれ判断しています。志望校に対して十分な内申点がある生徒ならボーダーライン+20点くらい、内申点が十分ではなく二次選考枠の可能性が高い生徒ならボーダーライン+30点くらい。また、余裕があると分かると途端にサボってしまう危険性がある生徒や本番に弱そうな生徒ならもう少し高めに設定したり、目標点を高くし過ぎると怯んでしまいそうな生徒なら少し低めに設定したり。特色検査実施校を受験する生徒であれば、特色検査のようなタイプの試験に強いか弱いかを見極め、強い生徒だと目標点を多少低めにしたり、弱い生徒だと特色で失敗しても合格できるような点数にしたりと、まあ色々考えて進路指導をしています。なのでうちの塾では、同じ志望校を目指していて同じような内申点を持っている生徒であっても、教えられたボーダーラインが全く異なるということもしょっちゅうです。

私が本当のボーダーラインを生徒や親御さんに伝えない理由は3つあります。

模試と本番の入試の難易度が違いすぎる

まず1つは、入試模試と本番の入試での難易度が違いすぎるからです。特に入試が難しくなり出した3年前からは、この現象が顕著になってきています。どの会社の入試模試を見てみても、本番と同じようなクオリティや難易度の問題を出題しているところはほとんどありません。例えば入試模試で430点くらい取れていても、実際の入試では400点くらいで落ち着いてしまうということは珍しくもなんともありません。

何年も塾の講師を経験していれば、入試模試と実際の入試のクオリティの違いは簡単に見抜けますが、親御さんや生徒本人にとってはやはり入試模試の点数が全てであり、入試模試で短期目標を立てて勉強していきます。もし、本当のボーダーラインが350点として、それを生徒に伝えていると、入試模試で350点が取れると安心してしまいます。そして結果的に、入試本番で入試模試のような点数が取れずに不合格になってしまう危険性が大なのです。

志望校に合格することだけがゴールではない

2つ目の理由は、志望校にボーダーラインギリギリのような余裕のない状態で合格して欲しくはないからです。同じ合否が決まる試験でも、学校の入学試験は資格試験とは異なります。資格試験であれば、ボーダーギリギリであってもボーダーよりもだいぶ余裕があっても、合格すると何らかの資格を得られることができ、目的が達成されます。しかし入学試験でボーダーギリギリで合格しても、その学校に入学する目的は達成されるかもしれませんが、入学後大変な思いをすることは目に見えています。

高校入試は、志望校に合格することだけがゴールではありません。むしろそこからがスタートです。志望校に合格することではなく、入学後の高校生活を考慮し、せめて平均点以上は取れるような準備をして合格後に備えようというのがうちの塾の考え方です。

入試で100%の力を発揮できないことの方が多い

そして3つ目は、入試で100%の力を発揮できないことの方が圧倒的に多いからです。これは過去記事にも書きました。
参照:「本番で自分の100%の力を出せたら合格する」←実際100%の力なんて出せません。

過去記事にも書いたように、どんなに強い心臓の持ち主であっても入試は緊張します。緊張のあまり、普段なら考えられないようなミスをしたり、落ち着いて考えられなくなってしまうことだってあるかもしれません。本当のボーダーラインよりも何十点以上も高めに設定した状態で準備をしていたのであれば、本番で少々失敗しようが合格できます。確実に志望校に合格することを考えるのなら、失敗することを想定した上で、それでも合格できるような準備をしておくべきだと考えています。

それでも第一志望に手が届かなそうな生徒の場合

1月に実施する最後の入試模試まで様子を見てみて、それでも第一志望に手が届かなさそうだったり、合格する可能性が極端に低い生徒には、きちんとその事実を伝えます。「頑張れば奇跡は起こります。行きたいのなら決して諦めてはいけません。」ということは絶対に言いません。どれだけ思い入れのある生徒であっても、客観的な事実のみを淡々と伝えます。

公立第二志望か、併願先私立高校か

手が届かなさそうな生徒の場合は、事実を伝えた上で、第二志望の公立高校と私立併願校のどちらに魅力を感じるかを問います。第二志望の公立高校の私立併願校の大学合格実績、入学後の生活等を天秤にかけた上で、生徒が第二志望の公立の方が魅力的だと感じる場合は志望校を下げ、私立併願校の方が良いという場合はそのまま第一志望に挑戦します。

どの高校を選ぶにしても、生徒本人が現状を客観視し、色々な選択肢から色々な場合を想定した上で、その中で一番納得のできる選択をすることが大切です。

勝ったときに得られるものと、負けたときに失うものの大きさ

生徒は勝ったときのことばかり、つまり志望校に合格したときのことばかり盲目的に考えます。特に高校受験生は15歳です。負けた時に失うものには驚くほど鈍感なのです。でも、入試という勝負事には、勝つこともあれば負けることもある。

私はいつも、勝ったときに得られるものの大きさ、負けたときに失うものの大きさを考えます。それはどの生徒にとっても同じではありません。負けたときに失うものが小さい生徒もいるし、かなりのダメージとなってしまう生徒もいる。負け試合となることが濃厚で、なおかつ負けたときに失うものが大きい生徒には、あえてストップをかけるのも我々大人の役割だと思っています。

まとめ

今日の授業で、新受験生となる中2生にこう言いました。

「これで6年連続全員合格ではあるが、全員合格するだけならレベルを落とせば良いだけの話だ。全員合格はあくまでもオマケに過ぎない。合格したいからと受かりそうなところを初めから目指すのではなくて、行きたい高校にどうすれば行けるか、その方法を考えなさい。」

全員合格は、一人ひとりが志望校合格に向けて一生懸命頑張ってきた結果、後からついてきたものです。うちの塾の想いは、「全員合格を成し遂げたい」ということではありません。

生徒の希望する高校に合格できるように導いてあげたい。もしそれが叶わないのであれば、生徒にとって現段階で一番ベストな道に導いてあげたい。ただその一心で指導してきた結果の全員合格です。

どれだけ懐疑的に思われようと、色々と揶揄されようと、次の受験生である9期生も全員合格を目指します。それが塾としての当然の使命だと思っています。

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