「本番で自分の100%の力を出せたら合格する」←実際100%の力なんて出せません。

2015年1月23日

「本番で自分の100%の力を出せたら合格する」という励ましの言葉をよく聞くが、これは本質的ではないと感じる。

本番で100%の力を出せるような、強心臓の持ち主はそんなに多くない。定員割れをおこしていて合格間違いなしの学校を受験するのなら話は別だが、普通は「緊張するな」と言われても少なからず緊張してしまう。ましてや高校受験は、人生で初めて入試を体験する人がほとんど。そんな状況で緊張しない方がおかしい。

緊張している状態では、自分の100%の力はなかなか出せないものだ。普段ならまずやらないようなイージーなミスをしてしまうかもしれないし、緊張のせいで問題がうまく頭に入ってこないかもしれない。緊張状態の中で問題の出題傾向が変わったものならさらに最悪で、普段ならちゃんと変化に対応できても、その場では舞い上がってしまい、何が何だかわからないままその科目の試験が終わってしまったということになるケースも少なくない。「入試後の落ち着いた状態でもう一度問題を解いてみたら、ちゃんと解けた。なんで本番はこんな簡単な問題が解けなかったんだろう。」と、悔しい思いをした経験がある人が多いのも、入試本番で100%の力を出す難しさを物語っている。

本番で100%の力はまず出ないという前提で準備をした方が良い。100%の力すら出るかどうかが怪しいんだから、実力以上の120%の力が出ることもない。とすれば、普段の80%の力で合格するような状態になるように準備を進めるべきだ。

私が塾の面談で受験指導をするとき、ボーダーラインすれすれの数字や合格最低点はまず受験生に教えない。もし500点満点中の400点で合格する生徒なら、420点〜430点くらいとりなさいというように、実際のボーダーよりも20点〜30点を上乗せした数字を「合格ライン」だと提示する。これは、本番で普段の100%の力が出せなくても、80%そこそこで合格できるような準備をするためだ。もしも、ボーダーラインすれすれや合格最低点を「合格ライン」だと生徒に提示してしまえば、生徒はその点数が上限値となるような勉強をするだろうが、そうすると失敗する確率の方が高くなる。

普段から、「本番では100%の力を発揮できない」ことを想定した上で勉強することが大切だ。たとえば、この時期は最後の仕上げにと過去問を解く機会が多いと思うが、過去問を本番と同じ制限時間で解くんじゃなくて、本番よりも5〜10分短縮した時間で解くとよい。入試本番は緊張から普段より問題を解くペースが落ちてしまいがちだが、こういう練習をしておくと、普段より時間がかかっても、制限時間オーバーということにはならない。

それに、「入試本番は自分の100%の力を出すんだ」と意気込むより、「普段の80%の力が出せれば合格する」くらいに思っていた方が、精神的にも随分楽になり、リラックスした状態で受験できるので、結果的に上手くいきやすいと思います。