民主党のマニフェストの中に「教員養成過程6年制」というものがある。自民党の安倍政権時代の教育改革では、10年ごとに教員免許を更新する制度が作られ、教員に大学などで専門知識を深めることが義務づけられた。民主党は自民案のこの免許更新制度に反対していて、更新制度の代わりに教員養成を教職大学院など修士レベルの水準にすることで、教員の質の向上を目指していた。
結局6月25日に打ち出された最終案では、免許更新制度は残しつつ、教職大学院など修士レベルの大学院を充実させながら中長期的に教員養成過程6年制を実現させるものとなったそうだ。(参考:朝日デジタル「教員免許更新制の廃止先送り」より)
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私の個人的な意見では、この民主党マニフェストには大反対です。修士課程を必修化することで、教育に関する知識は豊富になるかもしれないが、教師の知識が豊富になることが教育の質を向上させることとイコールで結びつくとは思えない。
教育の質を向上させるために必要なことは、教師の卵に今以上に学校に通わせてお勉強させることではない。むしろその逆で、社会における職務経験こそ、これからの教員、特に中学・高校の教員に必要なことではないかというのが自分の意見。
大学を出たばかりの教員が、学校の外に一歩も出ることなくまた学校に戻り、習ってきた勉強を子どもに教えている。それこそが、教育の現場と社会とがミスマッチしている一番の原因だと思うのです。社会に一歩も出たことのない先生が、社会で生きていく力を子どもに身につけさせようとするから色んな矛盾が生じる。最近は「キャリア教育」が重要視されているけれども、それこそ社会に出たことのない先生が中途半端にキャリア教育をしようとするから、「キャリア教育」=「ただの職業体験」に成り下がっているという現実。
うちの塾生が通っている中学校で、去年までずっとマスコミ関係で働いていた人が社会科の教師として赴任してきたらしい。塾生たちの話によると、やっぱりその先生の授業はひと味もふた味も違うという。これからの時代に必要な教師って、こういう社会経験を持っている先生なんじゃないかな。
通訳とか翻訳家として活躍していた人が英語を教える。一般企業で研究開発に実際に携わってきた人が理科を教える。新聞社で記事を書き続けてきた人が国語を教える。SEやプログラマーが数学を教えたっていい。証券会社で働いていた人が経済を教えても面白い。地元で腕の立つ大工さんが技術を教えるとか最高じゃない?
教員を志している人に大学院なんか行かせるよりも、「社会での職務経験5年以上」という条件を加える方が、教育にダイナミズムが生まれ、現実社会で求められる要素を教育に落とし込むことができるんじゃないかな。それこそ、本当の意味で「生きる力」や「キャリア教育」を子どもに教えられる先生が増えると思います。
これをマニフェストに加えてくれる政党があれば、次の衆院選で是非投票しようと思うのだけれども。誰かやってくれないかな。橋下さんとかどうだろう・・・。