神奈川県入試の最後の砦!第2次選考とは?

今日は神奈川県立入試における、第2次選考について解説します。この第2次選考については、受験生でもあまりよく理解していない人が多い制度ですが、事前にきちんと理解していないと、入試直前になって大慌てすることにつながる厄介な制度でもあります。

ですが、今のうちからきちんと理解しておくことで、事前に準備をすることができます。できるだけ詳しく説明するので少し長い記事になりますが、是非最後まで読んでください。

第2次選考とは?

神奈川県立入試には、実は選考基準が2段階あります。

内申:入試が3:7や4:6などと各高校が決めた比率によって選考されるのは、実は次の第1次選考です。この選考で募集定員の90%の合格者を決定します。

例えば、募集定員360名の高校に、432名が受験したとしましょう。競争倍率は1.20倍です。

まず、第1次選考の数値を使い、432名の受験生を得点の高い順に並べ、順位にしたがって360名の90%にあたる324名を合格とします。

この時点でまだ合格を手にしていないのは、432名ー324名=108名ですね。定員まではあと36名です。

108名の中から、ラスト36名の合格者を、第2次選考の基準で決定します。

第2次選考

この2段階の選考を経て、合格者360名、不合格者72名が決定します。

このように、第1次選考で定員の90%の合格者を決めたあとに、残りの10%の定員を第2次選考で決める、というのが神奈川県公立入試の選考方法です。

後ほど解説しますが、この順番がとても重要になります。

第2次選考の基準

では次に、第2次選考の選考基準についてみていきましょう。第2次選考に用いられる資料は、次の3つです。

  • 「3年生調査書の主体的観点別評価」
  • 学力検査
  • (特色検査や面接)

このように、第2次選考には第1次選考で必要な「内申点」がありません。その代わりに、「調査書の主体的観点別評価」というものが入ってきます。

「調査書の主体的観点別評価」とは、通知表の各教科の観点別評価の中にある「主体的に取り組む態度」の項目のことです。通常、通知表ではA、A、B、C、Cの5段階で評価されていますが、AとAを「A」、Bを「B」、CとCを「C」とABCの3段階評価にし、Aを3点、Bを2点、Cを1点として数値化します。9教科×3点満点=27点満点ですね。これを第2次選考の資料として扱います。

そしてこの主体的観点別評価・学力検査の数値の比率は、各高校が2割〜8割の間で、2つの合計が10割になるように、自由に設定することができます。

その上で、特色検査や面接を課す学校は、特色検査分を1〜5割を先ほどの10割に上乗せできるという仕組みです。

ここで、2024年度入試における、第2次選考の主な高校の比率を見てみましょう。(かっこの中の数字は特色検査の割合)

学力:主体的主な採用校
8:2横浜翠嵐(2),希望ヶ丘(1),光陵(1),横浜平沼(2),柏陽(2),横浜緑ケ丘(2),多摩(2),横須賀(2),湘南(2),鎌倉(1),茅ケ崎北陵(1),平塚江南(1),小田原(1),大和(2),相模原(2)など他多数
7:3川和(1),舞岡(5),保土ヶ谷,横浜清陵,永谷,鶴峰,藤沢総合,高浜,秦野総合,平塚湘風,山北,小田原東,厚木(2),厚木西,綾瀬西,相模原城山など
6:4荏田,横浜桜陽,横浜旭陵(1),市立高津,三浦初声,藤沢西,二宮,津久井(3)など
5:5白山,市立幸,寒川,愛川(3)など
4:6麻生総合(2),市立川崎(福祉)(5)
3:7市立横浜商業(スポーツマネジメント)(5),上矢部(美術)(5)

満点の変化

この表の通り、大多数の高校で学力:主体的=8:2と、学力検査の割合を最大化、主体的の割合を最小化した比率が採用されています。第2次選考はできるだけ学力検査の高い受検生を選考しようというのが多くの高校の狙いですね。

主体的評価は27点満点だし、しかも割合がたった2割だったら、選考にあまり影響がないのではないかと思われるかも知れませんが、それがそんなことはないのです。

第1次選考と同じく、第2次選考における8:2や7:3などという比率も、第2次選考の1000点満点での比率です。「8:2」や「7:3」の比率の採用校では、第2次選考のS2値は以下のような計算式で算出されます。

「8:2」の比率の場合→学力検査800点+主体的評価200点=合計1000点満点

「7:3」の比率の場合→学力検査700点+主体的評価300点=合計1000点満点

学力検査は5教科で500点満点なので、「8:2」の場合は1.6倍した800点満点に、「7:3」の場合は1.4倍した700点満点に換算します。

そして、主体的観点別評価の満点は27点満点なので、「8:2」の場合は約7.4倍した200点満点に、「7:3」の場合は約11.1倍した300点満点に換算されるのです。

主体的1点分の価値

では、第2次選考において、主体的1点分の価値は学力検査の何点分に値するのでしょうか。

「8:2」の場合、主体的1点分は1000点満点の約7.4点となります。学力検査1点分は1000点満点の1.6点です。ということは、主体的1点分の価値を第2次選考における学力検査の点数に換算すると、7.4÷1.6=約4.63点に相当するということになります。

「7:3」であれば、11.1…÷1.4=約7.93点です。

このようにして、各比率での主体的1点分に相当する学力検査の得点をまとめたのが以下の表です。

学力:主体的主体的1点分に相当する学力検査の得点
8:24.63点
7:37.93点
5:518.51点
4:627.78点

ボーダーライン上での影響力

第2次選考は第1次選考で定員の90%の合格者を決めた後、最後の10%の合格者を決めるのに使われる選考です。最後の10%、つまりまさしくボーダーライン上の合格者です。ボーダーライン付近は本当に混戦状態で、学力検査のたった数点の間に多くの受検生がひしめき合っています。

そんな混戦状態の中で、主体的が他の受験生よりも1点低かったとしたら。

一番影響が少ないはずの8:2でも、学力検査の持ち点よりも−4.63点となります。7:3だと−7.93点。おそらく、学力検査で同じ点数がとれた受験生よりもかなり順位が下がってしまいます。

逆に、主体的観点がオールAだとしたら。

当日の学力検査が思わしくなく、または志望校に対して内申点低く、第1次選考の90%で合格が決まらず第2次選考に回っても、学力検査でボーダーライン付近の点数がとれるのであれば、合格の望みが十分あります。

このように、ボーダーラインの第2次選考において、たった2割であっても「主体的観点別評価」が合否に与える影響は、とてもインパクトのあるものになるのです。

「主体的」は最後の砦

学力向上進学重点校やエントリー校の受検生の多くは、「主体的観点別評価」で27点満点かそれに近い点数を揃えています。

もし主体的観点別評価が27点満点だと、たとえ第2次選考に回ったとしても、当日の学力検査勝負になるだけなので、安心して志望校に挑戦ができます。一方で主体的観点別評価が低いと、学力検査でボーダーライン付近の点数を取れていたとしても、第2次選考で合格することはほぼ絶望的となるため、安心して志望校に挑戦することさえ難しくなります。

中堅校であれば、そもそも「主体的観点別評価」で27点満点を揃えている人が多くはないため、逆にここで満点を取っておくと第2次選考では非常に有利に働きます。学力検査の得点がボーダーラインより下回ってしまっても、合格できるチャンスがあるのです。

つまり、主体的観点別評価は最後の砦と言えます。最後の最後に、合否に影響を与えるのです。

どの高校を受けるとしても、まだ志望校が決まっていないとしても、「主体的観点別評価」は9科目ともAを揃えるようにしましょう。

その27点満点が、最後の最後で必ず自分を救ってくれます。