公立入試は、学校成績=内申点が大きく入試の合否に関わってきます。
受験生なら、いや受験生でなくても中学生なら、「内申が大事だ」、なんてことは言われなくても分かっていることでしょう。
でも、内申点が実際にどのように入試に関わってくるのか。成績1つ分はそもそも入試においてどれくらいの価値があるのか。それらを明確に答えられる中学生は、受験生であってもおそらくほとんどいないのではないでしょうか。
今日は、神奈川県公立入試において、内申点が具体的にどのような数値で計算されて、どのような価値を持つのかということについて、解説していきたいと思います。
受験は「知らなかった」では済まされないこともたくさんあります。正しい情報を知っておくことで行動できることもたくさんあります。少しずついろんなことを伝えていくので、きちんと受験を理解していってください。
志望校の選考基準の比率を知ろう
2024年度現在の神奈川県立入試の選考には、資料として次の3点が使用されます。
この内申点・学力検査の数値の比率は、各高校が2割〜8割の間で、2つの合計が10割になるように、自由に設定することができます。
その上で、特色検査や面接を課す学校は、特色検査分を1〜5割を先ほどの10割に上乗せできるという仕組みです。
ここで、2024年度入試における、主な高校の比率を見てみましょう。
内申:入試 | 主な採用校 |
---|---|
3:7 | 横浜翠嵐(3),神奈川総合(個性化),柏陽(2),横須賀(1),大船,平塚江南(1),海老名,横浜サイエンスフロンティア(2)など |
4:6 | 川和(1),希望ヶ丘(1),神奈川総合(国際文化)(2),横浜緑ヶ丘(2),湘南(2),厚木(2),小田原(1),多摩(2),鎌倉(1),茅ケ崎北陵(1),横浜国際(国際)(1),横浜国際(バカロレア)(2),大和(1),秦野,大磯,七里ヶ浜,藤沢西,座間など |
5:5 | 光陵(1),横浜平沼(1),相模原(1),西湘,山北,小田原東,伊志田,伊勢原,茅ケ崎,湘南台,有馬,深沢,高浜など |
6:4 | 秦野曽屋,小田原城北工業,吉田島,二宮,平塚湘風など |
7:3 | 白山(普通),保土ヶ谷,寒川,相模田名 |
選考基準の比率が持つ本当の意味
次に皆さんに是非押さえておいて欲しいことは、実は神奈川県の公立入試には、2段階の選考があるということです。
募集定員の90%を決める選考。「内申点」+「学力検査」=1000点満点(特色検査を実施した場合は最大で1500点満点)でS1値を算出し、順位にしたがって募集人員の90%までを合格とする。
第1次選考後の募集定員の残り10%を決める選考。「学力検査」+「調査書の主体的観点別評価」=1000点満点(特色検査を実施した場合は最大で1500点満点)でS2値を算出し、順位にしたがって募集人員までを合格とする。
先ほどの「3:7」や「4:6」といった比率は、第1次選考の1000点満点での比率です。「3:7」や「4:6」の比率の採用校では、第1次選考のS1値は以下のような計算式で算出されます。
「3:7」の比率の場合→内申点300点+学力検査700点=合計1000点満点
「4:6」の比率の場合→内申点400点+学力検査600点=合計1000点満点
ここで、神奈川県の場合、選考に関わる内申点は中2成績45点+中3成績45×2=135点満点です。学力検査ならば、100点満点×5教科の500点満点です。
このように、実際の内申点や学力検査の満点の数値と、選考基準の満点の数値は異なります。
これらの満点の違いが、公立入試の選考基準を分かりにくくしている正体でもあります。
「3:7」の場合、内申点は300点満点なので、実際の成績135点満点を300点満点に換算します。300÷135=2.22…なので、実際の成績を約2.2倍すると、300点満点での内申点に変換できます。
「4:6」の場合、400÷135=2.96…となり、実際の成績を約2.96倍すると、400点満点での内申点に変換できます。
「5:5」の場合、500÷135=3.70…となるので、実際の成績を約3.7倍します。
つまり、3:7の割合の高校の場合、通知表の成績1ポイントが、実際の入試1000点満点中の2.2点に、4:6の場合は2.96点に相当するということになります。
内申点1つ分は学力検査何点分?
「内申点が低いとその分学力検査で点数をとらなければいけないから不利になる。」ということは一度は聞いたことはあると思いますが、では、内申1つ分でどのくらい入試に影響があるのでしょうか。
「3:7」の高校の場合、成績1つ分=1000点中の2.2…点となります。学力検査は700点満点となり、実際の500点満点の得点を1.4倍します。ということは、内申1つ分の価値を学力検査に換算すると、2.2…÷1.4=およそ1.59点に相当するということになります。
このようにして、各比率での内申1つ分に相当する学力検査の得点をまとめたのが以下の表です。
内申:学力 | 内申1つ分に相当する学力検査の得点 |
---|---|
3:7 | 1.59点 |
4:6 | 2.47点 |
5:5 | 3.70点 |
6:4 | 5.56点 |
ちなみに、神奈川県の場合、中3時の内申点は2倍されるので、中3時の内申1つ分における学力検査の割合も、単純に2倍されることになります。
表にまとめてみると…
内申:学力 | 中3内申1つ分に相当する学力検査の得点 |
---|---|
3:7 | 3.18点 |
4:6 | 4.94点 |
5:5 | 7.40点 |
6:4 | 11.12点 |
もし自分の中3成績が38だとして、自分と同じ高校を受ける友達は40だったとします。その差はたった2つ分です。「なーんだそれくらい、学力検査で挽回してやるよ」と思うでしょう。
大変良い意気込みです。でも実際、そのたった2ポイントの差を覆すためには、その志望校の選考比率が3:7なら6.36点、4:6なら9.88点、5:5なら14.8点以上、その友達より学力検査で上回らないといけません。
4:6の高校で、友達が400点だったら、自分は410点です。これだけの差があれば、偏差値1くらいは変わってくるでしょう。たった2つ分の内申点が、学力検査でこれだけの差となってしまうのです。
まとめ
今年の12月頃になれば、受験生はきっと1点でも伸ばそうと必死で受験勉強に勤しむことになります。
模試を繰り返し受けると分かると思いますが、合計得点を10点上げるのでも相当苦労します。特に公立上位校のような学力検査が高得点帯になればなるほど、あと10点、いやあと5点すら上げるのが厳しいのが現実です。
もちろんこれは1次選考の話で、内申点を考慮しない第2次選考となれば話は違ってきます。第2次選考のカギは「観点別の評価」ですが、その話はまた改めて書くことにします。
ただ、今の時点で10%の2次選考枠は考えるのは、戦略として間違っています。今は、きちんと定員の90%の1次選考枠で合格することを考えなければいけません。
最終的には学力検査の結果で合否は決まりますが、その学力検査が悪かったときに、それでも自分を救ってくれるのは内申です。
内申たった1つで、これだけの差が付くということを頭に入れて、定期テスト勉強なり普段の提出物なり毎日の授業なりに取り組んでください。