2018年度神奈川県公立入試の社会の難しさの正体。

先日質問箱にこのような質問が来ました。

2018年度入試の次の日の2月15日に、英数国のざっくりとした講評を書きましたが、国社の講評はまだ書いていないまま、すっかりと忘れてしまっていました。楽しみに待っていただていた方、大変お待たせしてしまいました。

神奈川県公立入試の2018年度はなんと言っても「社会の年」です。国語や数学でもやや難しくはなりましたが、社会の強烈な難化が、2018年度の公立入試の全ての話題をさらっていきました。

まず社会の講評の前に、神奈川県教育委員会が発表した、2018年度と2017年度の合格者県平均得点を比較してみましょう。

年度 英語 数学 国語 理科 社会 合計
2018年度 56.1 56.0 65.6 45.3 41.8 264.8
2017年度 51.9 63.5 73.1 46.9 54.5 289.9
昨年との差 +4.2 -7.5 -7.5 -1.6 -12.7 -25.1

前年比で10点以上平均点が下がったのは社会のみ。その結果、これまでは理科のお家芸の「平均点5科目ワースト1」の座を、理科から奪い取ることができました。

社会の県平均が50点を割り込んだのは、過去10年間でこれが2回目です(1回目は2014年度の49.5点)。このことからも分かるように、社会は比較的点数をとりやすい科目として長く受験生に認識されていました。平均点が30〜40点が続く理科と比較しても、社会の平均点はだいたい50点程度で安定して推移していたので、理科の分を社会で補おうといった作戦を立てる受験生も多かったと思います。

それが今年、あんなに受験生にフレンドリーだった社会が、突然受験生に牙を剥きました。「暗記がモノをいう」「直前の頑張りが効く」「過去問をやればなんとかなる」と信じられていた社会に何が起こったのか。今日は、社会の難しさの正体を、暴いていきたいと思います。

前置きが長く、なんだかやたら壮大な感じの書き方になりましたが、ただの社会の分析記事です。

2018年度社会の難しさの正体

いつも話が長くなってしまうので、今回は結論から書きましょう。2018年度の社会の難しさの正体は、まとめると、次のたった2つに集約されます。

  • 記述問題の減少
  • 想定外の時代からの想定外の出題

では、この2つの要素をそれぞれ詳しく説明していきます。

記述問題の減少

記述問題量の推移

2018年度は、マークシートの本格的な活用に伴い、どの科目も記述問題が大幅にカットされました。

神奈川の社会と言えば、結構な文字数の記述問題が毎年出題されます。ここで一度、現行の入試制度となった2013年度からの、社会の記述量を振り返ってみましょう。

年度 地理 歴史 公民 平均点
2013年度 80字以内 80字以内 15字以内/30字以内 51.1点
2014年度 70字以内/25字以内 80字以内 15字以内 49.5点
2015年度 なし 70字以内 25字以内/85字以内 50.2点
2016年度 75字以内 なし 65字以内 52.0点
2017年度 なし 30字程度×2問 100字程度 54.5点
2018年度 なし なし 15字以内 41.8点

こうやって表にまとめて振り返ってみると、今年の社会の記述問題の少なさは異常だと分かります。

きっと今これを読んでいるほとんどの方の頭の中は、「記述が少なくなったらなぜ難しくなるの?普通逆じゃないの?」と疑問に思われていることだと思います。

いい質問ですね。(池上彰風に。誰にも質問されてないけど。)

前年度までの神奈川県の社会の記述問題は、それが地理であれ歴史であれ公民であれ、資料から読み取れることを、それぞれ指定された語数以内で記述するものでした。そしてその資料問題は、資料自体が読み取りやすいものだったので、基本的な社会の知識があれば、何を記述すれば良いのかは簡単に理解できました。あとは、指定された語句を使い、自然な日本語として繋げることができれば完成です。

したがって、たとえ80字や100字以内などの結構な分量の記述であっても、資料を読む練習をきちんと積んでいて、文章を作ることに問題なければ、それほど苦労なく記述できる問題ばかりでした。しかも、完全に正解できていなくても部分点はもらえたので、記述が苦手な受験生でも、資料の読み取り問題である程度点数をとることはできたのです。

しかも、このように記述問題は毎年出題されています。しかも結構な配点で。だから、どこの塾でも、当然のように記述問題対策に力を入れます。たくさん記述対策をしてきます。だから、多少記述量が多くても、よく対策してきている受験生にとっては記述問題は大した問題ではありませんでした。

記述はなくなった。でも資料読み取りはなくなっていない。

しかし、2018年度はほぼ完全にマークシート化された影響で、これらの記述問題はほぼ無くなりました。記述が無くなったからと言って、資料読み取り問題はなくなっていません。

これが難しさの正体の一つ目です。

資料の読み取り問題が、記述から選択問題となったことで、難しさの質が変わったのです。記述量で難易度を調整することができないので、インプットの方、つまり読み取りを難しくしてきたのです。

歴史の資料読み取り問題(問3の最後)に、それを示す典型的な問題があります。

干鰯一俵の値段金一両に五十俵、六十俵もしたるを、今は七、八俵にも売らず。

を読み取って4択から1つを選ぶ問題です。これ、厳密に言うと資料読み取りではなく「史料」読み取り問題ですよね。まずこの史料を理解するのが難しい。「干鰯」に関する知識はあっても、この古文で書かれている史料を読み解けない限り、せっかくの4択問題なのに何を選んで良いのか分かりません。

資料問題の難しさの質の転換

先ほどの干鰯の史料の問題以外にも、地理でも歴史でも、資料を読み取ること自体が難しくなりました。資料を読み取るためには社会の知識はもちろんのこと、それらの知識と資料とをうまく関連づけて思考するというステップが必要になりました。

これによって、知識があってもその知識と資料とうまく関連づけて考えられないと正解できない問題だったり(地理:造山帯の問題、アンデス地方の雨温図の問題など)、資料を正確に読み取るためにそもそも知識と思考が必要だったり(地理:都市Xの輸出額、レタスとナスの入荷量など)と、資料を読み取ること自体が難しくなりました。

これまで「資料の読み取り=記述問題」と認識し、それの練習を積んできた受験生たちは、インプットの方、つまり煩雑な資料を読み解く練習はしていません。それにより、皮肉にも一生懸命対策をしてきたはずの資料系の問題で、その対策が一切通じずに、ガタガタと崩れてしまったのです。

想定外の時代から想定外の出題

もう一つの正体は、歴史です。

今までの神奈川県の歴史は、飛鳥や奈良時代のような古代からはそんなに細かく出題はされず、せいぜい教科書の太字レベルをおさえておけば大丈夫でした。よって、ほとんどの受験生は、毎年細かく出題されるペリー来航以降はきちんと対策していたものの、古代は太字レベル程度の手薄な状態だったのです。

しかし2018年度は、その想定外の飛鳥や奈良時代がつかれたのです。それにより、しっかりと対策してきたはずの多くの受験生を奈落の底に突き落としました。

まとめと2019年度に向けて

これが社会の難しさの正体です。この2つをまとめると、いずれも「これまでの過去問を大きく裏切った」ということになります。

これにより、一生懸命神奈川の過去問を対策してきた受験生ほど、急な変化に対応できず、見事に崩れてしまったという結果になったのです。

これは、まさに2014年度の理科ショックの時と同じです。

2014年度の理科ショックの年、私はブログでこのような記事を書きました。
参照:いつまで“神奈川病”にかかっているの?

今回もこれと全く同じことがおきたのです。

「社会の資料読み取りは記述問題で配点も高い!だから一生懸命対策しよう」
「歴史は古代はあんまり出ないから、教科書の太字だけで大丈夫」

過去問頼みの、過去問に頼り切った受験対策に、2018年度の社会はNOを突きつけた。さらに、社会は暗記ではない、社会も思考力が必要だという最良の例を、見事に提示した。

2018年度の社会は、そんな問題でした。

では2019年度に向けて、社会はどう対策していくべきか。
もう分かりますよね。そうです。全国入試を解くのです。全国入試を解いて、いろいろな問題形式や出題に触れるのです。

神奈川では古代はあまり出題されなかったかもしれません。でも、ほかの都道府県では当たり前のように古代が出題されています。資料読み取り問題も、他の都道府県では記述問題以外も普通に出題されています。

今回、うちの塾の社会の開示得点トップは、全国入試を1周半解いた生徒で88点と、社会の難化による影響はほとんど受けませんでした。

社会もそろそろ「神奈川病」から脱却すべき、過去問ありきの勉強をやめるべき時です。

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