今日は、横浜で開催された「教育シンポジウム」という会合に参加してきました。この教育シンポジウムは中小の学習塾団体と神奈川県教育委員会の担当者とで、公立高校入試についてや教育の現状についてのあれやこれやを意見交換する交流会のようなもので、2017年から始まって今年で3回目になります。
(参考)
● 2017年のレポート:入試制度や高校改革について、県教委のなかの人に直接話を聞いてきた。
● 2018年のレポート:特色検査や入試について、県教委の中の人に話を聞いてきた2018。
一昨年と昨年に引き続き、今回も担当の岡野さんと、入試関連や義務教育の現状についてなどについて色々と情報交換してきました。
ちなみにこの県教委の岡野さん、2017年に初めてお会いしたときは教育局指導課長という肩書きだったのが、2018年は教育局指導部長に昇進されていて、2019年の今年はなんと教育局参事監兼指導教育部長と参事監にまでなっておられました。凄いスピード出世ですね、岡野さん!こうなると来年はどんな肩書きになっているのか今から楽しみでなりません。
このような県教委の中枢を担う参事監級の方と我々のような中小の学習塾の人間が、直接互いの意見や情報を対等に交換し合う場を持つことは全国でも極めて珍しいことです。これは神奈川県の教育委員会はオープンで風通しが良くなっていること、そして神奈川の中小塾も元気に頑張っていることの証であると思います。
前置きが長くなりましたが、今日のシンポジウムの中でブログ読者の皆様と共有したい内容をピックアップしてお伝えしたいと思います。
学力向上進学重点校の今後
2期目に突入した学校改革
まずはエントリー校を含む学力向上進学重点17校(通称SKJ17←中○というどこかの先生が命名したらしい)について。実は進学重点校政策をはじめとする県立高校改革実施計画は3期に分かれていて、今はその第2期目に突入したところです。
ここで1期目(2016年度〜2019年度)をザッと振り返ってみましょう。1期では横浜翠嵐・湘南が先行して学力向上進学重点校に指定され、次いで2018年に厚木・柏陽が重点校に追加指定されました。その他の13校は「学力向上進学重点エントリー校」という立ち位置となり、学力向上進学重点校の指標をもとに、正式な追加指定を目指すことになりました。
そしていよいよ2期目に突入します。岡野さんによると、この2期の間にエントリー校の中から条件に合う高校を正式な重点校に順次指定していきたいとのこと。ちなみに指定を判断し発表する時期は、各高校の大学合格実績が判明してからの5〜6月あたりになるらしいです。
ただ、2020年度(現中3が高1になる年度)から新たに進学重点校に加わるエントリー校は残念ながらなしとのこと。どうも指標の中の「難関大への合格実績」の基準が厳しいみたいですね。
そうすると、エントリー校にとって2期中のチャンスはあと3回。2021年度(現中2が受験)と2022年度(現中1が受験)と2023年度(現小6が受験)の間に大学進学実績をはじめとする重点校の条件を満たすエントリー校があれば、翠嵐湘南柏陽厚木に次ぐ新たな学力向上進学重点校が誕生するかもしれません。
岡野さんによれば、学力向上進学重点エントリー校をこれから増やすことは考えていないとのこと。そして進学重点校自体を「ブランド化」したいので、正式な重点校を無理に増やすこともしないとのことでした。
本当に実力のある高校だけに「学力向上進学重点校」の肩書きが与えられることになりそうです。
3期目以降は都立方式?
現在、政策としてきちんと決まっているのは2期目まで。2024年度以降の3期目に関しての学力向上進学重点校の政策は未定とのこと。
岡野さんの中の構想では、現在の進学重点エントリー校を正式な進学重点校のいわば「2軍」のような指定をする枠組みも考えていらっしゃるようでした。ちょうど今の東京都立がやっているような重点校の取り組みですね。日比谷や西、立川をはじめとする「進学指導重点校」がトップにあり、その下に新宿をはじめとする「進学指導特別推進校」が存在するというように、神奈川の進学重点校も近い将来には数段階に段階分けされるかもしれません。
ただこれはあくまでも可能性の話であり、決定事項ではありませんが。
特色検査について
次に2019年度入試から各高校共通(一部選択制)となった特色検査について。
試験内容については、現状の教科横断型を今後も踏襲していくとのことでした。ただ、学校選択問題は、例えば「記述式解答が多めの問題」や「選択式が多めの問題」というように、各学校の特徴や意向がより反映できるように工夫していくかもしれませんとおっしゃっていました。
2020年度入試から、これまで特色検査を実施してこなかったエントリー校も一斉に実施することになります。そこで考えられるのは、特色検査実施校の中でもトップの湘南・翠嵐と、エントリー校の中でも比較的易しい平沼や茅ヶ崎北陵のような高校で、同じレベルで同じ内容の問題を採用することは色々不都合が生じるだろうということです。
それを防ぐためには、学校選択問題で難易度の差をつけるしかありません。もしかすると岡野さんがおっしゃっていたことは、そのような特色検査実施校の中のレベル差の調整の意味も含まれていたのかもしれません。岡野さんは明言されていなかったのであくまで私の推測ですが。
まとめ
この他にも入試に大きく関わる内申点についての問題点や現状、今年東京都立で大きな問題になった都立トップ校の定員割れと2次募集がなぜ神奈川の公立では実施されないのかという問題、中学校間のあまりにも激しすぎる授業の進度差の現状など、とにかくいろんなことを情報交換してきました。
参事監まで昇格した岡野さんが、我々塾側のどんな小さな意見も真摯に受け止め、話をじっくりと聞いてくださったことがものすごく印象的でした。
現状の高校入試制度について、また学校教育について、もちろん内申についても思うことはたくさんあります。今回の会合でも、県教委側の意見や政策は、ただの綺麗事にすぎずに現場をわかっていないと感じることも多々ありました。
それでも感じたことは、誰も、神奈川の教育を悪くしようと思って動いていないということです。むしろどうやったら良くなるだろうということを、県教委も学校も我々中小塾も、それぞれの立場から一生懸命考えているということです。
そうやってそれぞれの立場の人間が、それぞれの立場の仕事を誰にも責任転嫁せずに一生懸命やっていくことで、少しずつこの神奈川県の教育が良くなっていくことを期待しながら、私は私でまた明日から受験生と一緒に戦っていきたいと思います。
最後に。自分の立場をわきまえず、参事監にエラソーに色々と意見してどうもすいませんでした。