「塾用教材と比べると市販教材は良いものがない」ということをTwitterやブログで事あるごとに呟いていますが、今年の1月の始めに、Twitterのフォロワー様より「これはどうですか」と「塾技100」という市販教材をお譲りいただきました。
英語と数学の2冊をお譲りいただきましたが、今日は数学の「塾技100」のレビュー記事を書いてみようと思います。
表紙に書かれているように、学校では教えてくれない技で入試数学を完全攻略できるのか。「塾技100」は、市販教材の救世主となれるのか。
では、レビュー開始です。
『塾技100』の特徴
生徒の本当の学力とは関係なく、“知っている”、“知らない”の世界で合否が決まってしまう、そんな不条理を少しでも解消する、それが『塾技』なのです
と前書きにこう書いてある通り、この『塾技100』は、学校の授業ではほとんど扱われないけれど、公立トップ校や難関私立を目指す進学塾では必ず扱うタイプの典型的問題やその解法についてまとめられている本です。
『塾技100』が効くタイプ
すべての人に効く万能薬が存在しないように、どんなに優れた教材だって万人に合うものはありません。この市販教材『塾技100』が効くタイプをまとめると、次のような人です。
- 偏差値68以上の公立トップ校または難関国私立高校を志望している中3生
- 塾に通っていない、または進学塾に中3の途中から入塾した人
- 学校のレベルの基礎はクリアしている人
このようなタイプの中3生にとっては、『塾技100』は非常に有効な教材になり得ます。
そのタイトル通り、塾に通っている人にとっては普段塾で習うようなことが書かれているので、この教材は必要ありません。しかし、事情があって塾に通っていない人で、なおかつ公立トップ校や難関国私立を目指している人にとっては、これは必須の教材とも言えるでしょう。偏差値68以上の公立トップ校というと、神奈川県のレベルであれば、横浜翠嵐や湘南、柏陽や厚木あたりです。
あとは、レベルの高い進学塾に中3の途中から入塾したようなタイプの人が、中1中2内容の入試レベルの解法をマスターするために使うのも良いかもしれませんね。
ただ、この条件にあてはまらない人にとっては、この教材は確実にキャパオーバーになるので注意が必要です。
『塾技100』の長所・短所
次にこの教材の長所短所を率直にまとめます。冒頭にも書いたように、私はこの教材をTwitterのフォロワーさんから譲り受けたものであって、この教材の著者や出版社の方とは何の関係もありません。なので、誰に忖度することもなく、自由に思ったことを書きます。
長所
タイトル通り、この教材の長所は塾で扱うようなレベルの問題や解法をマスターすることができるということです。我々塾講師がこの本にざっと目を通しただけで、「そうそうこの問題、入試によく出るよね!」「そうそうコレコレ!この解法をマスターしておくといろいろな問題に応用が効くよね!!」と、テンションが上がる問題ばかりが揃っています。
『塾技100』の100はまさに100個の解法パターンが紹介されているということですが、個人的には特に平面図形や空間図形の問題チョイスが秀逸だと思います。難関校受験で最も差がつくのが図形問題なので、その辺も考慮されてのことでしょうか。このテキストの図形問題をやり込んだら、大概のレベルの図形問題には対応できるようになるでしょう。
あと、市販の問題集は解説が丁寧でないものが多いのですが、この教材は解説も丁寧に書かれており、トップ校を目指す学力のある受験生なら、十分自学ができるつくりになっているところも長所だと思います。
短所
次に短所です。大きく分けて3つあります。
まず一つ目は、問題数の少なさです。1つの例題に対して、類題が2〜3題しか用意されていません。おそらく紙面上の都合で仕方ないのかもしれませんが、どれだけ高学力向けの教材だとしても2〜3回解いただけで完璧に理解できる人はほとんどいないでしょう。この短所を補うためには、別の同じレベルの問題集(全国入試がベスト)を用意するか、何度も繰り返し類題を解くしかありません。
2つ目は、中学生が一人で使うことを想定すると、使いやすいとは言えないところです。一応単元別にはなっていますが、一つの単元につき例題が1題もしくは2題のみしか掲載されていないので、単元をすべて網羅しているわけではありません。
それを考慮した上でのおすすめの使い方は、前の学年の復習用としての使用です。例えば中2生がこの教材を勉強する場合、すでに全て学習し終えている中1内容を解きましょう。中2内容は、中3になってから、もしくは中2内容が全て終わる冬ごろになってから手を付けましょう。
やはりこのテキストは中3生向けだと思います。非受験学年の中1中2にとってはちょっと使いづらいかな。
3つ目は、100個の塾技以外は全てカットされているところです。当然ですが、この100個を全て習得すれば入試は完璧というわけではありません。これはあくまでもサブ用教材で、メイン教材は別に必要となります。
まとめ
いろいろと短所も書きましたが、「塾で教える難関レベルの問題を扱った市販教材」というコンセプト自体は嫌いではありません。むしろ好きです。問題のチョイスに関しては、きっとこの著者の先生とお酒を飲んで5時間は語れるくらい、大好きです。
ただ、中学生が一人で使いこなすには、少々クセが強すぎますね。使う人を選ぶ教材です。また、表題にあるようにこれ1冊で「入試数学を完全攻略」するのは少々無理があります。良い教材なんですけどね。
中学生にオススメというより、むしろ塾講師のバイトを始めたばかりの大学生や、数学の塾講師になりたての社会人にオススメしたい教材です。ちなみに私はこれ一冊でめちゃくちゃ楽しめました。
教材を譲ってくださったK様、この場を借りて改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました。また、お子様の志望校合格、おめでとうございます。