算数・数学の10問テストのやり直しを、自力で解かずに親御さんに教えてもらったり(小学生)、友達同士で答えや解き方を教え合ったり(中学生)している生徒がいることが、最近立て続けに発覚しています。たまたま発覚したのが最近だっただけで、実はずっと前からこういう状況だったのだろうと思います。なぜそう推測できるのかというと、今回ズルをしていることが発覚した塾生の算数・数学力や思考力が著しく低下しているからです。
うちの塾では、開校以来オリジナルの10問テストを全ての学年の毎回の授業で実施しています。そしてこの10問テストは、「間違えた問題を含め、全ての問題を自力でやり切る」ことを大原則としています。なので、授業で10問テストの解説をすることはほとんどありません。稀に、あまりにも正答率が悪い問題や、受験直前期などは解説をすることもありますが、解説をする場合でも、一から十まで全て解き方を教えることはありません。最初の取っかかりや切り口だけ教えたり、どういう図が有効かを伝えるのみです。基本的に、自分で考えさせます。
以前、Twitterにこのような投稿をしましたが、今日は少しだけ10問テストについて書いてみます。
10問テストのこだわりとか意図とかを語り出したら5時間は語れる自信がある。誰も聞きたくはないだろうけどwww
— りんごくん@慧真館 (@keishinkan) 2017年12月1日
10問テストを作成するときに意識しているのは、「基礎の習得」「典型的問題の反復」「思考力の養成」の3つです。この3つを、必ず毎回10問の中に取り入れるようにしています。なぜなら、その3つの要素こそが、数学の勉強の全体像だからです。
まずは基礎的な計算やその単元の基礎的な解法を身につけ、その単元の典型的問題を反復することで思考力の土台を培い、そして初見の問題を考えることで、考える力と実力を磨いていくことが、数学の勉強の流れです。これは普遍的であり、小学生でも中学生でも高校生でも同じです。
ところで、よくある数学の勉強法として、「ちょっと分からなかったらすぐに答えを見て、解法をそのまま覚える」というものが色々なところで紹介されています。これは一見、とても効率の良い勉強法のように思えますが、これが有効なのは、先ほどの3つの要素で言うと「典型的問題の反復」までです。学校の定期テストの勉強くらいであれば、その勉強法でも十分なのかもしれません。しかし、その効率の良い勉強法で身につくのは、せいぜい本質が伴わない薄っぺらい解法テクニックだけ。考える力はこれっぽっちも身につきません。むしろ、考える力に必要不可欠な、粘り強く考え抜く耐性すらどんどん奪われていく。
思考力とは、答えがすぐに思い付かないからと諦めるのではなく、図を書いてみたり、他の切り口から考えてみたり、たった1問でも色々と試行錯誤する中で身に付いていくものなのです。数学の勉強で最も大切なのは、その解法を身に付けることではなく、1問に悩みながら思考力を鍛えることです。それなしでは、いくら目の前の解き方が分かっても、いざ自分一人になると入試問題を解くことはできません。「教えてもらったら分かるけど、自分ではそんな解法思い付かないよ」という状態になるのです。
10問テストを自力でやり直しさせている一番の目的は、1問に悩みながら、思考力を身に付けさせることにあります。「だったらそれ以外は教えてやれよ」と思われるかもしれませんが、それ以外の基本的な問題は、教えなくてもテキストや授業ノートを復習すれば分かるレベルです。そのような基礎的な問題でも、教えないことで、復習の仕方だったり、あとで復習しやすいノートの取り方が身につくのです。
分からない問題を親御さんに教えてもらうことが習慣になっている小学生は、授業中に自分で考えることを放棄します。自分の頭を使って考えなくても、家に帰ったら簡単に親に助けてもらえるからです。だから、授業中は頭を極力使わずに、ただ時間が過ぎることをじっと待っています。
分からない問題の答えを友達に聞くことに慣れている中学生は、自分で復習しようとすらしません。自分でノートを振り返ってみるより、友達に聞いた方が早いからです。文章題ではいつまでたっても図1つも書けないし、図形の問題も補助線1つ引けません。そりゃそうです。図や補助線は、自分でアレコレと悩んだ経験をしてはじめて、有効なものが書けるようになるのです。友達に教えてもらうばかりでは、自分で書けるようになるわけがないのです。
「友人同士の教え合い」と言えば何となく聞こえは良いでしょう。最近流行りのアクティブラーニングでも、結局友人同士の教え合いです。しかし断言しますが、友人同士の教え合いによって、特に教えられる方の学力が身につくことはまずありません。百歩譲って教える方には何かしらのメリットがあるとしても。逆に、友人同士の教え合いにより、教える方教えられる方の学力差がより大きくなるだけです。
話がアクティブラーニングのディスりに流れてしまいそうなので、10問テストに戻ります。
小学生の親御さんにはいつもお願いしていますが、たとえ子どもが10問テストの問題を教えてと言ってきても、先生に聞きなさいとつっぱねてください。決して教えないでください。我が子を思考力の乏しい子にしたいのなら話は別ですが。
また、今後、10問テストの友人同士の教え合いが発覚した場合、直ちに退塾の措置をとります。これだけ10問テストの意義を授業でも説明していてもまだやるというくらいであれば、もう塾に来ない方が良いです。不正を続けてまで塾を続ける意味なんて、どこにもありません。
あと、友人同士で和気あいあいとみんな一緒に不正をしていた塾生たちは、一度でも周りにいる一人で一生懸命考えている他の塾生の気持ちを考えたことがあるのでしょうか。そんなことも考えられないような心の偏差値の低さだったということでしょうか。
正直者が馬鹿をみるような塾になるくらいなら、私は、この塾を自分の手で潰します。