今日は中3生対象の保護者会でした。最近は毎年大きな会議室を借りて、外部の方も受け入れて説明会をやっていましたが、今年は原点回帰ということで、いつもの教室で、中3生塾生の保護者の方のみを対象にこじんまりと、1時間30分みっちりと保護者会を実施しました。
やはり、このスタイルが良いように思います。ざっくばらんに、ブログではなかなか書けないような(書いたら確実に炎上するような)ことも、信頼関係のある塾生保護者様の前なら話すことができます。皆様のおかげで濃密で温かい保護者会になりました。
さて、今日のブログでは、あまり時間がなくて触れられなかった「高校受験生の保護者の役割」について、改めて書いてみようと思います(過去にも何度か書いています)。
中学受験生でも大学受験生でもなく、一番難しく一番危うい年齢の高校受験生の親として、何をしてやればいいのか。子どもとどう関わっていけばいいのか。
少々辛辣で偉そうな書き方ですが、何かヒントになれば幸いです。
親は子どもの羅針盤であれ
15歳の子どもが、これから歩む人生の方向を選択をするためには、羅針盤が必要です。羅針盤がないと、子どもはどちらの道に進んでよいか分からなくなってしまいます。まだ未熟な15歳の子の羅針盤になってあげるのが、親の役割だと言えるでしょう。
上記はやや古いですが、ベネッセ教育研究所が2013年にまとめた「高校データブック」の一部です。
参照:http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3180
これによると、中学生の志望校選びの情報源として、「高校の見学会や説明会」や「担任の先生の話」以上に、意外にも「保護者の話」を参考にしている場合が最も多く、84.8%に及びます。多くの中学生にとって、保護者の存在が志望校決定に際して非常に重要となっているようです。親が情報源となり、子どもが進路を考えたり決定したりするために必要な情報を、一人の大人という立場から上手に与えてあげましょう。
ただし、あくまでも高校受験は子どもの受験であり、親の受験ではありません。子どもを親の考え方に従わせ、無理やり誘導するのは単なる親のエゴイズムであり、羅針盤ではありません。一方で、「全て子どもに任せています」という放任主義のご家庭もありますが、それは単なる育児放棄と同じです。よほど子どもがしっかりしていて、志望校に対する意志が固い場合は別ですが、そうでない場合、まだまだ社会を知らない子どもに任せきりにするのではなく、子どもと一緒に進路を考えてあげることが大切です。
押し付けでも放任でもなく、子どもと対等な立場で、一人の大人としての客観的意見をうまく伝えてあげてください。まあ、それが難しいのは重々承知でお願いしているんですけどね。
学校説明会の日程調査や予約は子どもと一緒に
親が率先して参加する高校の説明会を決めたり、日程を調べて勝手に予約をしたりするご家庭がありますが、親が率先して頑張れば頑張るほど、皮肉なことに子どもが受験に無関心となってしまいます。親が子どもの変わりとなって進路のことを考えてしまうと、子どもはいつまで経っても受験を自分の事だと考えられなくなり、まるで人ごとのようになってしまうからです。
説明会に参加する高校も子どもと一緒に相談して決め、できれば子ども自身に日程や行き方を調べさせてください。あくまでも、親は伴走者であることを徹底してください。
子どもが自分で志望校をなかなか決められないときは
子どもが自分で志望校をなかなか決められないときというのは、大概にして高校に対する情報量が少なすぎるときです。そういう場合は、子どもと一緒に色々な情報を集めながら、色々な話をしてあげてください。志望校を決められない子どもでも、何となく気になっている高校や漠然とした憧れを持っている高校はあるはずです。そのような高校を一緒に見に行ったり、文化祭や体育祭に参加してみたり、高校付近を散歩したりしながら、子どもが高校に対して具体的なイメージを持てるような手助けをしてあげてください。
親自身の勝手な焦りから、「まだ志望校が決まらないの?」「将来やりたい事はないの?」と責め立てても、何も良いことはありません。あとは、時が来るのをじっと見守りましょう。なかなか志望校が決まらない子でも、決めなくてはならないときがきたら、色々な情報を分析して、きちんと答えを出してきます。
志望校に行きたい理由を子どもにプレゼンさせてみる
安易に志望校を選択した子どもの中には、いざ高校に入ってみると「こんなハズではなかった」「思っていたものと違う」など、理想と現実とでミスマッチを起こしてしまう子もいます。それを防ぐためには、子どもが志望校を決めてきたら、その学校に行きたい理由をしっかりと自分の言葉でプレゼンさせてみると効果的です。もしも、イメージだけが先行していたり、まだあやふやな部分があれば、親がツッコミを入れて、志望校や進路についてより深く考えるきっかけを作ってあげましょう。
そして、もしも子どものプレゼンに納得できたら、それからは心から一緒に応援してやってください。
受験生の頭の中
毎年受験生を見ていて思うのは、各ご家庭、それぞれに事情を抱えており、そして15歳の子どもはそれを敏感に察知しているなということです。
普段は家庭内では反抗的で、親に対して減らず口をたたいている子も、実は「経済的に親には迷惑をかけたくない」という悩みを吐露する子も実際は多くいます。家庭の状況を子どもなりに考えて、「下にまだ小さい兄弟姉妹がいるから、自分は私立に行くわけにはいかない」と強く思っている子もいます。
また、家庭の事情とは別に、受験そのものについて悩んでいる子も多いです。「とにかく受かりたい。落ちて恥をかきたくない。」という思いが強い子もいれば、「落ちても良いから、自分が行きたいところを目指して頑張りたい。」という意志が強い子もいます。
どちらが正しいというわけでもありません。正しい受験生の姿があるとしたら、進路について色々なことを考えながら、思い悩むことでしょう。子どもがどのような思いでどのような選択をするか、これは本人の性格によっても、またそれぞれの家庭事情によっても左右されます。特に経済的な話は、なかなか子どもからは切り出せないものです。受験をよい機会と捉え、家庭の経済的事情を親子で腹を割ってじっくりと話をしてください。
親は子どもの応援団長であれ
高校受験生の親の役割は、精神面と身体面での子どものサポート役です。それ以上でもそれ以下でもありません。
勉強に疲れて帰ってきた子どもに温かいご飯を用意してあげたり、生活面で乱れないように規則的な生活を送らせたり、なかなか成績が上がらずに苦しんでいる子を励ましてあげたり、成績が伸びてきたら褒めてあげたりというのが、受験生の親の役割です。
心配や不安から、受験生の親の役割を大きく逸脱し、まるで塾の先生や進路指導の先生のように、勉強の内容や方法についてアレコレと口を挟んできたり、成績や偏差値が伸びないことに子どもを責め立てたりする保護者もいますが、親子関係がギスギスしてしまうだけで、あまりいい結果を生みません。それよりも、頑張っていることを認めてあげ、志望校に挑もうとしている子どもを心から応援してあげてください。うまくいかないときは責めるのではなく一緒に悩み、うまくいっているときは一緒に喜んであげてください。
温かい家庭環境をつくってあげてください
受験生は、親が思う以上にかなりのストレスを抱えて過ごしています。学校や塾でいろいろなストレスにさらされて心身とも疲れきっても、「早く家に帰りたいな」と思えるような、円満な温かい家庭環境をつくってあげてください。
家庭が安らぎの場であれば、受験生は外で抱え込んだストレスや悩みを上手く消化することができます。一方で、家庭の中でもストレスを抱えてしまうと、子どもはどこにも逃げ場がなくなってしまい、変な方向に逃げ場を求めてしまうようになるか、受験前にストレスで潰されてしまいます。
成績や偏差値、志望校を理由とした親子喧嘩は、百害あって一利なし
偏差値や志望校を理由とした親子喧嘩は、百害あって一利なしです。絶対に避けてください。親御さん自身の不安や焦りからイライラする気持ちは理解できますが、親子喧嘩をしてもイライラをぶつけ合うだけで、そこから何も発展していきません。
成績や偏差値が上がらないことや、志望校がなかなか決まらないことで一番不安に思っているのは、子ども自身であることをくれぐれもお忘れなく。
親自身ができないことを子どもに要求しない
子どもには勉強しろと口うるさくいうお父さんが、仕事から帰宅したらビール片手にテレビに夢中だったり、本を読みなさいと口うるさく言うお母さんがスマホばかりいじっているという環境で、子どもが自発的に勉強をするはずがありません。親自身ができないことを、子どもにばかり要求していると、子どもは親のことを尊敬できなくなってしまいます。
自発的に勉強をするような子になって欲しいのなら、親自身がまずは楽しみながら勉強に取り組んでみたり、本を読む子になって欲しかったら、親自身が楽しみながら本を読む姿勢を子どもに示してあげてください。
最後に
過去の塾生がそれぞれの親に宛てた手紙の中で書いていた、親からの言動で嬉しかったことをいくつか書いておきます。
- 勉強で上手くいかなかったとき、「今のあなたで100点満点なんだからね。」と言ってくれたこと。
- 勉強や進路について、自分を信じてくれたこと。
- 勉強に集中できるように、家族が気を使ってくれたこと。
- 夜勉強していたら、温かい飲み物を持ってきてくれたこと。
- 模試の点数が上がったときに、一緒になって大喜びしてくれたこと。
- 公立が私立かで悩んだとき、とことん相談に乗ってもらったこと。
- 第一志望が危なくても、「納得するまでやりなさい。ダメでもお母さん頑張るから大丈夫!」と言ってくれたこと。
親になったことにない私が偉そうにどうもすみませんでした。