なぜ人は家にいると勉強できないのか

2012年10月20日

「家にいると勉強ができない」という話はよく聞く。私が受験生だったときも、受験直前の12月くらいまでは家であまり勉強ができない子だった。自宅には小さいながらも自分の部屋が与えられ、大きな勉強机があり、必要な参考書や問題集も一式揃っていて、勉強するには申し分のない環境だった。それでも、家ではやはり思うように勉強ができない。

思うに、そもそも家という場所は勉強に向いていない。家というのは、そこに住まう人の唯一のプライベート空間であり、リラックスできる場所である。家族と食事をしたり、お風呂に入ったり、睡眠を取ったり、時には親や兄弟と喧嘩をしたり、家でしかできないことは山ほどあるが、それらはみな外での緊張感から解き放たれた状態でしかできないことだ。一方で、勉強するのに必要なのは「緊張感」。リラックスする場所である家で、「緊張感」を持続させながら勉強しろと言うのは本当に酷な話だ。

家にいると勉強ができないという人は、塾の自習室や図書館などの家の外で勉強をすると良い。家という私的空間にくらべ、塾の自習室や図書館という公的空間の方が緊張感を持続するのが容易である。また、自習室や図書館には必ず閉館時間という「終わり」があるため、「終わり」を意識して勉強をすることで、集中力が持続しやすい。家だと、自分の勉強机が永遠に目の前にあるため、なかなか「終わり」を意識することができずに、結局ダラダラと過ごしてしまう。

私が受験生だったときも、秋くらいまでは塾の自習室に通いまくった。授業が始まる時間より早く塾に行って自習。授業が終わっても塾の先生が許してくれる限り(だいたい23時くらいまでだった)塾に残って自習。学校がない日は、お昼用と夜用の弁当を2つお母さんに作ってもらって、朝から夜まで塾で過ごした。

ところが、そんな自習室フリークだった私が、12月を過ぎたころからパッタリと自習室に通うのをやめ、家でせっせと勉強するようになった。塾の授業が始まる直前まで家で勉強し、塾が終われば急いで家に帰って自宅で勉強。家で勉強できない子だったハズが、一転して家で勉強する子になった。その理由は、家でも「緊張感」を保って勉強しなくてはいけない状況になったから。早い話が、落ちるかもしれないという危機感が、勉強しなくてはいけないという緊張感に変わったから。

そんなわけで、家で勉強できるかできないかは、本来ならリラックスする場所である家でも、緊張感を持たざるを得ない状況にあるかどうかによる。家で勉強できない時期は、自然に緊張感が芽生える公的空間で勉強した方が賢明。ちなみにうちの塾では、毎年中3生に11月から毎日塾に通わせることにしている。「毎日塾かよ~」と嫌な顔をするヤツはいるだろうが、痛いほどピリピリとした緊張感の漂う自習室の中で勉強する方が、家で勉強するよりも実は何倍も楽なのである。

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