なぜ新聞を読む子は賢い子が多いのか:小中学生こそ積極的に新聞を読め。

2015年6月23日

塾で小学生新聞と中高生新聞をとることにしました。これ見よがしに2階の教室の入口に置いていますので、興味がある人は自由に手に取って読んでみてください。

小学生新聞は日刊で、中高生新聞は週刊で届きます。普段新聞を読む習慣のない人はもちろん、特色検査実施校を目指している中1〜中2生は特に目を通すようにしましょう。中3生は、できれば中高生新聞ではなく、大人向けの一般の新聞を読みましょう(塾には置いていませんが)。

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特色検査は新聞記事からよく出題される

湘南高校の特色検査には、毎年必ず1問は新聞記事を題材に問題が作られています。2013年度は「池上彰の新聞ななめ読み」(2010年12月24日 朝日新聞)からPISAの学力調査から見た「読解力」の矛盾についての記事、2014年度は「数学という力」(2010年2月1日 朝日新聞GLOBE)から暗号と素数の関係性についての記事、2015年度は2014年7月6日の朝日新聞「日曜に想う」からアイスランドの電力についてが、それぞれ大問のリード文に登場し、新聞記事の内容と関連した問題が展開されています。湘南高校だけでなく、横浜サイエンスフロンティアの特色検査でも毎回新聞記事が資料として登場します。

その他の高校は、直接新聞記事の抜粋はないにしても、2015年小田原高校では第一次産業の衰退と後継者不足について、2015年の柏陽高校では世界の貧困と南北問題について、2015年横浜翠嵐ではジオパークについてなど、普段から新聞を読んでいない限り、普通の中学生がなかなか日常生活で触れないような、世界や日本の『今』を題材としているテーマからの出題が多いのが特色検査の特徴のひとつと言えるでしょう。

もちろん、これらの知識がなくとも解けるかもしれませんが、バックグラウンドを知っているのと知らないのでは、問題に対する取っ付きやすさがまるで違ってくると思います。

多くの中学受験生がなぜ小学生新聞を読むか

中学受験の世界では、昔から受験対策の一環として小学生新聞を購読することが常識とされているようで、特に難関私立中学校合格者の多くが、小学生新聞の購読者(またはかつてのかつての購読者)であるそうです。

参照:難関私立中学の合格者は朝小の読者多い

今春の早稲田実業学校中等部で、聞き取り調査した合格者の36.8%(95人中35人)が朝小の現読者、またはかつての読者だった。慶応義塾中等部では同41.1%(73人中30人)、東大寺学園中学校では同29.8%(161人中48人)だった。

なぜこれだけ多くの中学受験生が、小学生新聞を読んでいるのでしょうか。中学受験は専門外ですが、私なりの見解を述べてみたいと思います。

時事問題に強くなる

小学生新聞を購読する中学受験生の一番の目的が、時事問題対策としてでしょう。最近の中学入試の社会の問題は、一昔前に比べて時事問題に関する出題が多くなっているようです。時事問題こそ、現実のさまざまな問題に興味・関心を持っているか、自分自身の頭で考えているかどうかをはかる、本当の社会科の学力を問う格好の題材ということなのでしょう。特色検査で時事問題を題材としたテーマが多いのも、これと同じ理由なのかなと推測できます。

実用日本語に慣れる

新聞記事は「実用日本語」で書かれています。実用日本語とは、実用的で現実的な日本語で表現されている文章のことで、小中学生の国語の教科書によくあるような文学的文章とは使われている語句が違います。たとえば、「需要」と「供給」、「コンプライアンス」などの語句がそうです。このような語句は、新聞記事や新書などでは日常的に目にしますが、たとえば芥川龍之介や太宰治が書いたような文学的文章では滅多にお目にかかることはありません。

文学的文章と実用日本語の違いは、使われている語句だけではありません。文学的文章は、その文章を書いた作家だからこそ書くことができる、味わい深い表現が使われており、小中学生はおろか、一般庶民には絶対に真似できるようなものではありません。だからこそ、読む値打ちがあるのですが、文学的文章をいくら読み込んでも、じゃあ書く力が伸びるかというとそうはいかない。一方で実用日本語は、一般庶民が真似できるような現実的で論理的な日本語が使われています。小中学生であっても、語彙力と基本的な「型」を学べば、十分新聞記事のように論理的な文章を書くことが可能です。

新聞を普段から読んでいると、実用日本語に多く触れる機会があります。「新聞を読むと国語力が伸びる」と言われますが、それは、新聞を読むことで、実用日本語の使い方や読み方に頭が慣れていき、しかも訓練次第では新聞記事のように論理的に書くことができるからでしょう。

新聞じゃなくてネットニュースじゃダメな理由

最近はスマホやネットニュースの普及により、新聞の購読者が減少しているようです。特に若い世代なんて、新聞離れが甚だしく、塾の生徒に聞いても新聞をとっている家庭の方が少ないくらいです。私自身も、お恥ずかしい話ですが、我が家で新聞を購読しているものの、ニュースのチェックはネットやスマホのニュースアプリ等のチェックで済ませていて、ほとんど新聞に目を通すことはありませんでした。

しかしそれだと、自分の『社会』が非常に偏っていることに気が付いたんですね。ネットやニュースアプリ等のニュースに頼っていると、自分の興味のある分野の情報しかチェックしない。しかも、ネットやニュースアプリの記事は、事件や出来事の大まかな概要だけが中心で、事件の背景まで知ることはなかなかできない。スマホやネットニュースを頻繁に見ているのにもかかわらず、『世間知らず』になってきたわけです。

さすがに危機感を持って、渋々ながら新聞を開いてみました。そうすると、自分の興味あるなしと関係なく、今起きている様々な事件や出来事の記事が目に入る。ネットニュースなら絶対にタップして開かないだろう事柄が、否応なしに目に飛び込んでくるんです。また、特定の事件や事象を、何ページにも渡って深く掘り下げて伝えてくれる。ネットニュースと新聞では、自分の中の社会の幅の広がりと奥行きの深さが全く異なってくることに、今更ながら気が付きました。

まとめ

小中学生が生きる社会は、基本的に狭いです。大人であれば、仕事を通じて社会はどんどん広がっていきますが、家と徒歩圏内にある学校、自転車でいける距離にある習い事教室を往復するだけの日々を過ごす小中学生は、意識して社会を広げていかない限り、非常に視野が狭くなってしまう。

一方で、難関私立や中高一貫校の中学受験、神奈川県のトップ校の特色検査などでは、「社会性」を身につけているかどうかが問われます。半径何メートルだけの世界で生きているのではなく、もっと大きな視野を持っているかどうか、社会で起こっていることと自分とを上手にリンクできているかどうか、情報を分析し、自分の意見を論理的に述べられるかどうかが要求されます。トップ校は、社会のリーダー的存在を育成する場所です。社会のリーダー的存在である人が、社会を知らないとお話になりません。

新聞を読むということは、社会に触れ、社会と繋がることとイコールであるように思います。社会との接点が少ない小中学生だからこそ、積極的に新聞を読み、意識的に社会に触れていくことが大切なのです。