脱パターン化された神奈川県の入試数学。あと1ヶ月でやっておくべきことをまとめてみた。

2015年1月15日

昨年度の入試問題で「脱パターン化」した神奈川県の公立入試の数学。
過去記事参照:神奈川の公立入試を、得点分布から分析してみた。(第2回「数学編」)

昨年度の脱パターン化を受け、今年の入試はどうなるか。あと約1ヶ月でどのように対策すればよいか。塾講師としての私の考え方と予想を書いてみたい。※あくまでも予想なので、真に受けすぎないようにご注意下さい。

従来の出題傾向の問題からいかに点数をとるかが鍵

「脱パターン化」と言っても、旧入試制度の数学の問題から新入試制度1年目・2年目の問題を比べてみると、「大問5」以外は毎年同じパターンの問題が出題されている。まずはその内容を見てみよう。

問1:計算問題(12点)
問2:小問集合(32点)
問3:y=ax2の関数(12点)
問4:確率(12点)
問5:旧共通入試⇒2次方程式の規則性、2013年度⇒式の証明、2014年度⇒連立方程式の応用(10点)
問6:空間図形(12点)
問7:図形の証明(10点)

このように、y=ax2の関数、確率、空間図形、図形の証明は毎年出題されているので、今年も同じような形式で出題される可能性が高い。また、毎年同じように出題されているこれら4つの大問に対しては、ほとんどの受検生はしっかりと対策をしてくるハズ。入試というのは、みなが得点する問題で落とすのが一番の痛手になるので、まずは従来の形式で出題されるものに対しては、ミスなく得点できるようにしておきたい。

図形の証明は1問で10点分なので気をつけよう

新入試制度になり、図形の証明の大問は完全証明のみの出題になった(ちなみに旧共通入試の頃は、穴埋めの証明問題に、角度や線分の長さなどを求める問題がくっついていて、実質2問で構成されていた)。もちろん完全に証明できなくても部分点をもらえる場合もあるが、1問で10点の配点は非常に大きい。証明ができない人は、100点満点分の10点を最初から取れないことが前提になってしまい、証明が得意な人に比べて非常に不利だ。

今年の入試も完全証明問題は必ず出題されると思われるので、証明が苦手な人はあと30日間でどうにか克服しよう。証明問題の克服の仕方は「今からだって遅くはない!数学の苦手を克服する方法と受験数学攻略法。」を参照して欲しい。

y=ax2の関数、空間図形の(ア)と(イ)は簡単に攻略できる

このブログでも何度も書いているように、y=ax2の関数の全ての問題と、空間図形の3つのうち最初の2つは攻略するのは簡単だ。トップ校を狙っている人は空間図形は(ウ)を含めて全て正解できるような勉強をしておきたいが、偏差値60以下の2番手校よりレベルが下の学校を志望している人は、空間図形の(ウ)は捨て問題でかまわない。問1の計算問題、問2の小問集合に加え、問3の関数、問6の空間図形は是非得点源にしておきたい。

迷走している大問5はどうするか

さて、ネックになるのは、新入試制度になってから出題形式が落ち着かない「大問5」だ。共通入試の頃は、大問5には毎年2次方程式の規則性の問題が出題されていたが、2013年度は式の証明問題、2014年度は連立方程式の文章題と、毎年大問5だけ出題形式がコロコロと変わっている。

そのことから考えると、昨年度連立方程式の文章題が出題されたからと、今年も連立方程式が出題されるかどうかは分からないし、むしろ可能性から考えるとまた傾向が変わると思っておいた方が良い。

そこで、大問5に出題される可能性があると考えられるものをリストアップしてみると、次の5つが挙げられる。

  • 連立方程式の文章題
  • 式の証明
  • 規則性(1次方程式及び2次方程式)
  • 資料のちらばりと代表値
  • 1次関数の利用(文章とグラフがセットのもの)
  • こんなものだろうか。大問5は、どんな問題が出題されるにしろ、途中経過や考え方を全て記述させるような形式になるだろう。
    私個人の意見としては、旧共通入試で出題されていた「規則性」がそろそろ復活してもいい頃かなと思っている。規則性の問題は、規則を考えて文字を利用して式を作り、それを方程式に持ち込んで値を求めるような問題で、考え方を記述させるにはもってこいだ。

    他には、1年生で習う「資料のちらばりと代表値」の問題は、最近全国の他の都道府県でよく出題されている。全国入試問題正解を解いている人なら分かると思うが、資料を見て考え方を記述させる問題が主流で、記述形式の大問5と親和性が高い。

    最後の1次関数の利用は、神奈川県がy=ax2の関数が出題されるので、関数がだぶる分可能性は薄いが、全国の他の都道府県では頻繁に見かける問題。グラフを利用して文章問題を考えさせるような問題だと、記述形式として出題できるので注意が必要。

    トップ校を目指している人は大問5の変化に注意しておく

    パターン化されていない問題が出題されると、だいたいほとんどの受検生が対応できないので、その問題の平均点がぐんと下がる。先ほども述べたように、入試は皆が正解できる問題を落とすことが痛いのであって、皆ができない問題を同じように落としても痛くも痒くもない。

    ただし、トップ校を目指している人なら話は別。トップ校を受験するような上位層は、併願私立をオープン入試で受験していたり、特色検査対策の勉強を重ねている分、パターン化されていない問題も解ける実力がある人が多いので、大問5の出題形式が変わってもしっかりと得点してくる。実際、昨年度の大問5の連立方程式の文章題だって、トップ校の受験生は正解できている人が多かっただろう。

    つまり、トップ校受験生にとっては、大問5の変化こそ「差」が出る問題であり、合否の分かれ目となる可能性が高い問題と言える。トップ校受験生は、この問5の変化に対応できるようにするため、連立方程式の応用や式の証明に加え、最低でも規則性や資料のちらばりと代表値などの問題を入試までに解いておいた方が良いと思う。

    まとめ

    まとめると、まずは毎年出題されているパターン化された問題を確実に解けるようになるということ。現時点でまだ不安な大問パターンがある人は、まずその克服に着手するべきだ。

    その上で、出題パターンにある程度慣れた人や、トップ校を受験する人、また5教科の中で数学を得点源としたい人は、パターン化されていない大問5の変化に対応できるように、全国入試問題正解や入試用の問題集などを使い、規則性や資料のちらばり、1次関数の利用などをあと30日で解いておいた方が良いだろう。もし出題されなくても、規則性や一次関数の利用は特色検査の良い対策にもなるので決してムダにはならない。