飼い殺しと退塾と

飼い殺しと退塾と

2014年6月3日
日常
塾の日常

塾には「飼い殺し」という言葉がある。人に対して使うにはためらうような言葉だが、生徒の「飼い殺し」は多くの塾で日常的に行われている。

私が某大手塾に在籍していたときの話をしよう。授業がある日にもかかわらず、何の連絡もしないで塾に来ない生徒が複数いた。それも1日2日の話ではなく、無断欠席が日常茶飯事になっている様子だった。生徒が無断欠席をしても、その教室のスタッフは生徒の家に連絡を入れるでもなく、まさに放置状態。業を煮やした私は、当時の教室長(教室の最高責任者)に尋ねてみた。

私:「全く授業にこない生徒がいるんですけど、どうなっているんですか?」
教室長:「知らない」
私:「一度電話して親御さんときちんと話をした方がいいんじゃないですか?」
教室長:「いいんだよ、向こうから連絡があるまで放っておけば。やる気になったら来るんじゃない?」
私:「でもあの子、ここ1ヶ月ずっと来てないですよね。授業料無駄になってしまうのに、親御さん知っているんですか?」
教室長:「別に授業料が払われているんだからいいじゃん。こちら側から変に動いて、もし辞められてしまったらウチの教室の生徒数が減っちゃうじゃん。」

呆れてモノも言えなかったが、教室長の意向に逆らうこともできず、結局飼い殺しにされてしまっている生徒を指を咥えて見ているだけしかできなかった。こういうことの積み重ねが原因で、飼い殺し状態を放置するシステムに嫌気がさし、私はこの大手塾を去った。

実は飼い殺しをしている、またはされている限り、親も子も講師も塾経営者も、みな幸せなのである。親は子どもが塾に在籍しているという事実だけで安心するし、子は塾の先生に叱られて嫌な思いをすることもないし、講師もそんな不甲斐ない生徒のために骨を折ることもない。経営者にとっては、黙っていてもカネが毎月入ってくるので、これ以上良いことはない。

しかし、私は飼い殺しが大っ嫌いである。飼い殺しの生徒を抱えることによって塾が大きくなるのならば、そんなことをしてまで塾を大きくしたいとは一切思わない。そのため、悪意のある無断欠席をすれば一発で退塾してもらっているし、授業には来ていても課題等をほとんどしない、または適当にしてごまかすなどの行為をした場合でも退塾してもらっている。

理由は簡単で、うちの塾はやる気がある人がもっと勉強するための塾だからだ。ヤル気のない状態の生徒を野放しにしておいても平気な塾ではないからだ。

先日、久しぶりに退塾勧告をした。再試をしない、宿題をしない、おまけに無断欠席ときたのだから、もうこの塾ではどうすることもできない。うちの塾は、「やる気〜スイッチ君のはどこにあるんだろう〜。見つけ〜て〜あげるよ、君だけの〜やる気スイッチ〜。」と、やる気のない生徒にやる気スイッチを押してあげる塾ではない。ヤル気のない生徒にかける時間を、ヤル気のある生徒の指導にかけてあげたいと思う。