2020年2月14日(金)に行われた神奈川県公立入試の問題講評の数学編です。国語はすでに公開されているすばる進学セミナーの中本先生の記事「問題分析 神奈川県公立高校入試2020 国語」をどうぞ。
大問の構成が変化!
2020年の数学の一番の話題と言えば、大問の構成がこれまでと大きく変化したことでしょうね。2019年度の大問構成と比較してみましょう。
<2019年度>
問1:計算(5問)
問2:小問集合(6問)
問3:小問集合(4問)
問4:関数(3問)
問5:確率(2問)
問6:空間図形(3問)
問7:図形の証明(3問)
<2020年度>
問1:計算(5問)
問2:小問集合(6問)←ここに証明が加わる
問3:小問集合(7問)
問4:関数(3問)
問5:確率(2問)
問6:空間図形(3問)
2019年度までは、一つの大問として最後の問7に鎮座し、歴代の受験生を苦しめてきた「図形の証明」が、あろうことか問3の小問に組み込まれてしまいました。
2018年度にマークシートが導入されから、証明の穴埋め形式や小問構成等でこの問7だけは微妙に毎年迷走していたのですが、2020年度いよいよ小問に格下げという形になってしました。これも時代の流れですね。
これにより、正答率が毎年10%を切る低さとなっていた平面図形の(ウ)の問題が実質上なくなり、図形の証明が小問に適したとても解きやすいものとなりました。
同じく問3に、ヒストグラムが登場したことも話題となりましたが、資料の活用自体は毎年問2の小問で登場していたので、そこまで受験生を動揺させることではありません。
あとは超マイナーなチェンジですが、円周角の問題が初の4択問題になり、ぐっと解きやすくなりましたね。
解きやすい問題が増えた!
問3小問平面図形の難易度下がる
今年の数学の特徴はもう一つ、これまで受験生を苦しめてきた問3小問の平面図形や各大問の最後の設問が、少し解きやすくなったことにあります。
例えば2019年度、正答率がたった2.1%だった問3小問の面積比の問題、2020年度では問3の(ウ)がそれに当たると考えられますが、2019年度よりも解きやすくなっていました。皆が当たり前に解けるほど簡単だとは言いませんが、数学をきちんと勉強してきた上位層にとっては解ける問題だったのではないでしょうか。
おそらく正答率は昨年度の2.1%よりも上昇するかと思います。
問4関数ウも随分解きやすくなった
解きやすくなったと言えば、昨年度正答率が2.0%だった関数の(ウ)も今年は随分解きやすくなりましたね。面積比を求める問題でしたが、大きな三角形から小さい三角形を引いて面積を素直に求めるという、面積比の中でも非常に基礎的な問題でした。計算はやや複雑にはなりますが、分数を含む計算が必要なのは毎年のこと。この問題の正答率も今年は上がるでしょう。
問5確率のルールが分かりやすくなる
続いて問5の確率です。これまでの神奈川県の確率の大問の特徴として、文章で書かれた複雑な条件を正確に把握し、場合分けを考えるという、情報処理的要素がとても大きいことがあげられましたが、今年はこれまでよりも条件が単純化されました。
(イ)の問題も空間を把握する力は必要となるものの、2019年度や2018年度よりも思考の手間はかかりません。そういう意味では確率の問題も解きやすくなったと言えるでしょう。
問6空間は相変わらずの難問
問6の空間図形は三角錐の展開図の問題でした。展開図の問題は頭の中で正確に立体を組み立てる必要がある分、難易度は上がります。それができればアとイは簡単ですが、展開図に慣れていなければイの体積は正解できません。
ウは難問ですね。解き方はこんな感じです。台形に持っていけばできるのですが、なかなか至難の技でしょう。
2020年数学の中で一番の難問は間違いなくこの問6の(ウ)でしょう。2019年も問6のウの正答率が1.7%と難問でしたが、今年も同じくらいの正答率になりそうです。
「数学は点数差がつかない問題」解消か!?
まとめると、2020年度の数学の特徴は以下の2点です。
- 大問構成の変化
- 解きやすい問題の増加
受験生は「大問構成の変化」に注目した人が多いと思いますが、教育委員会の真の狙いは「解きやすい問題の増加」により、数学でも他教科同様きちんと上位層で差をつけることにあると考えられます。
上の表の通り、2019年度入試では、数学の県平均は50.3点と他の科目と比べても決して低くないにも関わらず、偏差値70の最上位層でも数学の平均点が67.0点と7割にも届かず、県平均はそこそこなのにトップ層は得点できないという結果となりました。つまり、数学は標準偏差(点数がとれた人と取れなかった人の差)が他教科に比べてとても小さく、ほとんど差が付かないことが問題視されていました。
その理由は、正答率が一桁台の問題が数学だけ異様に多いことにありました。
このグラフは2019年度の英数の正答率分布を調べたものなのですが、なんと100点満点中34点分が、正答率10%に満たない問題だったのです。これでは差がつかなくて当然ですよね。
2020年度は、2019年度と比べて「めちゃくちゃ簡単になった!」とまではいかないものの、割と解きやすくなりました。特に今まで難しかった問題が解きやすくなったので、上位層ほどそう感じていることでしょう。
これにより、「数学は点数差がつかない問題」が幾分か解消されるだろうなと思います。
やるじゃん教育委員会!
平均点予想
偏差値65以上の上位層での平均点は間違いなく上がるでしょうね。一方で正答率が低い問題は、最初から捨て問と決め込んで手を付けなかった受験生が多いと考えられる偏差値60未満の層は2019年度と平均点はあまり変わらないかと思います。一番微妙なのは偏差値60〜65くらいの層かな。できた人とできなかった人が一番分かれるかもしれません。
総合すると、平均点は昨年よりもやや上昇くらいでしょうか。
2020年度の変更を受け、来年度以降は「数学は差が付かないから最初から捨て問を決め込む」という姿勢は危険です。特に上位層は他教科同様、しっかりと全問解き切る力をつけておくことが課題となるでしょう。