今日は午前中から県教委主催の学力向上進学重点校の説明会に、相方からうつされたであろう風邪気味の体にムチをうちつつ本郷台の横浜栄公会堂まで行ってきましたのでレポートします。
プログラム内容
説明会のタイトルはその名も「神奈川の県立高校改革における『学力向上進学重点校』とは何だ!」というもの。
そうそう!ほとんどの人が、その「学力向上進学重点校」の中身や急にエントリー校を膨大に増やした経緯や、これまた急に独自の特色検査をとりやめて共通のものに変更した意図やテストの内容など、まさに「学力向上進学重点校って結局なんぞや?」ってことを知りたがっているのです。
これは期待が持てそうですね!
ということで、今日の説明会の資料として配られた次第に書かれていた本日のプログラム内容はコチラ。
- 基調講演「なぜ、学びが大事なのか」
- 学力向上進学重点校について
- 学力向上進学重点校の具体的な取組について
頑張ってその順にレポートしていきます。
基調講演「なぜ、学びが大事なのか」
プログラムの最初は、東京大学高大接続研究開発センターの濱田淳子教授による基調講演から。基調講演のタイトルは、「なぜ、学びが大事なのか」。
「学力向上進学重点校って何だ」ってタイトルじゃないんかいという疑問はとりあえずおいといて、約40分の講演にじっと耳を傾けました。もしかしたら東大の教授から直々に学力向上進学重点校の取組みや中身についてお話があるかもしれないので、風邪をひいているからってうかうかしてられません。
教授の40分間のお話は、すごく簡単にまとめてしまうと以下の3点に要約されます。
- 複雑化された社会で生きていくには「自分で学ぶ力」と「思考・発想の軸足となる専門性」が必要。大学はそれらの力を鍛錬する場。だから大学に行く意味があるよ。
- 東大や旧帝大のような名門大学は、優秀で面白い学生がたくさんいるし、教授1人あたりの生徒も少ないし、いろんな専門分野の教授がいっぱいいるしで、有名中堅私大よりもやっぱりメリットが大きいよ。
- 学力向上進学重点校にすると、同じ学校の友達から良い影響を受けやすい。でも、重点校に入ったからって満足して勉強しなくなったらダメ。高3で勉強している子は高1からしっかりやっているよ。
さすが東大で講師をされているだけあって、具体例やユーモアを混ぜながらお話していただけたので、とても聞きやすく、またとても興味深く40分間飽きずに聞くことができました。でも、それって中学生を対象にした学力向上進学重点校の説明会でやることなのかなということに疑問が残ります。高校生やその保護者対象ならいいかもしれませんが。
まぁ、私の勝手な感想はともかくとして、プログラムは次に進みます。
学力向上進学重点校について
プログラム2番目はいよいよ「学力向上進学重点校について」です。今日の説明会のメインテーマがとうとうやってきました!
まずは事務的な学力向上進学重点校の説明がたんたんと進みます。
学力向上進学重点校とは
県教委:「将来の日本や国際社会でリーダーとして活躍できる高い資質・能力を持った人材を育成する高校とのことです。」
うん知ってる。パンフレットに書いてあるし。
でも抽象的すぎて全てがよくわからんのよ。「リーダーとして活躍できる高い資質・能力」って例えばどんな能力?「それを育成」ってどうやったら育成できるの?と疑問を持ちながら聞いていましたが、それの説明は残念ながらありませんでした。
県教委:「現在の学力進学重点校は4校。湘南、横浜翠嵐、厚木、柏陽です。平成33年(2021年)の3月31日まで指定されます。そしてエントリー校が13校。横浜平沼、横浜緑ヶ丘、光陵、希望ヶ丘、川和、多摩、横須賀、平塚江南、鎌倉、小田原、茅ヶ崎北陵、相模原、大和です。これらの高校をエントリー校として同じく平成33年(2021年)3月31日まで指定し、その中で学力進学重点校を目指します。」
うん知ってる。前にブログにも書いたよ。
参考:新学力向上進学重点校エントリー校が決定!特色検査の続報も。
学力向上進学重点校に認定されるための5つの指針
県教委:「学力向上進学重点校に認定にあたっては、次の5つの指針があります。」
これも以前からウェブサイト上などで公表されていますが、よく知らない人のために5つの指針(勝手に簡略化したもの)もう一度おさらいしておきます。
- 高いレベルの思考力・判断力・表現力等の能力育成の授業を行なっている。
- 2年生の学力調査で結果を出している。
- 生徒の7割以上が英検2級以上レベル。
- 探究活動や全国規模の大会等で成果をあげている。
- 難関大学への現役進学実績をあげている。
要は、すでに指定を受けている4校の学力向上進学重点校は、この5つの指針を満たしている学校運営をやっていて、13のエントリー校はこの5つの指針を満たすために頑張っていくというとちょっとはわかりやすいでしょうか。
特色検査について
私が今回一番聞きたかったのはこの部分です。特色検査が始まって以来、これまで各高校が独自に作成し続けてきた特色検査ですが、それが一転、来年度の入試からは県教委主導で作成され、各高校共通の「共通問題」と、県教委が用意した問題から高校が自由に選択する「共通選択問題」からなる特色検査に一本化されます。
詳しくは以前県教委の中の人に直接話を聞きに行った際のレポートに書きましたので参考になさってください。
参考:特色検査や入試について、県教委の中の人に話を聞いてきた2018。
ちなみに今回の説明会では、特色検査に対する具体的な話は一切なく、「とりあえず過去問やっとけ」的な話だけ終わりました…。そんなぁ…。
結局肝心のプログラム2番目「学力向上進学重点校について」は、これまで県教委のウェブサイト等で得ていた情報以上の話を聞くことはできませんでした。
質疑応答があればめっちゃ質問してやろうと、質問を8つほど箇条書きにして用意いたのですが、質疑応答の時間もなく呆気なく終了。私が用意した渾身の質問は披露されることもなく、闇へと葬られることになりました。
学力向上進学重点校の具体的な取組について
気を取り直して最後のプログラム「学力向上進学重点校の具体的な取組について」です。このプログラムでは、重点校4校に通うとても優秀そうな高校生5人と、柏陽高校の英語科の先生とで、大学の入試問題を題材にした英語の寸劇もといディベート形式の模擬授業を披露してくださいました。
湘南高校の高校生の英語の発音の美しさに思わず聞き惚れてしまいましたが、このプログラムでの県教委の思惑は、一方的に先生が教える従来のような授業だけじゃなくて、アクティブラーニング系の考えさせる授業を取り入れていますよー、しかも今流行りのオールイングリッシュの授業もしてますよー、それが学力向上進学重点校ですよーということをアピールしたかったのだと思います。
実際に、重点校同士、特に英語学習についての交流も盛んなようで、重点校の生徒や教師による英語ディベート大会を開いたり、海外リーダーシップ研修として海外の大学を訪問するというプログラムもあるようです。
まとめと感想
今まで我慢していた分、最後に思いっきり感想を言わせてもらいましょう。
「思ってたんと違うーー!」
もっと学力向上進学重点校の本質や各高校の取組みの違い、特色検査共通化の意図と狙いを聞けるものかと思っていましたが、結局最初から最後までパンフレット以上のことは聞き出せず、呆気なく終わってしまいました。
別に学力向上進学重点校の取組みについて否定的というわけではないんです。むしろ神奈川の公立復権を願う一人の県民としては、こういう公立が頑張る取組みはむしろ応援したい。
でも、次世代の複雑化する社会に対応できる人材を育成と言っているわりには、まだ東大・旧帝大などの難関国立大学への進学をゴリ押しするという今までの世代にも聞き飽きた教育を相変わらず勧めてくるし、学力向上進学重点校という崇高な理念は素晴らしいんだけど、理念だけで具体的な中身は全然見えてこないしで、まず教育委員会をはじめ高校や教員の方から、次世代の社会に考え方をスイッチさせていかなければいけないと感じました。
受験生や保護者は、学力向上進学重点校だからといって、公立高校にいろいろと期待し過ぎない方が良いと思います。特色を色々と打ち出しても、いい意味でも悪い意味でも所詮公立高校です。その辺を理解した上で、あまり学力向上進学重点校って言葉に敏感にならずに、学校選びをしてください。
ちなみに、あのすばる進学セミナーのあの中本先生が、このブログよりももっとタメになるレポート記事を書いてくださっていますので、参考にしてみてください。
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