1月10日(土)〜1月12日(月)まで、うちの塾恒例の2泊3日直前合宿を行った。1日の勉強時間が軽く10時間以上にもなるスケジュールをただひたすらたんたんとこなした。
今日は参考までに、うちの塾の合宿に対する考え方について書いてみようと思う。
夏に合宿はしません。
塾の合宿は夏に行われるところが多い。私が以前勤めていた大手学習塾も8月のお盆の頃に3泊4日の合宿を実施していたし、自分が中学生の頃通っていた塾の合宿も、夏休み中だったと記憶している。
しかし、うちはあえて夏に合宿するのを避け、開校してから毎年1月の成人式を含む3連休に冬合宿を実施している。うちの塾があえて夏に合宿するのを避けた理由は3つある。
1つ目:うちの塾生は運動系の部活動をしている生徒が多く、8月はまだ部活動を引退していない生徒が多い。そのため、夏に全員参加できる合宿日程を組むのが難しいから。
2つ目:夏休み中、特にお盆休み中は多くの宿泊施設がシーズンを迎えることで、宿泊料金が跳ね上がってしまう。値段が高い時期を選んでわざわざ夏に合宿するメリットを感じられなかったから。
3つ目:中学受験や大学受験ならともかく、高校受験の場合、中学3年間のカリキュラムがまだまだ終わっていない夏に合宿してもほとんど意味がない。第一、夏は中3生の意識がまだまだ「受験生」という境地に達しておらず、そんな時に合宿を行ったところでただの「イベント感覚」になってしまい、費用対効果が非常に低いから(大手塾時代の経験)。
特に考慮したのが3つ目だ。保護者抜きで、友達と一緒に宿泊施設に泊まりに行く。子どもからしてみれば、たとえそれが塾の合宿であれど非日常的でワクワクするものであろう。受験に対する緊迫感に欠ける夏だと、『この合宿で頑張って勉強するぞ』という意識より『なんか楽しそう♪』という意識の方が勝るのは目に見えている。
それに、たとえ夏合宿で少しは受験に対して意識が高まったとしても、せっかく高まった意識は長くは続かず、合宿が終われば元の木阿弥に戻る生徒が実に多かった。
保護者の命より大事な子どもを数日間拉致して、命の次に大事なお金を頂戴して行う合宿である。ただのイベント感覚で行ってはならない。ただのイベントで終わってもいけない。受験に直結する実り多きものでなければいけない。
受験直前の冬の時期であれば、受験生もさすがに勉強に対する意識も高く、どん欲に知識や解法テクニックを吸収しようとするし、我々講師側にとっても受験前までに教えておきたいことは山ほどある。受験生にとっても講師にとっても、時間がいくらあっても足りない時期だ。そんな時期にたっぷりと受験勉強に没頭できるようにということで、受験間近の冬の正月料金を避けたこの連休に合宿を毎年執り行っている。
ハチマキは巻きません。徹夜もしません。
塾の合宿というと、講師も生徒もみんなハチマキを巻いて、「気合いだ!」とか「絶対合格するぞ!」とか、まるでどこかの新興宗教のように大声を張り上げてエイエイオーなんかをしている光景をよく目にするが、うちの塾の合宿はハチマキなんか絶対に巻かないし、「気合いだ」とか「絶対合格するぞ」なんていう言葉さえも一切発しない。合宿だからと徹夜で勉強することも強要しないし、逆にどんなことがあっても23時には勉強を終了し、就寝させている。威勢のよい掛け声も、気合いを入れる精神論も皆無で、ただ淡々とひたすら授業と自習に打ち込む内容で、イベント色を一切排除している。合宿がイベント化してしまってはいけないというのが私の持論であるからだ。
イベント化した合宿に付き物なのは、睡眠時間を削って無茶をして勉強させるような精神論。私の意見では、塾での受験勉強の指導において、行き過ぎた精神論は必要ない。受験勉強に必要なのは、精神論ではなく勉強法や解法テクニック。それに尽きる。もちろん精神的な強さは勉強には欠かせない。同程度の学力ならば、精神的に強い子どもの方が伸びやすいことは、長年受験指導をしてきた経験から断言できる。しかし同時に言えることは、気持ちが技術や実力を越えることもない。
ハチマキを巻いて威勢の良い掛け声をかけて徹夜をすることで、合宿をイベント化してしまうと、合宿での勉強が「非日常」になってしまう。この記事でも書いたが、受験勉強で一番大切なのは、勉強を非日常ではなく日常に落とし込むこと。合宿をあえて日常化することの方が、合宿後の生徒の受験勉強に良い影響を生むというのが私の考え方。
さて、勝負はこれから。
2泊3日の合宿で、それぞれの生徒の弱点をあぶり出すことができた。入試まであと34日。その弱点をどう補強して入試まで間に合わせるか。合宿から頭の中はそのことでいっぱいだ。過去の話をしても仕方がないが、やはり途中入塾の子はどうしても基礎的な学力が備わっていない。特に数学の証明問題や英語の英作文は、中1中2の基礎学力がモノを言う。その基礎学力がないと、どうしても「詰め込み」に頼らざるを得なくなってしまう。
あと34日。もう詰め込みしかないので、詰め込むだけ詰め込んでみよう。まだまだ勝負は終わっていない。むしろ、本当の勝負はこれからだ。