神奈川の公立入試を、得点分布から分析してみた。(第2回「数学編」)

2回目は数学編。
2014年度の入試は数学で波乱がちょっとした起こった。後に掲載予定である大波乱を巻き起こした理科がなければ、「2014年は数学の年だったね。」と言われていたかもしれない。理科の大波乱の影に隠れた印象にはなっているが、これまでの神奈川県公立入試から考えると、最も大きな変化を遂げた科目が数学だった。

では、何がどう変わったのか。
数学の変化を語る上でのキーワードは、『脱・パターン化』だ。

パターン化されていた旧入試制度の共通入試

数学得点推移データ何を隠そう私は数学の担当講師だが、旧入試制度の共通入試であれば、どんなに数学が苦手な生徒でも8割以上を取らせるノウハウを持っていた。これは別に、「どうだ凄いだろう!」と自慢しているワケではなくて、神奈川の入試に熟知している先生方なら、みんな同じだっただろうと思う。

その理由は、『出る問題がほとんど決まっていたから』だ。要はパターン化されていたということで、それぞれのパターンの類題演習をたくさん繰り返せば、計算ミス等をしない限りは8割以上は余裕だったのだ。

上のグラフが2012年度〜2014年度の数学の得点分布・推移データ。これからも、黄緑色のグラフが2012年のデータだが、約26.5%の受検生が8割以上を取っていたことが分かる。つまり、4人に1人以上が8割を超えていたということになる。パターンの訓練を積んでいれば、数学は最も解きやすい科目の1つだったということだ。

新入試制度初年度で、点数が落ち込まなかった理由

2013年度に新しい入試制度になった。事前に県から発表された出題例を見ると、「図形の証明」がこれまでの穴埋め問題から全証明に変わり、また「式の証明」も掲載されていた。出題例の発表を受けて、2013年度の受検生たちは、図形と式の証明の完全証明の練習に躍起になっていたことだろう。

そして県からの出題例を裏切ることなく、2013年度の入試では実際に式の証明と図形の証明の完全証明が出題された。難易度も難しくはなく、出題例を見て十分な対策を積んできた受検生にとっては解きやすいものだっただろう。また、完全証明以外の問題は、多少のマイナーチェンジこそあれ、従来のパターン化された問題とほぼ同じ傾向だった。

上記の赤のグラフが新入試制度初年度の2013年度のグラフだが、黄緑色のグラフと見比べても、得点分布にそんなに変化は見られないし、全受検生の28.2%が8割以上と、むしろ2012年度よりも8割以上の割合が高くなっている。この要因は、新入試制度になってもパターンがそのまま踏襲されたからである。

脱パターン化で、もろくも点数が崩れ去った2014年度

そして今年。とうとう数学の入試において、『脱・パターン化』が起こった。「数学はパターン訓練さえ積んでいれば大丈夫」という神話が崩れ去った瞬間である。
神奈川県公立入試の『パターン神話』を信じ切って、2013年度と同じように、式の証明や図形の証明、また従来の関数・確率・空間図形などのパターンをせっせと訓練してきた受検生たちを、あざ笑うかのように出題された連立方程式の応用問題。昨年度新しく出題された「式の証明」は、どこのページを探しても見当たらない。それにより、激しく動揺した受検生は少なくなかっただろう。

上記の青色の2014年のグラフをもう一度ご覧いただきたい。これまで4人に1人以上いた8割越えが、たった6%まで落ち込み、最頻値がなんと40点台になった。
ここまで落ち込んだ要因は、パターン神話の崩壊に加えて、新しく追加された連立方程式の文章題がやや解きにくいものだったことと、従来の形式で出題された確率などの問題の難易度が上がったことが挙げられる。

脱パターン化は、パターン神話に甘え切っていた神奈川県の受検生ならびに学校・塾関係者を激しく揺れ動かした。後に述べる理科の難易度の急上昇以上に、数学の脱パターン化の方が、県がこれからの学習のあり方を示していると思えてならない。
つまり、「パターン演習ばかりでは通用しないよ。何が出題されても大丈夫なように、全範囲をしっかりと網羅して勉強しなさい。」というメッセージと受け取られる。

これからの入試数学の対策法

最後に、これからの入試数学の対策法を書いてみる。
2014年度の受験で、「脱・パターン化」を臭わしてきたからには、これからはもうパターン演習ばかりに頼ってはいけないということは、嫌でも理解できるだろう。しかし、だからと言って、手当たり次第に色々な問題を解くのは考えものである。

数学というのは、最初はパターンから入る科目だ。パターンは、言い換えれば『型』である。水泳でも、泳ぎ方を知らない人が、いきなり海に飛び込んでみたところで溺れてしまうのと同じように、『型』を身に付けていなければどんな問題も解けない。脱・パターン化されようとも、まずはそれぞれの単元のパターンをしっかりと身につけることが先決だ。

その上で、同じようなパターン演習ばかりに取り組むのではなく、同じ単元でも色々な問い方をする問題にどんどんチャレンジしていくことが大切になる。もう神奈川県のパターン化された過去問はアテにならない。上位校を目指す人ほど、英語同様に全国の他の都道府県の問題にどんどん取り組んでいくこと。中堅どころの私立入試の問題も良い練習になるだろう。

うちの塾では、2014年度にはすでに他の都道府県の問題を多く取り組んだ。その結果、脱・パターン化が起こった数学でも、そこまでダメージをくらった生徒は多くなかった。

最後に私見。

今回の数学の『脱・パターン化』。皆さんはどう考えられるだろうか。
ちなみに私個人の意見としては、脱・パターン化は大歓迎だ。脱・パターン化が進めば進むほど、付け焼き刃の学習では全く歯が立たなくなる。質の高い指導を受けてきた受検生や、本当の実力のある受検生が有利になる。

それこそが本来の入試の姿だ。パターン化された類題演習に甘んじるのではなく、どんな問題でも解ける十分な力をつける学習をする。それこそが、本来の受験勉強の姿だ。

 

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