数学の10問テストについて、勝手に5時間語ろうと思う(中編)。

2018年5月10日

ブログネタに困った末に思い付きで書いた昨日の10問テストの記事(数学の10問テストについて、勝手に5時間語ろうと思う(前編)。)ですが、意外と反響が大きくて書いた本人が一番ビックリしています。

頂いた反響の中に、このような質問がありました。

こんなに惜しげもなくノウハウを公開して、他の塾の先生にパクられる心配はされないんですか。

先日の名古屋のブログフェスでも「パクリ」が話題に上がりましたが、私としては「どうぞおおいにパクってください」というスタンスなので全く問題ありません。

他塾の先生に10問テストをパクられたからといってうちの塾の売上が減るものでもないし、パクられることによる損って全く思い付かないんですよね。別に特許をとっているわけでもないし。

どうせ自分に損が無いのだから、自塾のノウハウを公開し、それが誰かの役に立てるのならば、自塾でコソコソやっているよりも世の中の教育に貢献できるじゃないですか。

この前一緒にイベントをやらせて頂いたさくら個別指導学院の國立先生も、「教室の広さに制限されず、多くの人の役にたてるようになりたい」と度々仰っていますが、ブログでノウハウを公開するのも、まさに國立先生と同じ思いです。

もう一つの理由として、自塾のノウハウを発信することで、今回のようにかなりのフィードバックを得ることができます。また、「自分の塾はこうやっている」と、他塾の先生から逆に情報を頂くことも多々あります。情報というものは、発信するとそれ以上のものを受信することができるんですよね。それらの情報やフィードバックを、また自塾生のために活かす。これは正にWIN-WINの関係だと思うのです。

「10問テストは慧真館だけの秘伝の指導法だぞ、ウヒヒヒ」とかケチくさいことをやっているより、こうやって公開し、色々な塾で独自の10問テストが拡がっていった方が何より楽しいです。そのうち「10問テストの会」みたいなものが発足し、それぞれの10問テストを持ち寄って作問のポイント等を議論するような機会をもつのもめちゃくちゃ面白そうですよね。

だから、パクりたい人はどんどんパクってください。その上で「うちはこう工夫をしてみた」などのフィードバックを頂けると泣いて喜びます。

ということで、前置きが長くなりましたが、前回の続きです。なんせ5時間も語らないといけませんからね(笑)

やり直しのルール

うちの塾では、10問テストの解説は基本的に行いません。小学生から受験生まで、どの学年でも、間違えた問題は自力でやり直しをさせています。

10問テストのやり直しをするときのルールは2つ。

1つ目は家族や友人など、他人の助けを借りないこと(先生に質問するのはアリです)。
もう1つは、どう考えたかが分かるように、必ず途中式なり図なりを残すこと(中学生はこれが必須です)。

解説をしない理由

生徒が間違える問題はだいたい同じです。であれば、正答率の低い問題を授業中に解説してしまった方が、生徒にとっても私にとっても非常に効率が良いのは分かっています。

しかし、非効率だと分かっていて、あえて解説をせずに自分でやり直しをさせています。

その目的はいくつかあります。

悩ませるため

まず1つ目は、悩ませるためです。

解説をすると効率的で分かりやすいかもしれませんが、自分でアレコレと考えなくて済んでしまう分、またすぐに忘れてしまい同じミスを繰り返します。一方で、自分でああでもないこうでもないと悩んだ末に、ようやく答えにたどり着いた問題は、記憶に深く残る分忘れにくくなります。

また、1問に対してああでもないこうでもないと悩みぬくことで、数学には欠かせない思考力や粘り強く考えることへの耐性が身につきます。思考力とは、分かりやすい解説を聞いたから身につくものではなく、図を書いてみたり、他の切り口から考えてみたり、たった1問でも色々と試行錯誤する中で身に付いていくものなのです。

数学の勉強の根幹は、解法を身に付けることではなく、1問に悩みながら思考力を鍛えることです。思考力なしでは、いくら解説を聞いても、自力で入試問題を解くことはできません。「教えてもらったら分かるけど、自分ではそんな解法思い付かないよ」という状態になるのです。

簡単に手に入るものは、簡単に出ていきます。これは勉強も同じ。

解説せずに生徒に悩ませるなんて非効率と思われるかもしれませんが、長い目で考えると、これが逆に効率的なのです。

自分で復習させるため

先ほど紹介した2つのルール以外は、やり直しのために何をしても良いことになっています。テキストやノートを見て復習しても良いのです。

10問テストのミスにも、計算ミスなどのケアレスミス、そもそも解法自体を忘れてしまっている、情報整理が不十分、思考力不足など、様々な種類があります。

そもそも解法自体を忘れてしまっている場合は、その単元のまとまった復習が必要です。授業中にその問題だけちょろっと解き方を聞いたからといって、復習なしでは本当の理解に繋がりません。

だから自分で復習をさせます。

「先生、これが分かりません」と生徒が質問してきた場合、それが復習不足が原因によるミスであれば、「ノートを見て復習しなさい」とだけ指示し、突き返します。そうすると、大概の問題は自力で解決してくるのです。

このように、10問テストのやり直しは、復習の機会を設けるためという意図もあります。

また、低学年の男子によくありがちですが、授業ノートを雑に書いていて、復習しようにも何が書いてあるか分からないということがあります。そのような場合でも、あえて「ノートを見て復習しなさい」とだけ伝えます。しょうがないので生徒はなんとか自分の雑なノートを解読してやり直しをしますが、そのような経験をした後は、復習しやすいように読みやすい字で書いたり、板書しなくてもポイントをメモしておいたりなどの工夫ができるようになります。

自分で復習させることによって、このようなメリットもあるのです。

個別指導に持ち込むため

うちの塾は規模は小さいものの一斉指導の形式です。少人数制なので生徒一人ひとりの学力や現状は把握しているものの、一人ひとりの思考回路やつまづいているポイントまで、普段の授業で事細かに見てあげることはできません。

数学の指導者ならお分かりになると思いますが、数学を本気で伸ばそうと思ったら、最後は個別指導しかありません。この生徒はどの部分でつまづいているのか、どのレベルまで思考ができるのか、計算のスキルは?、考える耐性は?など、細かい部分まで把握し、その子に応じた指導をするためには、いくら少人数制でも一斉授業では限界があります。

10問テストのやり直しは、できた人から個別に私のところに持ってくるシステムです。先ほど紹介したルールにあるように、やり直した問題に対する途中式や図、考え方を必ず残しておくようにしているので、どのように思考し、どこまで分かっているのか、あるいは分かっていないのかを個別にチェックすることができます。

一人ひとりの学力や理解度によって、対応の仕方を変えています。やり直しが合わない時、丁寧に教えてあげる子もいれば、「もう一回」と突き返すだけの子もいます。途中式をチェックして、正解していても、アプローチの仕方がダメだったり、誤魔化した形跡があったりしたら、もう1度やり直しをさせることもあります。

こうして、細かい部分は10問テストのやり直し時に個別で対応することで、一人ひとりの生徒の理解度を毎回詳細に把握し、指導に反映させることができています。

10問テスト作問時・実施時の注意点

続いて、10問テスト作問時や実施時の注意点です。

…と、ここまでで3000字を越えてしまいました。

「やり直しの意義」だけで3000字オーバー(笑)。10問テストに対するこだわりは半端ありません。

この続きは「後編」で書くことにします。まだまだ5時間経ってませんし、まだまだお付き合いいただきます。