2017年度の入試より、合格発表当日に自分の答案用紙と採点結果が返却されるようになりました。これにより、今までブラックボックスだった記述問題の採点基準や、途中点などが白日の下に晒されました。
一体高校間でどれだけ違うのか。やはり偏差値の高い高校は採点基準が厳しく、偏差値の低い高校は、「何か書いてあればとりあえず途中点はもらえる」という都市伝説は本当に存在するのか。
今回は、数学の証明問題で検証してみます。
まずは問題と模範解答から
これが問題。解いたことのない人は、一度解いてみた後でこのブログの続きを読んでいただくと、より分かりやすいかと思います。
採点基準はこのように記載されています。この証明の配点は10点満点です。
生徒の解答いろいろ
生徒「あーちゃん」の場合(H高校受験)
まずはこの生徒の解答用紙から。「あーちゃん」としましょう。
ほぼ真っ白ですが、模範解答の①に該当する部分が、「仮定より」という簡単な理由で書かれてあります。
これで、あーちゃんはめでたく10点満点中2点GETしました!証明問題は途中点があるから、一部だけでも分かったものは書いておけと指導しておいた甲斐がありました。
生徒「かしゆか」の場合(O高校受験)
次に見ていただきたいのはこの生徒の解答用紙。「かしゆか」とします。あ、名前に深い意味は全くありません。
先ほどの「あーちゃん」と同じように、模範解答の①に該当する部分が、同じく「仮定より」という簡単な理由で書かれています。きっと2点もらえるでしょう。
次に、AB=ACより2つの角が等しいこと、弧BDに対する円周角、さらに三角形の内角と外角の関係について言及し、∠ACF=∠AEGを導き出しています。途中、「二等辺三角形なので」という記述や、「よって∠ABE=∠ACG」などの同じ角に対する記号の言い換えは抜けていますが、流れは模範解答と全く同じです。採点基準の得点項目Bの基準は満たしているでしょう。
さらに、相似条件と結論が正しく記述できているので、得点項目Cも満たしていると考えられます。
で、この「かしゆか」の証明問題の得点は、、、2点でした。
もちろん受験校は違うので採点基準は異なるでしょうが、「あーちゃん」と結果的に全く同じ点数です。得点項目Bは説明不足による減点はあるかもしれませんが、少なくとも項目Cは満たしています。
なぜ2点。
理解に苦しみます。誰か分かる人、教えてください。
生徒「のっち」の場合(S高校受験)
最後はこの生徒。生徒「のっち」としましょう。何度も言いますが、名前に意味はありません。ちなみに、お察しのこととは思いますが、先ほどの「かしゆか」が受験したO高校よりも高い偏差値のS高校を受験しています。
項目Aは、「あーちゃん」と「かしゆか」と同じですね。青い線は気にしないでください。
項目Bの部分で、のっち痛恨のミス!「弧BD」と書くべきところを「弧BC」と書いてしまっています。のっちらしからぬミスです。焦っていたのでしょうか。
それ以外は、項目Bも項目Cも、O高校を受験した「かしゆか」とほぼ同じです。「かしゆか」同様、同じ角に対する記号の言い換えはありません。
「かしゆか」よりも偏差値の高い高校を受けたのっち。一見するとミスの見当たらないかしゆかに対して、のっちは誰の目にも明らかなるミスが1箇所あります。
果たしてその得点は一体・・・!?
おめでとうございます、8点です。
なぜ8点。なぜかしゆかが2点でのっちが8点。
まとめ
数学の証明問題のほかにも、国語や社会でも色々不可解なことはたくさんありますが、それはまた稿を改めることにしましょう。
他塾の方から同じ問題に対する採点基準についてメールを頂いたのですが、そこの塾の生徒さんが受けた高校では、「仮定より∠CAF=∠EAG」という記述があるにも関わらず0点だったそうです。そこの生徒さんの解答をメールで見た限り、他にも項目B、項目Cも、S高校を受験した「のっち」と同じ程度には書けています。
今年度からの答案用紙の返却によって、分かったことが少なくとも2つあります。
・今までブラックボックスだった「高校による採点基準の違い」は明らかに存在する。そして、その基準は、偏差値が高い高校ほど厳しいというわけではない。
・高校によっては、証明の流れは合っていても、細部まで詳しく理由を書かないと点数がほとんどもらえない。
来年度の受験対策授業では、証明問題はしっかりと理由を具体的に、そして記号は三角形のアルファベットにきちんと合わせるなど、細部まで気を使うように指導しなければいけないということは、よーーーーーーーーくわかりました。
ということなので、中2生たち。
早速明日から証明問題の採点を超厳しくします。