10日の日曜日はW合格もぎでした。2日経った今日「合格手帖」を回収して一人ひとりの模試分析をチェックしましたが、全員きちんと自己採点と分析ができていました。しかもほとんどの生徒の模試分析の精度が前回よりも良くなっていました。やはり成長するものですね。
さて今日は、3者面談でもよく話題になる、「模試の偏差値と受験勉強の意味」についての話をします。
偏差値は安定しないのが普通
受験勉強において、とても大切になる考え方が、「模試の偏差値は安定しないのが普通」ということです。これを「模試の偏差値は安定するものだ」と思い込んでしまうと、たいへんなことになりかねません。
そもそも、テストというのは、その人の学力のほんの一部分を無作為に抽出して測定したものに過ぎず、どんな模試を受験しても、たった1回でその人が持っている能力知力を全て判定することなど不可能です。つまり、一部分を測定することで全体を推測しているわけなので、模試を受験するたびに成績が変動するのは至極当然のことです。
たとえば、ある模試の英語の偏差値が60だったとします。その人の頭の中には、もともと偏差値53から67のボールがたくさん詰まっていて、たまたまその模試で抽出されたボールが偏差値60のものだった、というイメージです。なので、次に模試を受けても必ず偏差値60のボールが出るという保証はなく、もしかしたら58のボールが抽出されるかもしれないし、63のボールかもしれない。その時のコンディションや出題内容・難易度など、様々な要因が重なり合った結果、1つのボールが抽出されます。いつ何時、どんなタイミングで偏差値が高いボールが出てくるのか、あるいは低いボールが出てくるのか、誰にも予測することはできません。
ただ、偏差値53から67のボールが同じ数ずつ頭の中に存在するということではなく、その中央値付近に多くのボールが集まり、偏差値53や67のボールはごくわずかしかありません。偏差値53から67だと、中央値の偏差値60のボールが最も多く、次いで±1の偏差値59と61のボール、その次が±2の58と62のボール・・・という具合にボールが存在しているので、偏差値60付近のボールが最も抽出されやすいと言えます。
一般的に偏差値の振れ幅は±3くらいとされているので、ある模試で偏差値60を取った人は、次の模試では偏差値57〜63くらいと予想されます。
偏差値の幅を考慮した目標設定
このように、偏差値には幅があるのが普通なので、1回や2回だけの模試で判断するのはとてつもなく危険です。イレギュラーにたまたま偏差値が高いボールが出て可能性だってあるし、その逆だって十分あり得る。自分の頭の中の偏差値の中央値が幾つくらいかを正確に判断するためにも、模試は受験までに複数回受けた上で判断するべきです。ちなみに、うちの塾は公式な模試だけで6回受験します。
また、確実な合格を狙っていくのならば、±3の偏差値の振れ幅を考えて、志望校の偏差値+3を目標偏差値としましょう。たとえば偏差値65の高校を志望するなら目標偏差値は68です。偏差値68くらいを自分の頭の中の偏差値ボールの「中央値」としておくと、当日の入試で偏差値の幅が下に振れてしまった場合でも合格する可能性が高くなります。
受験勉強をする意味合い
偏差値のボールを考えると、受験勉強をするということは、次の2つの意味合いがあります。
1つ目は、自分の頭の中の全体の中央値を上げていくということです。ほとんどの人が抱く受験勉強のイメージがコレですね。ただし、受験勉強の目的は、偏差値の中央値を上げることだけではありません。
もうひとつの意味合いは、低い方の偏差値ボールを排除していくことです。たとえば先ほどの偏差値53〜67のボールを持っていた人なら、受験勉強が進んでいくにつれて偏差値53や54などの低いボールを排除していくことができます。この場合、受験勉強をしている本人は、あまり変化している実感が湧きません。勉強しているのに偏差値も上がらないので、「勉強していて意味あるのかな」と疑問に思ったりしてしまいがちですが、目に見える変化がないだけで、低い方のボールを排除しておくことはめちゃくちゃ意味があります。
低いボールを排除できないまま入試を迎えるということは、可能性は低いものの、いつ爆発するか分からない「爆弾」を抱えていることになります。たとえ偏差値が上がらない場合でも、「自分は今爆弾を取り除くための勉強をしているんだ」と考えるようにしましょう。