このブログ内の記事で、いつも閲覧数ランキング上位にランクインするほどよく読まれているのが、おうちでできる小学生の国語力を鍛えるための市販テキスト3選です。1年ほど前に書いた記事にも関わらず、この記事1本だけで今でも毎月約3,000〜4,000アクセスほどあります。それほど、国語力に関心を持っている親御さんが多いということでしょう。一方で、関心はあるけれども、国語力を鍛えると言ってもいったい何をすれば良いのかピンとこない人も多いと思います。
国語力を鍛えなければならない理由
1年前の記事にも書きましたが、国語力とは「語彙力」と「論理的思考力(ロジカルシンキング)」の2つから成り立っています。この2つのどちらか一方でも弱ければ、国語はできるようにはなりません。塾で指導をしていて感じることは、最近の小中学生は、語彙力が乏しい子が多いということです。
今は、LINEなどでもスタンプをポンポン送り合うだけでコミュニケーションが成り立つ時代。また、スマホを使って一日中同年代の友人と会話している環境下で、親や兄弟、おじいちゃんおばあちゃんなど、同年代以外の大人と会話をする時間も圧倒的に減っています。ネット上の読みやすいゴシップ記事には目を通しても、論理的に書かれた良質な評論文や完成度の高い小説などをじっくりと読む機会も少なくなっています。こんな状況で、語彙力や論理的思考力がぐんぐん育つ子の方が稀です。
私たち人間は言葉を使ってものを考えます。言葉を使わずに何かを考えることはできません。たとえば、人間と同様に動物も「暑さ」を感じることはできますが、「暑い」という言葉を持たない動物は、「暑い」という感覚を認識することはできないのです。いわば、人間は言葉に置き換えられたものだけを受け止め、認識し、考えることができるということです。
国語ができない子は、早い段階で国語以外の科目もできなくなってしまいます。なぜなら、語彙数が乏しいことで、それだけ考えることのできる世界が狭まってしまい、また論理的思考力に欠けることで、ものごとを筋道立てて考えることができなくなるからです。月並みな言い方になってしまいますが、国語は全ての科目の土台になる科目です。生きていく上での思考の基盤となる科目です。
今回も前置きが長くなってしまいましたが、語彙力と論理的思考力を鍛えるために作られた市販テキストを紹介します。第1弾で紹介したテキストもかなり有効なので、そちらも合わせて参考にしてください。
言葉のトレーニングを兼ねた漢字練習ができるテキスト:「出口先生の頭が良くなる漢字」
小学生の語彙力は、漢字を覚えることでも伸びていきます。漢字練習というと、とにかく新しい漢字をひたすら紙に書きなぐって練習する子が多いと思いますが、言葉の意味を考えずにただ書き方だけ覚えるのはナンセンスです。
一つ一つの漢字にはきちんと意味があり、他の漢字とくっついて熟語となり、それが動詞になったり名詞になったりします。ただの書き方を覚える勉強だけで終わるのではなく、漢字練習を「言葉のトレーニング」へと昇華させることができるテキストが、水王舎出版の「出口先生の頭がよくなる漢字シリーズ」です。
このテキストは、漢字を練習することで語彙数を増やしつつ、覚えた漢字の文中での使い方を理解する力や、正確に言葉をつなげて文を作る力、漢字の意味を考えてふさわしい言葉を選ぶ力などが同時に鍛えられる独特なつくりになっていて、このテキストのように、漢字と言葉をつなげて勉強できる問題集は塾用のものでもなかなかありません。うちの塾でも、今年度からの小4生・小5生の漢字用テキストとして採用しているほどです。
小1生〜小6生まで全学年に対応しているのも地味に嬉しいです。なかなか書店では売っていないので、ネットで買う方が便利です。
小学生からの論理トレーニング:「出口汪の日本語論理トレーニング」
今日は出口先生のテキストばかりの紹介になりますが、決して私は出口先生の回し者などではありません。前回は福嶋先生の論理の問題集を紹介しましたが、国語の力を「論理的思考力」と捉え、それを小学生にも分かりやすく書き下ろしているのが、福嶋先生と出口先生です。
出口先生はご存知の方も多いと思いますが、もともとは大学受験予備校の現代文の先生として有名な方です(私も高校生の時に、出口先生の問題集にだいぶお世話になりました)。「今でしょ」が大流行したおかげで、今は大学受験現代文の予備校講師といえば林先生が第一人者というイメージが定着していますが、少し前までは「大学受験現代文と言えば出口汪」でした。そんな大学受験現代文の神が、小学生向けに書き下ろしたのが、「出口汪の日本語論理トレーニング」です。
この本は、1学年に「基礎編」「習熟編」「応用編」の3冊があり、無理なくステップアップできる構成になっています。それぞれ、言葉の使い方ごとのステップから成り立っていて、各ステップには必ずテーマがあり、さらにはそれぞれの問題に連続性があります。このような一貫した問題構成によって、小学生の考え方を感覚的なものから論理的なものへと切り換えることができるようになっています。
「国語が分からない」「文章読解問題が解けない」という子は、文章を自分の感覚で、つまり主観で解いているから正しく問題が解けないのです。日本語論理トレーニングの問題集に慣れていけば、『国語=自分の主観』という間違った考え方に気付き、『国語=論理の科目』という捉え方ができるようになるでしょう。
センター試験でも2次試験でも、大学受験の現代文を解くとき、論理的思考に基づいた考え方は必須です。さすが大学受験の現代文を長年教えてこられた出口先生だけあって、この問題集の解き方は中学受験、高校受験のみならず、大学受験にも十分通用します。
うちの塾の小学部でも、各学年で「基礎編」「習熟編」の2冊を取り入れて授業を行っています。この2冊で論理的思考力を鍛え、先ほどの「頭のよくなる漢字」で語彙力を鍛え、塾用の読解問題集でそれらの2つの力の使い方を、実戦形式で学ぶというのが、小学部の国語の授業でやっていることです。
うちの塾は小4からなのですが、小1からこの問題集でトレーニングしていけば、かなり論理的思考が鍛えられると思います。ちなみにこの本もなかなか書店では見かけません。そこら辺の書店には、良質な問題集はなかなか置いていないので困ります。
まとめ
今回は出口先生の問題集を2冊紹介しました。前回の記事で紹介したものもそうですが、塾講師の立場で自信を持っておすすめできる国語の問題集です。できれば最も思考が伸びやすい小学校低学年のうちから、これらに取り組むことをおすすめします。「塾に通っているから大丈夫」と思う方もいるかもしれませんが、塾と言えども国語を論理の科目と捉え、体系的に教えているところは驚くほど少ないのが現状です(ビックリすることに、中学受験専門塾でも論理的思考法をきちんと教えていないところが多過ぎます)。
特に小学生のうちは、国語に力を入れても入れ過ぎだということはありません。変に英語をかじるなら、その時間で国語をしっかり取り組んだ方があとあと役に立ちます。塾や通信教育とプラスして、是非取り組んでみてください。
ただし、これらの問題集だけで国語の力を伸ばすには、量的に完全ではありません。子どもは朝から夜寝るまで日本語を使い続けるわけですから、普段の言葉の使い方がいい加減だったり、ろくに本も読まない状態では、いくら毎日30分程度国語の問題をこなしたところで、どうにもならないのです。きちんと国語の力を鍛えるためには、普段の会話のレベル、子どもが目にする文章の質のレベルを上げる努力も同時に行うことこそ、最も大切なことだということをお忘れなく。