受験生なら入試模試を受けるのは常識中の常識。しかし、模試を受ける意味をはき違えていたり、模試を全く活用できていない受験生が意外に多い。入試模試をフル活用する人としない人で成績の上がり具合に雲泥の差が生まれるほど、模試をいかに活用できるかが合否を左右すると言っても過言ではない。そこで、今回は模試の受け方から効果的な活用の仕方までを詳しく書いていくことにする(注:かなり長文です)。
模試を受ける3つの意味
「模試は、志望校への合格可能性を知るために受けるんでしょ。」
そう思っている人は、残念ながら模試を受けてもお金をドブに捨てているようなもの。もちろん合格可能性を知るためという目的もあることにはあるが、合格判定はあくまでオマケみたいなもの。まずは模試を受ける本当の意味をきちんと理解することから始めよう。
ラップタイムとしての役割
受験をマラソンに例えると分かりやすい。42kmを目標タイムで走り切るためには、途中通過地点ごとのラップタイムを計測し、目標タイムとのズレをその都度確認して修正を図る。受験もこれと同じで、ゴール(=入試当日)まで何の計測もなしにひたすら進んでいくと、自分が今どの辺の位置にいるのか、目標までどれくらい近づけているのか、または離れているのかが分からず、受験勉強の修正がきかない。
受験において、模試はマラソンで言うラップタイムの役目を果たすと考えてよい。途中経過を定期的に測定し、またそれをモチベーションとするために受けているのだと心得よう。そのためには、入試までにできれば月に1度くらいのペース、それが無理なら1ヶ月半に1度くらいで模試を受けるのが理想的。
健康診断としての役割
模試を受ける目的として最も重要なことは、合否判定を知るためではない。これを勘違いしている受験生が本当に多すぎる。模試を受ける一番大きな目的は、自分の弱点や強みを知り、現状を把握して今後の受験勉強計画に役立てるためだ。これ、本当に重要なのでよく覚えておいて欲しい。
模試は健康診断に似ていると思う。健康診断は、自分の悪いところをあぶり出し、例えば肝臓が悪いみたいな結果が出たら、「じゃあお酒を控えてみよう」という対策を練るだろう。大切なことは、「現状の確認」と「その対策を講じる」ことだ。模試を受けたら受けっぱなしで、「あぁ、今回は計算ミスをした」だの「いつもより悪かった」だの、程度の低い「確認」しかせず、何の対策も練らないのなら、模試を受ける意味はほとんどないといって良い。健康診断で「このままでは死にますよ」という結果が出ているのに、何にも日常生活を変えようとしないのと同じ。
本番の雰囲気に慣れる役割
塾の中で模試を行うところも多いと思うが、できれば塾内模試だけでなく、模試会場での模試を受ける方をオススメする。受験は、いつもの慣れ親しんだ教室の中で、知っている人ばかりの雰囲気で受けるのではないからだ。模試会場で模試を受けることで、前日の持ち物準備から受験票の確認、会場までの行き方や交通機関の確認、知らない人ばかりの中でテストを受ける雰囲気、休憩時間の過ごし方など、本番と同じような色々なことを経験できる。
せっかく模試会場で受験しても、友達同士約束し合って模試会場まで一緒に行ったり、休憩時間は友達とワイワイ話したりしている人も見かけるが、これでは模試会場に出向いてまで模試を受けるといったメリットを全く生かすことができない。模試には、本番と同じ気持ち、同じ形式で臨む方が得られるメリットが大きい。
正しい模試の受け方4つ
模試を受ける意味を理解したところで、次は実践編の模試の正しい受け方について。
模試だからってテキトーに受けない
「しょせん模試だから」と言ってテキトーな気持ちで受けるのなら、その時間家で寝ていた方がまだマシ。模試は受験本番のために受けるのだから、受験本番と同じ気持ちで受けるべきだ。
分からない問題でも出来るだけ空欄を作らない、時間が余ったら最後まで見直しをするなど。「本番ではちゃんと見直しをします」とかいう言い訳をする人がいるが、練習でできないことを本番でできるはずがない。
時間配分を考える
模試で一番身につけて欲しいのは、各科目の時間配分の感覚。模試を受ける前に予め時間配分を決めておいて、それを実行してみよう。問題を解いていると、自分が決めた時間配分通りにいかないことがしょっちゅうある。そのときどうするか。多少時間配分をオーバーしてでも果敢に挑戦し続けるか、その問題を飛ばして次の問題に移るか。それをその都度考えて実行していくと、「こういう時はどうすればいいか」という感覚がだんだん身についてくる。その感覚が入試本番にめちゃくちゃ役に立つことになるので、時間配分を先に設定しておくとよい。
ちなみに、模試会場では時計が見にくい座席があるので、時計は自分のものを持参することをオススメする。
自信の度合いによって問題にマークをつけておく
問題を解いているとき、自分の解答の自信の度合いを問題番号にマークしておくと、後で復習するときにとても役に立つ。
例えば、
自信がある問題には○印、
ちょっと怪しい問題には△印、
全然分からなかった、もしくはカンで答えた問題には×印、
後で戻ってもう一度解きたい問題には☆印など。
模試が終わってから模試直しをするとき、どの印で間違ったのかを知ることは非常に参考になる。○印がついているのに間違ったなら、根本的に問題を勘違いしているか間違ったものを覚えているかもしれないし、×印をつけたようなカンで正解しただけの問題を見逃さずに済む。これはもちろん本番でやることではないが、模試を120%有効に活用するには是非やっておきたいワザ。
自分の解答を問題用紙にメモをしておく
これも本番では必要ないことかもしれないが、模試においては、自分の解答を出来る範囲で問題用紙にメモしておこう。というのも、模試を受けてから自分の解答が返却されるまで、早くとも1週間以上はかかる。模試は終わったらすぐにやり直しをするもの。1週間以上経つと、自分がどのように解いたか、なぜこんな考え方をしたかを忘れてしまう可能性があり、忘れた後に復習をしても効果は半減してしまう。
ただ、長い記述問題の解答を問題用紙に写すことに手間がかかり、問題を解く時間がなくなってしまったというのも本末転倒。出来る範囲で構わないが、なるべく解答は問題用紙にさっと書く癖をつけておくとよい。
模試は終わってからが最も大切!模試の復習法
模試は受け終わってからどうするかという行動が、模試を120%活用できるかどうかの一番の鍵となる。模試は長丁場で疲れるもの。模試を受け終わってから、疲れたからという理由でその日は何もしないという人がいるが、模試はできればその日のうち、最低でも翌日までには自己採点をして復習をするべきだろう。昔から「鉄は熱いうちに打て」というが、模試も自分の考え方や解き方を鮮明に覚えているうちに復習した方が、受験勉強における効果は断然違ってくる。
まずはザッと自己採点
先ほど、自分の解答を問題用紙にメモをしておくように書いたが、そのメモを頼りにまずはザッと自己採点をしてだいたいの得点を出してみよう。記述式の問題で、自分の解答が正解かどうか分からないモノに対してはそれほど神経質にならなくても良い。どうせ後で正確に採点された答案が返ってくるのだから。
間違えた問題を、解説を見ずにもう一度解き直してみる
ザッと自己採点をし終えた後は、○と△のマークをつけた問題で間違えたものを、もう一度解き直してみよう。そのとき、模範解答の解説はまだ見ない。もう一度自力でやってみることが大切。それで、自力で解けたものと解けなかったものに分類する。
解説を見ずに自力で解けたということは、つまり自力で解答できた問題を、ケアレスミスか何かによって間違ってしまったということ。こういう問題に対しては、なぜケアレスミスが起こってしまったのかという原因を突き止めることが大切。これらの「自力で解けた問題」を、最初から正解に持っていくことができれば点数はグンと上がる。ケアレスミスの原因を突き止めた後は、どうすればそれを防げるかの対策をしっかりと考えることが点数アップへの近道だ。
解き直ししても解けなかった問題や×印の問題の原因を考える
上記の解き直しのとき、自力で出来なかった問題や、×印の問題で手を付けられなかった問題に対して、「なぜ分からないのか」という理由を考える。だいたい、その分野の基礎力不足にあるので、教科書やテキストを引っ張り出して、「どの分野が分かっていなかったから出来なかったのか」という原因を探ろう。
解説を読んですんなり分かればよいが、解説を読んでもあまりピンとこなければ、もう一度ガッツリとその分野をやり直す必要がある。模試ノートや勉強計画表に、どの科目のどの分野をやるべきなのかをリストアップして、次の模試までに計画的に手をつけていこう。
解説を読んで分かった問題については、模試ノートに解き方や考え方の手順、ポイントとなることをしっかりと明記しておくこと。そして、次の模試の前に模試ノートをザッと復習すると良いだろう。
模試ノートに書くべきこと
模試を120%活用するためには、必ず模試ノートを作ること。模試ノートには、模試を受けるごとに全体の総括とこれからやるべきこと、間違えた問題の原因と解説を書き留めていく。
書くことをリスト化してみると、
(例)数学:問1と問2での計算ミスが2問あった。落ち着いて解けばこれは防げたハズ。計算時、累乗の字が雑になっていたことが原因なので、途中計算の累乗の数字はなるべく大きく書く。図形の問題をどうするかがこれからの課題。まずは平面図形の基本から復習する必要がある。など・・・
(例)数学の図形問題。中1の空間図形(体積や表面積の問題)、中2の図形の証明(特に平行四辺形らへん)、中3の図形は相似の基礎からもう一度解く。問題集○○ページから○○ページまで。など・・・
これを、模試ごとにキッチリとやりこなす。模試ノートに記録していくことで、模試から現状の分析、次の模試までの対策とやるべきこと、模試の復習まですることができて、受験勉強の計画が非常に立てやすくなる。これは、高校受験だけでなく大学受験まで通じるワザなので、今のうちに模試の活用の仕方を身に付けておくと大学受験まで通用します。
神奈川県内おすすめ模試
最後に、神奈川県内のおすすめ模試会社を紹介しよう。塾に行っている人は、これらの模試を自分で申し込む前に必ず塾の先生に相談することをオススメする。塾内模試にこれらの会社の模試を使用している場合があるので、受ける模試が重複してしまうことになってしまう恐れもある。
●神奈川全県模試
https://www.shingaku-kobo.com/moshi/
伸学工房が主催する模試。中萬学院のグループ会社なので、受験生は主に中萬学院の塾生に偏っている特徴はあるが、一応神奈川県全県のデータを網羅している。
●神奈川県W合格もぎ
http://www.schoolguide.ne.jp/test/form/kanagawa.html
模試・教材会社の新教育が主催する模試。普通の模試ならデータが少ない神奈川県西部の地域でも、ある程度のデータ量は揃っている。教材会社の模試なので、大手塾による偏りは少ない。
●神奈川県進学模試
http://www.narc.jp/
2013年から始まったかなり新しい模試。新しいだけに認知度は低い。表には出していないが、某大手塾が絡んでいる模試会社なので、受験者数は一定数はある模様。神奈川県東部の高校を目指している人だといいとは思うが、某大手塾が進出していない県西部や湘南エリアのデータはほとんどないと思われる。
まとめ
以上が正しい模試の活用法だ。この活用法の中に、「合否判定」についてほとんど触れていないことでも分かるように、合否判定はあくまでオマケと考えること。それなのにオマケの部分しか見ない受験生が本当に多すぎる。
模試は練習試合と同じ。勝つこともあれば負けることもある。練習試合でたまたま勝ったからって、試合本番でも必ず勝つとも限らないし、その逆もしかり。模試の判定が合格圏だったからと油断する人や、再考圏だったからと自暴自棄になってしまう人がいるが、練習試合の結果には決して踊らされてはいけないことを肝に銘じよう。