奇跡の合格や一発逆転なんて、夢見ちゃいけない。

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」が映画化されるらしい。私もこの本を読んだことがあるが、まぁよくあるような「一発逆転」のストーリーだった。昔のドラゴン桜のように、不良やギャル、落ちこぼれの高校生が一念発起して猛勉強し、難関大学に鮮やかに合格していくという一発逆転のストーリーは、世間の人々に好まれる。受験に限ったことではなく、スポーツでも弱小のチームが大逆転に次ぐ大逆転で強豪チームを次々と倒し、見事優勝を手にするという話も世間の人は大好きだ。

自分も塾講師になりたての頃、模試の合格判定がD判定やE判定だった生徒が、第一志望校に奇跡の合格を果たした時、思わず感動の涙を流し、まるでヒーローのようにその生徒を褒め称えたものだ。浅はかだったな、と今なら思う。

D判定やE判定から一発逆転する受験ストーリーは確かに存在する。私も10年以上の講師経験の中で、何回かはそのような奇跡の逆転ストーリーを目の当たりにしてきた。ただ一方で、そんな奇跡の物語は滅多に起こらないのも事実だ。滅多に起こらないからこそ、ビリギャルの話のように本にもなるし映画にもなる。これまでの経験上、D判定E判定の9割以上の子はどれだけ頑張ったって志望校に落ちてしまう。それが現実の世界だ。現実では滅多に起こらないことが、本や映画では起こり得る。だからこそ人はそこに陶酔するのだが、そのような非現実の世界ばかりもてはやされることに疑問を感じる。

入試の何年も前からコツコツと努力を続け、コンスタントに模試でA判定を取り、万全の状態で入試に臨み、当然のように志望校合格を勝ち取る。このような受験生は、本にも映画にもならないほど地味なのかもしれない。世間一般から見れば面白くもなんともないかもしれない。「合格しました」と報告しても、誰もヒーローのように褒め称えてはくれないかもしれない。しかし、現実の世界では、大逆転をしなければ合格できないような状況に自分を置かないように、日常的な努力を怠らない受験生の方が、褒め称えられるべき存在なのであり、受験生が目指すべき本当のヒーローなのだと思う。

今の私は、受験生に指導するとき、口が裂けても「奇跡」という言葉を使わない。「奇跡を信じろ」とか、「奇跡の合格を勝ち取れ」みたいなことは絶対に言わないし、奇跡が起こらなければ合格できない状況にいる受験生には、「奇跡が起こらなければ合格できない状況にどうして陥ったのか」、という過去をちゃんと省みた上で、志望校を下げることを勧める。

本や映画のような奇跡なんて滅多に起こらない。だからこそ、その奇跡の物語に陶酔するよりも、コツコツとした地味な努力を怠らず、圧倒的な力を身に付けて「余裕で合格」という状況を目指すべきなのだと思う。

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