計算力を伸ばすために必要なのは「思考」と「反射」の相反するトレーニングだ。

2018年6月6日

高校1年生の方から、数学の計算力に関しての質問が届きました。

この質問には続きがあります。

うちの塾は中学生対象ですが、この時期はどの学年も計算分野を勉強しています。ちょうど今日の中2の授業でも同じような話題になったので、今日はこの質問を深掘りすることによって、「計算力」について考えてみたいと思います。

まずは解き方を検証

2度目の質問をいただいた都立青山の計算問題はこれです。

質問によると、このような問題を工夫して計算することができず、頭から計算してしまって時間がかかってしまうとのこと。質問の「最初の項から1/√2をくくり出し…」とあるのは、きっとこのような解き方のことでしょう。

なるほど、確かに楽に解けますね。ここで一つ疑問に思うことは、では質問者さんはこの問題をどのように解いた結果、時間がかかってしまったのかということです。

最初の質問には「頭から正攻法でごりごり計算していたのでいつも時間がなくて大変」とありました。次の質問では、「頭から計算してしまった」とのこと。

この問題において、頭から正攻法で解くとはどのような解き方でしょうか。

ここで、同じ問題を他の方法で解いてみたいと思います。

これは(  )の中を√12で通分してから計算した解き方です。先ほど紹介した①の解き方と比べるとどうですか?①よりも②の方が時間がかかりますか?

そんなことありませんよね。かかる時間と手間は①と②でそんなに違いがあるように思いません。

では、もっと時間がかかりそうな解き方を考えましょう。学校の数学では「まずは分母を有理化してから計算しなさい」と習うので、まずは(  )内の分母を有理化してから計算してみました。

確かに①や②に比べると若干面倒くさいかもしれませんが、それでもそこまで時間がかかる計算ではありません。

数学が苦手な人は、もしかすると最初に前の3/4を分配して(  )を外そうとするかもしれませんね。明らかに面倒臭そうでやりたくありませんが、とりあえずやってみましょう。

質問者さんが言う「頭から計算してしまうので時間がかかる」とは、もしかしてこのことかな?だとすると、これは明らかに上の①〜③に比べると面倒くさいし時間がかかります。

ただ、これは「正攻法の解き方」ではありません。この問題に限っていえば、頭から計算する④が最も邪道な解き方です。なぜなら、見た瞬間から、④の解き方が一番面倒くさいと言うことが分かるからです。

楽に計算できるかを常に考える

計算問題を解くとき、何も考えずにいきなり頭から計算するのではなく、まず「どうやったら楽に解けるか」を考えるように心がけてください。うちの塾でもいつも生徒に言うのは、「できるだけ楽に解け。そのために頭を使え。」ということです。

また、無事にその問題が解けたあとでも、それで終わりにするのではなく、「もっと楽に解ける方法はなかったのか」「他の解き方はないのか」と、別解を考える癖をつけてください。先ほどの都立青山のたった1つの問題でも、上記のように何通りもの解き方があります。①の方法に気がつかなかったとありましたが、必ずしも①に気がつく必要はありません。②でも十分楽に解けます。

大切なのは、「頭を使う」ということです。一番楽な方法を考えるのです。これを常に意識していると、だんだんと上手に計算ができるようになります。

基礎的な計算は反射的にできるようにする

先ほど思考しながら計算問題を解くことが大事と書きましたが、基礎的な計算は、何度も反復して反射的にできるようにすることもまた、計算力向上のためには重要です。反射的とは、思考して考えることとは全く逆の、何も考えなくても計算できる状態のことです。これらの基礎がないと、どれだけ考えても楽な解き方なんて思いつきません。

反射的に計算できるようになるためには、同じ問題で良いので何度も繰り返し解き、問題を見た瞬間に手が動くレベルにまで完成させましょう。

まとめ

このように、計算は頭を極力使わずに反射的に解く反射の訓練と、頭を使いながら工夫して解く思考の訓練の、相反する2つの訓練が必要となります。この2つを意識して繰り返していくと、計算力は必ず向上します。

ちなみに先ほどの青山の問題は、思考と反射のトレーニングを繰り返している人であれば、①や②の解き方で解くはずです。もし思考の訓練が足りなくて、③の解き方しか思いつかなかったとしても、反射のトレーニングをしていれば、それほど難しく感じることはないでしょう。繰り返しますが、④はあり得ません。

「今更ですがやり直したいです」と書いてありますが、中学校の教科書からやり直すのではなく、高校の数学の計算力を基礎からつけていきましょう。まだ高校1年生です。今からでも十分間に合います。

計算力を付けるためには、毎日20分〜30分は計算練習の時間を必ず確保しましょう。大切なことは毎日やることです。週末にまとまった時間どかっとやってもそれほど効果はありません。

教材は学校で配られている副教材でもいいし、それだけで足りないのであれば、駿台のカルキュールなんかもおススメです。

頑張ってください。