授業の進度は中学校によってこんなにも異なるという事実を知っておいた方がいい。

宮崎教室の宮崎先生も今日のブログに書かれていた中3生の定期テストの試験範囲について、このブログでも取り上げてみます。

3中学のテスト範囲を比較してみる

うちの塾生の中学校でも今週〜来週に実質最後の定期テストがあります。現在中3の塾生は6つの中学校から通ってきてくれていますが、そのうちの3つの中学校の英語、数学、社会のテスト範囲の教科書ページを比較してみましょう。
[table width=100% highlight=” hoverrowbgcolor=” hoverrowfontcolor=” hovercellbgcolor=” hovercellfontcolor=” sort=” class=”]
[tablehead title=’,A中学,B中学,C中学’ class=”]
[tablerow title=’英語’ align=’center’ width=” class=” bgcolor=”]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P73まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=’#F4FEC9′]
P94まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P81まで
[/tablecell]
[/tablerow]
[tablerow title=’数学’ align=’center’ width=” class=” bgcolor=”]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P147まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P134まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=’#F4FEC9′]
P151まで
[/tablecell]
[/tablerow]
[tablerow title=’社会’ align=’center’ width=” class=” bgcolor=”]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=’#F4FEC9′]
P152まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P87まで
[/tablecell]
[tablecell width=” align=’center’ bgcolor=”]
P116まで
[/tablecell]
[/tablerow]
[/tablehead]
[/table]

薄い緑色のセルが、3中学の中で最もはやく進んでいるところです。英語がB中学、数学がC中学、社会がA中学と、教科によっても中学校によっても進度が本当にバラバラなことが分かります。

次に最も進んでいると最も遅れている中学のページ数の差を比較してみると、英語がA中学とB中学で21ページ差、数学がB中学とC中学で17ページ差、社会がA中学とB中学で65ページ差です。

社会、65ページも差がついているんですよ。中3の社会の内容といえば公民ですが、最も進んでいるA中学は経済分野のほとんどが終わっているのに、B中学は経済は全く手をつけていないどころか、政治分野もほとんど終わっていません。

住んでいる地域によってハンデを背負うかもしれないという運ゲー

これら3つの中学校はどれも半径10km圏内にあります。この3つの中学校に通うほとんどの生徒たちは県内の公立高校を受験するでしょうから、2018年の2月14日に同じ問題を解くことになります。入試までの残された期間、入試問題は同じなのに、11月時点での進度がこれだけも違うのです。進度が授業の全てではありませんが、少なくとも社会では、B中学に通う生徒は他中学の生徒よりも相当のハンデを負っています。

現在の制度では、公立中学を自由に選ぶことはできず、住んでいる地域によって自動的に通う中学校が決められます。自分が通う中学校の進度なんて入学時点ではどうなるか分かりませんが、場合によっては住んでいる地域によって自動的に入試でハンデを背負うことになるのです。

完全なる運ゲーですね。

明らかに遅れた範囲を、どのように取り戻すのでしょうか。

遅れた範囲を強引に終わらせる無理ゲー

塾の生徒たちの話によると、「教科書を読んで終わった」「ビデオを見て1時間で終わった」など、生徒の理解をまるで無視して、明らかに「終わらせたという既成事実を無理やり作った」ケースがどれだけ多いことか。

ツイッターでもこのようなリプライがありました。

高瀬舟の朗読CDを1回聞いて1時間解説しただけで、高瀬舟の何が生徒に伝わるのでしょうか。あんなに味わいのある作品なのに、その奥深さどころか、高瀬舟の主題だって伝わらない。それなのにテストで何を問うのでしょう。

無理ゲーすぎる。

生徒の学力向上のために、アクティブラーニングやらを取り入れる前に、カリキュラムをしっかりと立てて授業をし、計画通りにいかない時は、部活動の時間を補習に充てるなどの対応をした方が、よっぽど生徒の学力は上がる気がします。

塾に行くしか防衛手段がない

そして一番の問題なのは、そんな運ゲーや無理ゲーに対する生徒側の防衛手段が、塾に行くことしかないということです。

塾に行く経済力のあるご家庭なら良いでしょう。しかし何らかの事情で塾に行かせられない家庭の子どもは、勝手に背負わされたハンデに抗うことができないのです。

これっておかしくないですか。ブラック部活問題以上におかしくないですか。

政府は、「どんな家庭に生まれた子どもでも、学びたい子どもが学べるように」とか言って公立高校無償化、その上私立高校まで無償化にしようとしていますが、その前に、意欲的に学びたい子が塾に頼らなくても自分の希望する学校に入れるようにする環境づくりの方が大切なんじゃないんですか。

塾が必要である最大の理由

塾に行く最大の理由が、「学校の授業についてくため」である家庭がほとんどでしょうが、中学校でこんなに進度がバラバラである限り、学校側がこんな無理ゲーな進め方をする限り、学校の授業についていけていても塾は必要です。

塾側からすると、塾に通ってもらいたい最大の理由は、学校の授業についていくためではなく、受験に間に合うように、中学3年間の範囲を滞りなく計画的に終わらせて、理解するためです。どんなに賢い中学生でも、受験の2週間前にやっと3年生の全範囲が終了したところで、十分な受験対策はできません。

私は塾をやっていますが、塾のない世の中が本当は理想だと思っています。そのためには、公教育の間にあるカリキュラムや進度、定期テストのレベルの格差を是正してもらわないと、そんな世の中は夢のまた夢でしょうね。