神奈川県の塾に勤めてまず驚いたことは、その独特な入試制度だ。公立高校の入試制度は都道府県によって本当に千差万別で、それぞれの地域で独特な入試制度があるということはよく分かっていたのだが(いっそのこと全国統一にすればいいのにって、いつも思っているんだけれど)、神奈川の何に驚いたかって、そこそこの学力があってもそこそこの学校に行けるとは限らないことだ。
自分は奈良県で高校まで奈良県で育ったのだが、自分が中学生のときは、授業中の態度は最悪、宿題なんてしょっちゅう忘れ、何かにつけて先生に悪態をつくような反抗期真っ盛りのクソガキだったのだけれども、それでもそこそこの学力はあったので、一応トップ校と呼ばれる高校には進学できた。
でも、当時の自分がもし現在の神奈川の中学生だったとしたら・・・。
母校と同じ偏差値レベルのトップ高校なんて、まず行けないと断言できる。
自分が中学生の時はまだ「相対評価」と言われる評価方法で、ある程度定期テストの点数が取れていたら、態度が悪くても良い内申がもらえたりした。でも、今の時代は「絶対評価」の評価法。いくら定期テストの点数が良くても、普段の態度や提出物がまずければ、良い内申はもらえない。その逆もしかり。
しかも神奈川の場合は、「絶対評価」というよりも、「絶対王政評価」に近い。定期テストをいくら頑張っても、先生のお気に召さなければ評価はしてもらえない。今まで川崎、横浜、小田原と県内の色々な中学を見てきたが、だいたいどこの中学校でも「絶対王政評価」がなされていた。王様である先生のお気に召して、そこそこの学力がある子なら、高内申が付く。同じ学力があっても、王様のお眼鏡にかなわないような王様にとって悪い子なら、目も当てられないような内申が付く。
そこそこの学力の子が、そこそこの学校に行けるとは限らない原因がここにある。絶対王政下では、成績に関して絶対的な権力を持つ先生様にどう思われるかどうかが、学力よりも大切だったりする。
そこで、神奈川県でトップ高校に行くための、必要な要素を考えてみた。
1.トップ校程度の偏差値レベルの学力があること。絶対王政評価でも、これは必須。
2.素直さと無邪気さを持ち合わせていること。どんな先生も、無邪気で素直な子は好きなもんです。
3.クラスの委員長や部活の部長の役を自ら買って出るような積極性を持ち合わせていること。生徒会長なら言うことなし。
4.どうしたら人に気に入られるかという嗅覚が鋭いこと。加えて、先生にゴマをすることに対して抵抗がないこと。
5.5教科の勉強だけでなく、運動神経も抜群で、音楽や美術のセンスもあること。お料理やお裁縫、技術も出来ればなお良し。
↑出木杉くんなら出来るかな。でも、彼、なんか運動できなさそうだけど。
これがトップ校に行ける子の5大要素です。ちなみに自分が中学生のとき、1だけしか持ち合わせていませんでした。こんな私みたいな、他の都道府県では普通に頑張れば普通に進学校に入れるような子が、神奈川県では普通に進学校に入れません。
考えてみれば、人に気に入られないと合格できないなんて、全世界で神奈川の高校受験だけではないだろうか(全世界の受験を調べていないので、かなり無責任な発言です)。中学受験も大学受験も資格試験も、普通に頑張ったら普通に合格できる。その子が例え積極性に欠けていても、人に気に入られる嗅覚を持ち合わせていなくても、極度の運動音痴でも、だ。
今年から入試制度が変わる。内申の配分が小さくなるとばかり思っていたが、蓋を開けてみたらそうでもなかった。偏差値が高い高校でも、内申が5割というところも!去年までの入試制度よりも内申の比率が高いじゃん!
こんなことだから、進学実績も何もかも私立にも他の都道府県にもやられっぱなしなんですよ。神奈川の公立高校の復権には、まだまだ時間がかかるだろうな。