知っているようで意外と知らない「単位制高校」のメリットデメリット

昨日公立高校の定員が発表されて、そろそろ本格的に志望校を絞り込む時期となりました。今日は、知っているようで意外と知らない『単位制高校』のメリットとデメリットについて書いてみたいと思います。

ご存知の通り、ここ神奈川県西湘地区のトップ校小田原高校は単位制高校です。小田原高校を志望している人、また小田原高校と平塚江南高校などの普通高校のトップ校と迷っている人は、しっかりと単位制高校のメリットデメリットを知った上で志望校を考えるようにしましょう。

単位制のメリット

自由に時間割を組むことができる

単位制の一番のメリットは、自分で自由に時間割を組むことができることです。各高校の必履修科目(必ず全員が履修しなければいけない科目)以外は、各自の目的や好みに応じて何を勉強するのかを決めることができます。卒業に必要な単位数は74単位以上ですが、74単位ギリギリにしたって良いし、時間割をギッチリ埋めて74単位より多く履修したって良いわけです。

自由に時間割を組めることで、自分の進路に必要のないムダな授業を履修しなくてすみます。たとえば、既に私大文系に進学すると決めている人にとっては、数学や理科など理系科目は、乱暴な言い方をすれば「受験に必要のないムダな科目」になります。普通科の進学校であれば、文系でも国公立に進学する人に合わせて数学ⅡBまで履修しなければいけない高校が多いのですが、単位制の場合は数ⅡBは自由選択科目なので、履修する必要はありません。その分の時間を、英語や社会などの授業に充てることができることが単位制の最大のメリットでしょう。

留年がない

普通高校が採用している学年制であれば、1学年に履修しなければいけない単位が予め学校から決められています。たとえば1年生で決められている単位数が成績不振などによって取りこぼしてしまうと、2年生への進級は認められず、1年生をもう一度やり直すことになります。

一方で単位制の場合、卒業までに必要な74単位以上を3年間の間に履修すれば良いということになっているので、1年生で何単位、2年生で何単位という規定はありません。したがって、履修単位不足による留年はなく、卒業までに必要な単位数を履修できなければ3年生をもう一度やり直すことになります。

比較的少人数での授業が多い

単位制の授業は、必履修科目以外の授業は希望者だけの選択になるので、普通科よりも授業が少人数になることが多いようです。特に進学校で、あまり受験と関係がない科目は履修する人が少なく、かなりの少人数授業になるということも耳にします。ただ稀に、履修希望者数が少なすぎて開講されない科目もあるようです。

普通科にはない珍しい授業がある

単位制には、普通科高校にはないような珍しい科目を勉強することができます。たとえば小田原高校だと、社会の「アジア史」や「近現代と神奈川」、理科の「地学」、音楽の「ソルフェージュ特講」、体育の「ニュースポーツ」、家庭科の「服飾研究」などの珍しい科目があり、希望者はこれらを履修することができます。こういう科目は、普通科高校はまずありません。

もちろん、大学受験だけを考えた場合はこれらの科目が必要になることはほとんどありませんが、受験に関係あるなしを別として、自分の興味関心のあるものを学ぶ場が提供されているのが単位制高校の特徴と言えるでしょう。

文転・理転が比較的しやすい

普通科高校であれば、2年生進学時や3年生進学時に、文系コース・理系コースを選択しなければいけません。2年生から文系理系とコースが別れる高校では、1年生の時に文理選択をしなければいけないことになります。1度選択した文理のコースで3年生までの履修科目が決まるので、途中で文理変更することができません。よって、普通高校には「理系コースにいるけれども、文系を目指す」ような仮面文系の人が多少存在するのです。

一方で単位制の場合、高2からや高3から文理変更することは可能です。そもそも「文系コース」「理系コース」という枠組みもありません。理系の大学を目指していたけれども、やっぱり文系の大学を目指したくなったら、自分で履修科目を調整すれば良いのです。

単位制高校のデメリット

生徒に計画性が求められる

単位制の一番大きなデメリットは、皮肉にも一番のメリットでもある「自由に時間割を組むことができること」です。自由に時間割を組むと言うと聞こえは良いのですが、将来のことを何も考えずに好きな科目ばかり選択してしまうと、将来の進路選択の幅を狭めてしまうことになりかねません。

高3で国公立大の文系を目指そうと思ったけれど、これまで数ⅡBを選択してこなかったから受験することもできないとか、日本史や世界史を取っていたけれど理系の国公立大に進学したくなったなど、将来や大学入試のことを何も考えずに、無計画に好きな科目ばかりを選択してしまうと、大学受験時に非常に不利になってしまうばかりか、最悪の場合志望大学に受験すらできなくなることもあり得ます。

また、小田原高校に進学した生徒が塾に毎年のように履修科目の相談にやってくるのですが、大学受験を一度も経験したことのない高校生が、ひとりで膨大な資料を読み解きながら、大学受験のことを視野に入れて履修科目を決めていくことはなかなか至難の業だと言えます。まだどの大学やどの学部を受験するのか分からないから、とりあえず潰しが効くように履修科目を選択していくと、結局普通高校と同じようなカリキュラムになってしまい、単位制に進学する良さが消えてしまいます。

以上のことから、

  • 計画性がある人
  • 将来の進路についてある程度の見通しを持っている人

の2点を持ち合わせている人が、単位制に適していると言うことができるでしょう。逆に、無計画に事を進めてしまう性格だったり、中3の時点で大学進学についてハッキリとした目標を持っていない人は、普通科の高校を選んだ方が無難だと言えます。

普通高校と比べてクラス単位の団結が弱い

全員の時間割がほぼ同じである普通科高校であれば、1日のほとんどの時間をクラス単位で過ごします。一方、単位制高校の場合、一人ひとりの時間割が異なるので、普通高校と比べるとホームルームの友達と一緒に過ごす時間は短くなります。単位制高校でも普通高校同様、ホームルームのクラスは存在しますが、クラス全員が揃うことが少ないので、クラスの思い出や団結が難しくなるようです。単位制の文化祭や体育祭が、普通高校の文化祭などに比べるとイマイチ盛り上がりに欠けるのも、もしかしたらこのせいかもしれません。

まとめ

今回は単位制高校のメリットデメリットを取り上げましたが、単位制高校だけがこのようなメリットデメリットが存在するのではなく、普通高校・専門学科・総合学科の高校でもメリットデメリットが存在します。

大切なことは、それぞれの高校のメリットデメリットをきちんと考えた上で高校選択をして欲しいということです。特に単位制の場合、単位制の特徴をきちんと理解した上で選ばないと、入学後に「こんなハズではなかった」ということになってしまうかもしれません。また、将来のことがまだ全然考えられなかったり、計画性が乏しい場合など、明らかに単位制高校に不向きな人が安易に単位制高校を選んでしまうのも危険です。

小田原か平塚江南か、もしくは小田原か厚木かを選ぶということは、単位制高校か普通高校かを選ぶということと同じです。小田原と平塚江南、または小田原と厚木で迷っている人は、単位制と普通高校のどちらの方が自分にとってメリットがあるのか、今の自分に向いているのかを基準に、志望校を考えてみてください。