湘南2015年度特色検査研究:分析と対策法をまとめてみた

細々と続けている2015年度特色検査研究のエントリー。

特色検査研究の記事は対象者が限られているせいか、このブログの他の記事に比べてあまり人気がありません。一生懸命書いてもニッチすぎて見てくれる人がほとんどいないという、なんとも悲しい記事なのですが、もはやアクセス数はどうでもよくて、各校の特色検査を解いて研究するのが趣味みたいになってきています。非常に気持ち悪い趣味ですが、趣味になっちゃうくらい特色検査はめちゃくちゃ楽しいですよ!特色検査用の問題集を自作してみようかと思ってしまうくらい、特色検査にハマっています。

どうでも良い話はこれくらいにして、4回目の今回は湘南高校です。2015年度の湘南高校を解き終わった感想を一言で言うと、「めちゃくちゃ楽しかった!」に尽きます。小さい頃に夢中になってパズルを解いた経験があると思いますが、まさにそういう感じです。後で詳しく書きますが、最後の問4なんてまさにパズルですよ。昔、うちの塾で小学生に「宮本算数教室の賢くなるパズル―たし算上級」をやらせていたのですが、コレと同じような楽しさと頭の使い方です。

受験生のみならず、大人の方にも是非取り組んでいただきたい。ボケ防止になるはずです。

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問題 / 模範解答

問題構成と特徴

2015年度湘南の特色検査は大問4つで構成されています。制限時間は小田原や厚木・平塚江南よりも10分長い60分ですが、問題数も18問とそこそこ多く、それなりに時間のかかる問題も多いため、全てきちんと解くには時間的に厳しいと思います。小田原高校の特色検査と同じように、問題を上手に取捨選択しながら取り組むことが重要になります。

湘南の特徴は、各科目の知識と情報処理能力に加えて洞察力が上手い具合にミックスされていることです。知識だけ、情報処理能力だけという単純な設計になっている問題はほとんど見当たりません。どの問題に対しても、各科目の知識とリード文から読み取れる情報を上手く組み合せながら、深く洞察する力が必要とされています。この辺が他の高校と違う、湘南の最大の面白さだと感じます。

では、それぞれの設問を見ていきましょう。

問題分析

大問1:文章表現技法(レトリック)に関する言語論理の問題

大問1は、換喩法や擬人法・同語反復法などの文章表現技法(レトリック)に関する言語論理の問題です。湘南は言語論理の問題が大好きで、2014年度も同じように大問1は言語論理に関する問題が出題されていました。ただ、2015年度の大問1は、これまでの言語論理の問題よりもだいぶ解きやすかったと思います。レトリックと言うとなんだか小難しい話に聞こえますが、リード文がとてもユニークで読みやすく、また非常に分かりやすく各表現技法について説明してくれているので、換喩法や緩叙法などの知識がなくとも難なく理解することができるでしょう。

そして、この言語論理の問題の中に英語を持ってくるのも、湘南のおなじみのパターンです。2015年度も例外なく、英語の問題が入ります。ここで注目するべきは、レトリックの1つである同語反復法で書かれた「次郎も次郎だけど、あなたもあなたね。」という内容を、英文で書きなさいという問題です。

もちろんそのまま直訳して“Jiro is Jiro.”のような英文を書くのではありません。太郎が次郎の遠足のお菓子を勝手に食べているのを見て怒ったお母さんに対して、太郎が「だって次郎が僕のケーキを食べたから仕返ししてやってるんだ」みたいなことを言います(ってか太郎、超低レベルですね)。それに対してのお母さんの呆れたセリフ、「まったく何やってるの。次郎も次郎だけど、あなたもあなたね。」を、お母さんの言いたい内容が伝わるような英語にするのです。

とても面白い内容ですが、この問題には、同語反復法の意味をリード文から読み取る「情報処理能力」、正しい英文を書くための「知識」に加えて、母の真意を考える「洞察力」の3つが必要になる高度な問題です。こういう高度な問題を、面白おかしく出題する作問者を尊敬します。

大問2:数学理科美術の図形問題

大問2は、数学・理科・美術と教科のバラエティーに富んだ問題ですが、要は全て図形の問題という設計です。数学の図形は、算数の知識があれば十分解ける立体図形で、昨年度も同じように算数の知識だけで解ける立体が出題されました。ただし、必要な知識は算数だけですが、かなりの洞察力は必要です。

理科は光の屈折の問題です。選択問題なのですが、これがなかなか素晴らしい。先ほどの大問1の英作文同様、中1で習う理科の「知識」、空気中と水の中の光の速度に関する問題文を読み取る「情報処理」、そこから光が進む所要時間を考える「洞察力」の3つの力がきちんと備わっていないと絶対に解けない。この問題に関していえば、特に3つ目の洞察が浅いと正解の選択肢にはたどり着けません。

美術の問題は、美術の知識問題かと思いきや、美術を題材に情報処理能力を見ています。美術の知識がなくとも、リード文に書かれた「透視図法」の説明を読み取ることができれば解くことができます。この問題は問1の言語論理の問題と、ほとんど同じ性質のものと言えます。

大問3:社会からの数学計算を経由し、どちらがよいかの考察記述!

大問3は湘南が大好きなパターン、「社会→数学(算数)計算→じゃあどっちが良いの?説明してみて」問題です。題材は異なるものの、毎年このパターンが出題されています。

今年はフードマイレージとエネルギーが題材。「地産地消と、輸送によって排出される二酸化炭素による負荷を表すフードマイレージの考え方。この2つから、二酸化炭素排出量を減らすには、国産牛肉と輸入牛肉のどちらを選ぶべきか」を100字以内で考察させるのが一番の目的で、そのために社会の資料だったり数学の計算の問題が用意されています。

ちなみにネタバレすると、この答えは意外にも「輸入牛肉を選ぶべき」です。感覚的に言えば「国産牛肉を選ぶべき」になりませんか?ここが、湘南の特色検査の奥深いところです。社会の知識に基づいたデータと、数学の正確な計算を用いて、感覚に頼らずに客観的事実に基づいてどちらがよいのかを考察させること。これこそが、勉強のあるべき姿であり、学ぶことの本質だと言わんばかりです。

なぜ英数国理社の勉強をするのか。学校で勉強した内容が、実社会でどう生かされるのか。湘南の大問3は、毎年受験生に勉強することの意味を問いかけている気がします。非常に良問です。

大問4:みんな大好きパズル問題!

大問4はみんな大好きパズル問題です。湘南はパズルも大好きで、2014年度も問4に暗号のパズルが出題されています。去年の暗号問題もそうでしたが、今年のパズルも入試だと思わないで遊び感覚で解くと、とても面白いですよ!

大問4に関して言えば、知識はそこまで必要じゃなくて、情報処理と深い洞察力が必要になります。冒頭でも書いた通り、宮本算数教室の賢くなるパズルと同じような頭の使い方です。宮本算数教室の賢くなるパズル、たし算だけでなくかけ算わり算、もっと発展的になると四則計算までありますが、四則上級になると、開成や灘中に合格するような生徒でも苦戦するとか。賢くなるパズルには他にもいろいろなシリーズがあるので、頭の体操におすすめです。

ただし、楽しいんだけれど、最後にこのパズルに時間をかけている余裕があるかということが最大の問題です。パズル好きな人は、最初にパズルをやっちゃうと思うのですが、パズルに没頭するあまり、ここで時間をかけ過ぎて結果的に他の問題を解く時間がなくなるという事態になると最悪です。パズルは中毒性があるので、どうしても時間を忘れがちになってしまいます。楽しいパズルにどこまで時間をかけるか、その見極めが大切です。

対策法

先ほども述べたように、湘南は「知識」「情報処理」「洞察力」の3つをバランス良く要求してきますが、知識や情報処理に関しては、そこまで高いものは要求されません。知識であれば、学力検査の5科目で高得点をとれるレベルで十分ですし、湘南を目指す受験生であれば、知っていて当然のものばかりです。また、情報処理能力も、文章を理解できる国語力があり、中高一貫の適性検査レベルや他校の特色検査で練習を積んでおけば、十分養えると思います。

厄介なのは「洞察力」です。洞察力とは、言い換えると「見抜く力」。色々な視点から深く考えないと、物事の本質を見抜くことはできません。これはなかなか一朝一夕では身につかない能力です。ただし、湘南受験生の多くは、併願で難関私立オープン入試を受験したり、なかには学芸大付属や東工大付属などの国立高校を併願している人もいるので、難しい問題を深く考えてきた経験は多いだろうと思います。難関国公立入試問題などの負荷のかかる問題に対して、解法テクニックのみに頼らず深く考える練習を積むことでも洞察力は鍛えられます。

また、湘南はパズルが大好きです。普段からパズル的な問題に慣れ親しんでおくのもいいでしょう。パズルと言ってもパズドラはダメです。先ほど紹介した宮本算数教室シリーズはちょうどいいかもしれません。ただし、ハマり過ぎて他の勉強をおろそかにしないように注意しましょう。