今年初めて行われた「追検査」を、徹底解剖。

今年の入試問題の国社の分析エントリーをまだ書けていませんが、今日は別の入試問題である「追検査」についてのエントリーを書こうと思います。

入試直前にインフルエンザ等に罹患してしまった受検生への配慮から、文科省が全国の自治体に追検査導入を強く要請し、ここ神奈川でも今年から追検査の制度が導入されました。

ちなみに、一昨年にここ神奈川県で、インフルエンザにより高校入試で十分に力を発揮できず、受検生とその母親が自殺してしまったという痛ましい事件が起こってしまいましたが、この事件が、政府が高校入試の追検査に対して本格的に動き出すきっかけとなりました。

そして2018年2月20日。2月14日の本試験の6日後に、神奈川県で初めての追検査が実施されました。

追検査の概要と問題点

今年初めての制度なので、「追検査自体よく分かっていない」という人がほとんどでしょう。追検査を理解するために、まずは今年行われた追検査の概要についてまとめます。

  • 実施日:2018年2月20日(火)
  • 会場:神奈川県立総合教育センター(藤沢市善行7−1−1)
  • 対象:インフルエンザの罹患など、やむを得ない事情で学力検査のすべてを受験できなかった人。追検査受検希望者は、診断書とともに「追検査受験願」を2月15日(木)までに志願先の高校に提出する必要がある。

追検査は学力検査のみで、面接や特色検査には追検査はありません。追検査がないからといって面接や特色検査を受検しないと、「資料のそろわない受検生」扱いになり、通常の1次選考と2次選考の中間にある、「資料の整わない者の選考」という謎の選考でふるいにかけられることになります。

この「資料の整わない者の選考」が非常にグレーな部分なのですが、まあ不利になっても有利になることはないでしょう。結果、追検査の制度はあるものの、面接試験や特色検査には、インフルエンザに罹っても予定通り行かなければいけないという、全く安心できない中途半端な制度になってしまっています。

本試験と追検査の問題と難易度を比較してみた

追試験の問題が手に入ったので、本試験と追試験の問題や難易度を比較してみました。

本当は問題の画像をアップできれば良いのですが、著作権の関係上いろいろ問題になりそうなので、アップするのは控えます。っていうか、本来なら教育委員会がHP上で公表するべきだと思うのですが、今のところその予定はないそうです(詳細はツイッターにて)。

まずは難易度の比較です。

難易度の比較

まずは本試験と追試験の難易度の比較です。慧真館スタッフが解いてみての主観になります。異論は受け付けます。

  • 英語→同程度(英作文のみ追試験の方が難)
  • 数学→本試験より難しい(ギリ許容範囲内)
  • 国語→本試験よりやや簡単(許容範囲内)
  • 理科→本試験より簡単(ギリ許容範囲内)
  • 社会→本試験より簡単(ちょっと許容範囲外)

英数国理の4科目は、教科によって簡単難しいの差はありますが、まあどれも許容範囲内です。教育委員会側も、「本試験と追試で難易度の差がないように、入念にチェックしてきました」とのこと。確かに、問題を解いていると、頑張って似せようとしているなという努力の跡がヒシヒシと伝わってきます。

英数国理に関してはね。

しかし、社会はあかんやろ。

今年の本試験は、社会の大幅な難化が一番話題をさらいました。問題の出し方も過去問と異なり、これまで以上に知識・思考力が必要となる内容となりました。

一方で追検査の社会は、問題の出題傾向と難易度ともに、2017年までの過去問と似ています。もしも、この追検査の内容が本試験で出題されたなら、社会なんてほとんど話題にならなかったでしょう。受検生の自己採点も、これまでの模試や過去問と同じような点数が出ていたことでしょう。

追試の数学は本試験より点数がとりにくい出題となっていましたが、それと差し引いて考えても、社会の大幅な難易度の差、国語や理科の易化により、5教科前提では追試験の方が点数がとりやすい出題となっていたと思います。

出題傾向・出題内容の比較

続いて出題内容を比較します。違いが分かりやすい数学・理科での比較です。

数学

まずは数学です。

大問 本試験 追検査
問1 計算 計算
問2 因数分解/2次方程式計算/2次方程式変化の割合/不等式/平方根/統計 因数分解/2次方程式計算/2次関数変化の割合/1次方程式文章題/不等式/平方根
問3 平面図形/等式 平面図形/確率
問4 関数 関数
問5 確率 規則性(2次方程式)
問6 空間図形 空間図形
問7 穴埋め証明・角度 穴埋め証明・角度

追試験の数学は、確率が大問3の小問で出題され、代わりに大問5では昔懐かしの規則性(結構ハード)が出題されたりと、本試験と大きく異なる部分がありましたが、今年から穴埋めに変わった証明問題は、同じく穴埋めの出題となっていました。

追検査とは関係ないけど、規則性が出題されたってことは、来年以降の本試験での規則性復活も十分あり得るということですよ。

理科

続いて理科。

大問 本試験 追検査
問1 物理小問 物理小問
問2 化学小問 化学小問
問3 生物小問 生物小問
問4 地学小問 地学小問
問5 物理大問(電流) 物理大問(磁界)
問6 化学大問(イオンと電池) 化学大問(中和)
問7 生物大問(植物の蒸散) 生物大問(植物の光合成と呼吸)
問8 地学大問(天気) 地学大問(天気)

理科は、毎年後半の大問の出題に毎年注目が集まりますが、上記のように、本試験と追検査では同じ単元だけどやや違う内容からの出題となっていました。数学のように、出題内容が全く異なる、ということはありませんでした。

まとめ

追検査を受検した人数が75人と、母数が少なすぎることから、きっと追検査に関しては平均点や得点分布等は公表されないでしょう。本試験との得点調整もされることはないと思います。

今回初めて追検査が行われてわかったことをまとめると、

  • (今年度に関しては)出題傾向はほぼ同じにしようとしているが、難易度にばらつきあり。
  • 追検査が決定した人は、追試前に本試験を解いておくと、だいたいの程度の傾向が分かっちゃう。
  • 結局本試験との点数調整はなさそう。追検査の点数がそのまま選考で使われる。

今年始まったばかりでまだまだ課題が山積している「追検査」。受検生が本当の意味で安心して受検できる制度に整うまで、今後も注視していこうと思います。

「追検査欲しい」って人は、神奈川県教育委員会本部(ハマスタの前)に行きましょう。まだ残部があれば貰えます。塾や学校の先生は追検査解いておいた方が良いと思います。