6月14日に県教委から平成29年度公立高校入試の日程と選考基準(案)が発表されました。
参考:平成29年度公立高等学校入学者選抜選考基準及び特色検査の概要(案)
ちょっと気になるのは、選考基準に『(案)』が付いているということ。県教委のウェブサイトによると、「選考基準は現時点の案であり、6月下旬頃に確定する予定です」という但し書きがありました。私の記憶が確かなら、こんなことは今回が初めてです。例年は5月中に発表されている入試日程もようやく今日発表されたり、6月上旬にはすでに確定されていた選考基準もまだ正確には決まっていなかったりと、今年はなんだかゴタゴタしている印象があります。
さらに、昨年度のあり得ない採点ミス多発事件を受け、H29年の高校入試から一斉に選択問題のマークシートが導入されるようです。
参考:http://www.kanaloco.jp/article/179263
マークシート導入についてはまた後ほど触れることとして、まずは14日に発表された入試の日程と、選考基準の変更点をまとめていきます。
H29年度共通選抜入試日程
- 平成29年2月15日(水)・・・学力検査、特色検査
- 平成29年2月16日(木)〜17日(金)・・・面接・特色検査
- 平成29年2月28日(木)・・・合格発表
選考基準の変更まとめ
では、昨年度までと選考基準に違いがあった高校をまとめていきます。ただ、あくまでも(案)ということなので、さらにこれから変更があるかもしれません。
一次選考比率の変更
●鶴見・・・2:6:2→4:4:2へ
これまで内申の割合を2、学力検査を6という「超学力重視」の方針を貫いてきた鶴見も、とうとう大きく方向転換されました。これで、内申2:学力検査6の「超学力重視」型は、横浜翠嵐1校となりました。個人的には何とも寂しい限りです。
●市立川崎・・・4:4:2→3:5:2へ
市立川崎は、比率の変更にプラスして、昨年度までの英数の学力検査の点数×1.5という重点化がなくなりました。
●横浜市立南・・・3:5:2:1→3:5:2へ
昨年度、筆記型の特色検査をやめ、スピーチ型に切り替えた市立南ですが、今年はとうとう特色検査自体なくなるようです。
●厚木北(普通科)・・・6:2:2→4:4:2へ
2017年度から今までの「普通科スポーツ科学コース」が「スポーツ科学科」と改編される予定の厚木北。スポーツではない従来の普通科も、比率の変更がありました。
●小田原総合ビジネス(普通科・総合ビジネス科)・・・5:3:2→4:4:2へ
2017年度から普通科が新しく設置される小田ビでは、従来の総合ビジネス科でも比率の変更がありました。
●金沢総合・・・4:3:3→4:4:2へ
●秦野総合・・・5:2:3→4:4:2へ
●相模原総合・・・5:3:2→4:4:2へ
上記3つの高校以外にも、鶴見総合・金沢総合・麻生総合・藤沢総合・秦野総合・座間総合・相模原総合の7つの県内総合高校の選考基準の比率・重点化・第2次選考の比率が示し合わせたように同じになっていました。ちなみに、これら7つの総合高校はいずれも1次選考比率が「4:4:2」、「調査書の点数の高い1教科×2」の重点化、2次選考が「7:3」です。
重点化・2次選考・面接の追加項目等の変更
●荏田・・・2選考比率8:2→4:6へ。面接事項に「本校の教育活動を理解し、体育的活動をはじめとする教科外活動に積極的に取り組み、教科学習と両立させようとする強い意欲」を追加
荏田高校は今回の高校改編で、体育コースが廃止されて普通科1つに絞られましたが、面接事項の追加を見ると、普通科に体育コースの特色を残していくということだと推測されます。
●白山・・・面接項目に「学校生活におけるルールとマナーを守ろうとする姿勢」の追加
わざわざ追加しないといけない項目なのでしょうか。疑問です。
●川崎北・・・面接項目に「本稿での部活動、生徒会活動に対して取り組む強い意欲と高い志」の追加
●藤沢西・・・重点化の廃止
●有馬・・・1次選考にて「調査書の英語1.2倍」の重点化、2次選考にて英語学力検査2倍の重点化
有馬も今回の高校改編で、今まであった英語コースが廃止され、普通科のみとなりました。1次選考・2次選考ともに英語を重点化する姿勢から、普通科でも英語重視という特色を引き継いでいくようです。
●厚木商業・・・2次選考比率5:5→7:3へ
●川崎・・・1次選考にて「調査書の英数国×1.5」の重点化を追加
●藤沢清流・・・1次選考「調査書の英数国×1.5」の重点化→1次選考「調査書の英数国のうち点数の高い2教科×1.5、技能教科のうち点数の高い1教科×2」の重点化に変更
高校改編による新設学科の選考基準
●弥栄(単位制普通科)・・・1次選考4:4:2「調査書英数国×2」の重点化、2次選考8:2
●弥栄(スポーツ科学科)・・・1次選考4:4:2:4「調査書保体×2」の重点化、2次選考2:8:5
●弥栄(音楽科)・・・1次選考4:4:2:4「調査書音楽×2」の重点化、2次選考2:8:5
●弥栄(美術科)・・・1次選考4:4:2:3「調査書美術×2」の重点化、2次選考2:8:5
大がかりな高校改編となった弥栄高校。今までの国際科・理数科は普通科となり、選考基準も文理どちらにも偏らないものとなりました。また、音楽科とスポーツ学科では、特色検査の比率が昨年度までの3から4にアップしています。
マークシート導入+答案用紙返却へ
最後に、カナロコの記事にあったマークシート導入の件について触れます。
参照:http://www.kanaloco.jp/article/179263
カナロコの記事によると、H29年度から全受検生へマークシートを導入すること、また採点したあとの答案用紙を受検生に返却するとあります。しかし、県教委のHPでは今のところこのような内容は発表されていません。行政の正式な発表よりもメディア発表の方が先行しているということが若干気になります。いずれにしても、行政による正式な発表を待った方が良さそうです。
本当にマークシートが導入されるとしての仮定で話をします。
マークシートといっても、ただぬりつぶせばいいだけなので、受検生が特別心配することは何もありません。マークシートごときに対応できないようであれば、そもそも受験どころの話ではありません。マークミスを心配する声も出そうですが、マークでも筆記でも、どんな形でもミスは出ます。マークだからミスが減る、筆記だからミスが減るということは決してありません。ちなみに、マークシート導入というと、「入試が楽になる!」と短絡的に考えてしまう人が少なからずいるようですが、マークシート導入=全部選択問題ではありません。あくまでも、今の選択問題の部分をマーク化するだけであり、記述問題はきちんと残ります。
今回のマークシートの導入は、受検生への配慮ではなく、昨年度の盛大なる採点ミスを受けての高校側への配慮からです。つまり、受検生がミスしようがミスしまいが行政としてはどうでもよくて、高校側・行政側がミスしないような制度にしたいという、ただその一点です。
私が気になっているのは、マークシートを読み込む機械がどれほどの精度のものなのかということです。ちなみにセンター試験で使用されているマークシート読み込み機はかなりの高性能のもので、適当に塗りつぶされていたりマークが薄かったりしても誤認識はほとんどないそうです。その代わり、お値段はそれなりにするでしょう。
このような高性能なものを、果たして神奈川県の全公立高校に導入できるのかどうか。その予算は確保できているのでしょうか。いずれにせよ、我々県民の税金から支払われるでしょうね。私がちょっとどうかと思うのは、採点ミスがたくさんあったから、じゃあマークシートを導入しましょうは、ちょっと短絡的すぎやしないかなと。昨年度採点ミスが多かったと言っても、採点ミスがゼロの高校ももちろんたくさんあり、それらの高校からミスを防止するための取り組みを共有し合ったりなどなんらかの努力はできたんじゃないかなと思うわけです。
生徒にはミスをするな、ミスを防ぐための努力をしろと言っておきながら、大人のミスはお金で一発解決ってのがちょっとどうかなと。
ただ、答案用紙返却は良いと思います。正直、マークシートを導入しなくても、答案用紙返却を義務化するだけで採点ミスは劇的に減るような気もしますがどうなのでしょうか。