H28年度横須賀高校特色検査研究と分析:まるで特色検査のオムニバス。どこよりも理系色が強い問題構成!

最近ブログが滞り気味ですが、なんとか元気に生きています。

先週から定期テスト期間に入りました。こんな辺鄙な場所に塾があるにもかかわらず、近年は遠くの場所から電車に乗って、もしくは車で送迎をしてもらって通ってもらえるようになり、9つの中学校の在籍者が1つの小さな塾に入り交じっているという異様な状況です。そのため、各中学異なる定期テスト期間に対応するとなると、土日のテスト勉強会(カンヅメ)が1ヶ月以上も続きます。

30代も中盤に差し掛かり、気が付かない間にシミもシワも目立つようになり、だんだんと体力の衰えと顔面の劣化に恐怖を覚え始めている今日この頃。この定期テスト期間を平穏に乗り切るためにも、できるだけ体力と気力を温存するべく省エネモードで生きています。しばらくは、体力と時間の余裕があるときにブログを更新することになりますが、毎日更新を楽しみにしてくださっている皆様、ご迷惑をおかけしてスミマセン。

さて、前置きはこれくらいにして、今日はH28年度入試最後の特色検査分析です。ラストを飾るのは横須賀高校。うちの塾のある小田原市とは縁もゆかりもない地域ですが、横須賀高校はH28年度に初めて特色検査を導入した、言わば特色検査後発校ということで、「後発の利」を活かしてどんな問題を出題してくるのか個人的に非常に興味がありました。

結果から先に言ってしまうと、まさに後発の利を活かした特色検査のオムニバスのような内容で、多種多様なタイプの問題がずらっと並びます。検査時間60分間に対して全設問数は21問。小田原高校の全24問の設問数には及びませんが、横須賀の場合は1つの設問に対して複数の解答が必要な問題も数多く含まれているので、実感としては21問よりもずっと多く感じます。きちんと解こうとすると、制限時間内に解き終わるのは難しいかもしれません。

英語、論理パズル、理系応用問題を中心とした内容

まずは問題の内容から見ていきましょう。

先ほども述べたように、まさに特色検査のオムニバスといった内容で、横浜翠嵐のように最後にまとめられた『単語集』を活用する英語の問題、希望ヶ丘が大好きなパターンの論理パズルや規則性問題、厚木が好むような理系応用問題が出題の軸となっていました。ただ、後で詳しく述べますが、他の特色検査校によくあるような「文字数の圧力」はそれほど感じられない内容です。基本的には記述問題が多いのですが、ある程度の文字数を要求されるような論述問題もありませんでした。

全設問の半数以上が理系問題!

横須賀の特色検査の一番の特徴がコレです。全設問21問のうち、16問が理系応用問題です。理系以外では、英語の問題が4問、残り1問は論理パズルの問題のみでした。先ほど、「文字数の圧力」はそれほど感じられない内容だと書きましたが、その原因がここにあります。

理系問題にも一応リード文はついていますが、リード文を読んで理解する必要がある類いの問題ではありません。つまり、文字で書かれた情報を整理しながら解くような「情報整理型」の理系問題ではなく、原理や現象を考えさせ、計算させるような「思考・計算系」の理系問題です。同じH28年度の特色検査であれば、湘南や厚木、小田原の理系問題の性質に似ています。ちなみに、偶然にも湘南で出題された「ユリウス暦とグレゴリオ暦」に関する問題が横須賀でも出題されていました。

このブログで何度も「特色検査は文型問題で点数を取れ」と言ってきましたが、横須賀の特色はこの方法が通用しません。そもそも文系問題が少なく、しかも数少ない英語の問題は、文系が得意な生徒が有利になるほどの難しいレベルではないからです。一方、16問の理系問題はどれもなかなかハードな問題でした。特にH28年度の理系応用問題の「水時計」の問題は、圧力について深く理解していないと手も足もでないでしょうし、「相対性理論」の問題は、実は数学の図形問題ですが、そもそもこれがどんな実験で何をしようとしているのか、文系肌の受検生にとっては皆目検討もつかないでしょう。理系が得意な受検生でも、この「水時計」と「相対性理論」の問題は厳しかったのではないでしょうか。

文系肌の受検生でも頑張れば何とかなったのが、前半の「うさぎの繁殖」(フィボナッチ数列)と後半の「ユリウス暦とグレゴリオ暦」くらいかもしれません。ただ、この2つだって、決して楽な問題とは言えません。簡単な計算ではないので正確に答えを導こうとすると時間を要します。文系肌の受検生でも、一定レベル以上の理系の計算技能や思考法が身に付いていないと、本当に取れるところがなくなってしまいます。

横須賀対策としてやっておくべきこと

以上が私なりの横須賀の分析です。今年が初めてなので、来年度以降も今年と同じように理系重視路線を続けるのか、はたまた方向性を変えてくるのか、今のところは分かりません。いずれにせよ、横須賀高校を志望している人は、とにかく特色検査の理系問題にとにかく多く触れておくべきでしょう。

小田原・平塚江南・厚木・湘南の理系応用問題が良い素材になります。特に難易度から考えれば、厚木の特色は良い練習になるでしょう。また、論理パズル系の問題を得点源にできるように、希望ヶ丘の過去問も一通り解いておくと良いでしょう。横浜翠嵐レベルまでは必要ありません。翠嵐と横須賀の問題は、「単語集」等のつくりは同じでも、問われている内容は全く違います。

H28年度特色検査全9校の問題を解いてみて思ったこと

今回の横須賀を最後に、H28年度の特色検査研究を終了します。
結局、緑が丘以外の9校全て解き、分析記事を書いたことになります。せっかくなので今までの8校分もまとめておきます。

ここからは、今年の特色検査全て解いてみた超個人的な感想です。

入試に特色検査が導入されてから4年目になり、どの高校も、良くも悪くも問題の作問に「慣れ」が生じてきたなと感じます。まず、問題の作り方が上手になった(上から目線でスミマセン)。初期の頃は無理やり感満載の問題を見かけることも少なくなかったのですが、最近はほとんど見かけなくなりました。また、それぞれの高校の問題に個性が出てきた。まさに高校独自の「特色」を打ち出し、それぞれの高校が求める生徒像がハッキリと問題から読み取ることができるようになってきました。それゆえ、受検生にとっても随分と対策しやすくなってきたと思います。

一方、私が感じた悪い面での「慣れ」です。特に今年は、複数の高校で行き過ぎた問題があるように感じました。具体的には書きませんが、明らかに高校数学の知識が必要な問題だったり、この式の変形は普通の中学生には無理だろうという問題だったり、これはいくらなんでも中学生に求め過ぎではないかと思えるような問題だったり。いくら特色検査とは言え、公立中学で真面目に取り組んできた中学生が、知恵を振り絞って解けるようなレベルではない問題が増えてきていることが非常に気になります。難しさの質が、だんだんとちょっと変な方向に変わってきているような気がします。

また、初期の頃に多々あった、思わず唸ってしまうような「良問」も減ってきているのが残念です。初期の頃は、問題から作問者の努力や想いがにじみ出ていて、解いていて思わず感動してしまうような問題がいくつもありました。個人的には、初期の頃の湘南の問3は神レベルだと思っています。また、小田原高校も初期の頃は一貫したテーマがあり、工夫が凝らされていて好きでした。しかし今年は、このような思わず感動してしまう問題が少なかったように感じます。作問は上手くなったけれど、その分無機質になったような、そんな印象です。

私個人の思いは、これ以上行き過ぎないようにして欲しいということです。行き過ぎてしまうと、特色検査がテクニック論になってしまう危険性が高くなります。特色検査を有利に解くために、高校内容まで学びましょう。また解けなさそうな問題は、すぐに捨ててしまいましょう。この高校のこの問題は、リード文を読まなくても解けるので、読む必要はありません。などなどです。こうなってしまうと、特色検査の本当の意味合いが薄れてしまい、塾などで特色検査講習を受けたかどうかで点数が左右されるようになってしまいます。

来年度は現行の入試制度になってからちょうど5年目の年にあたります。神奈川の入試制度はだいたい10年スパンで変わっていくので、来年度がちょうど現行の制度の中間地点です。ここら辺でもう一度、特色検査を導入した目的、特色検査の意味など、原点に立ち返って欲しいと強く願います。

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