トップ層は文系が得意!簡単になってもやっぱりとれない理科。H28年入試総括②

県教委から発表された学力検査の集計をもとに、今日も入試総括を行っていきます。

前回、H28年度の入試平均点の各教科の平均点をまとめましたが、今回はちょっと違う切り口でまとめてみました。81点以上100点以下のトップ層の割合・30点未満の割合と平均点の関係を一覧にしましたので、まずは下の表をご覧下さい。

科目 英語 数学 国語 理科 社会
81〜100点 7.8% 4.4% 21.9% 6.0% 14.3%
0〜30点 36.2% 12.2% 4.7% 24.3% 22.5%
平均点 43.0点 51.7点 64.7点 46.5点 52.0点

トップ層は文系が得意

5教科で最も平均点が低かったのが英語だということは前回の総括で触れました。しかし、トップ校受検生が目指す80点以上の得点の割合を見てみると、最も平均点が低い英語よりも、平均点が高いはずの数学・理科の割合の方が低くなっています。

このブログで以前から何度も触れているように、高校入試では、特にトップ層になればなるほど文系科目に強い生徒が多くなるという特徴があります。いくら英語が難しくなり、昨年比では高得点層の割合が極端に減少したとはいえ、やはり「トップ層=文系が強い」という構図は今年も崩れてはいないということです。

理系科目が難しくなると、トップ校受検生と言えども簡単に点数が崩れてしまう人が多くなります。これは、理系科目は制限時間内に解法が浮かばなければ、いくら勉強してきた内容であっても解くことができないのと、解法が分かっていたとしても計算が複雑であれば間違ってしまう確率が高くなるからです。

一方で、言語能力が中心の英国は、少々難しくなっても理系科目のように「解法が浮かばない」ということはありません。また計算間違いもほとんどありません。高い言語能力を持ち合わせた受検生であれば、少しくらい難しくなっても得点に与える影響が小さいのが英国なのです。社会はというと、基本的に知識がしっかりと定着していれば、下手な点数にはなりません。一部、資料から分かることを文章でまとめる等の知識以外の問題もありますが、これも制限字数でまとめられる言語能力があれば攻略ができます(逆に、言語能力が低いと、いくら勉強をしていても社会の記述問題で点数を落としてしまいます)。

文系科目の得点は「言語能力」が鍵

これまでも何度も書いてきましたが、高校入試、特に神奈川県の公立高校入試において、公立トップ校を目指すには『言語能力』が鍵になります。活字をスラスラと読むスピード、書かれてある内容を把握する力、そして文章でまとめる記述力。つまりは国語です。小さい頃から国語がなおざりになっていると、いずれは国語以外の科目にもしわ寄せが生じ、公立トップ校からは遠ざかっていってしまいます。

ところが神奈川県内の学習塾の様子を見ていると、なぜかこれほど重要な国語の授業がない塾が多いのです。国語の授業があったとしても、英語や数学よりも回数が少なかったり、漢字や古文だけしかやっていないというところも少なくありません。前の塾では国語の授業がないからという理由で、うちの塾に転塾してくる生徒も増えています。学校も塾も家庭も、もちろん生徒本人も、もう少し国語の重要性を認識するべきです。

簡単になってもやっぱりとれていない理科は逆にチャンス

さて理科についてです。理科は昨年度・一昨年度に比べて随分簡単になりました。特に簡単になったのは、問1〜問4までの小問集合です。昨年度・一昨年度はこの小問集合で手ごわい問題が続き、さらに後半の問5〜問8の大問で時間的・精神的にやられた受験生が多かったのですが、今年は小問集合がかなり解きやすくなり、時間的にもそれほど大変ではなかったと思います。大問は、昨年度・一昨年度同様、実験過程を考えたり推論したりという種類の問題が多く出題されましたが、それでも難易度はだいぶ低くなりました。
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しかしながら、それでも理科の得点の最頻値は30点台です。これでも以前よりはだいぶマシにはなっているのですが、50点未満の得点の割合が全体の59.9%。ほぼ6割の受験生が半分も得点できていないということです。繰り返しますが、今年の理科の問題は決して難しくはありません。きちんと受験勉強を真面目にやっていればとれる問題がほとんどでした。それでも50点以上得点できている受験生が全体の40%しかいないということは、逆にここにチャンスがあります。

難しかろうが簡単であろうが、理科で得点できる受験生が少ないということは、逆に理科をきちんと勉強すると、他の受験生に差を付けることのできる可能性が高いということです。理科は暗記科目という間違った固定観念を取払い、基礎基本をきちんと勉強した上で原理原則を理解しながら全国入試を演習しておけば、正直どんなに理科が苦手でも60点以下の点数にはならないはずです。

神奈川県の受験生が理科で点数をとれないのは、そもそも理科の問題の演習量が少ないからだと推測します。もしくは、演習量は足りていても基礎的な問題しか解いておらず、入試レベルの演習を積んでいないかどちらかです。このブログでも何度も書いているように、理科は5教科の中で一番、基礎的な問題集と入試レベルの問題に乖離がある科目です(ちなみに定期テスト問題と入試問題で最も乖離があるのが英語)。「これだけでバッチリ」的な薄っぺらい問題集を何回解いてもほとんど役には立ちません。

トップ校を目指している人は、まずは中3生の10月くらいまでに中1〜中3の基礎を固めましょう。この時期は、基礎的な問題集で構わないので、きちんと覚えるべき用語を覚え、基礎的な解法を身に付けます。そして10月以降は全国入試問題集で入試レベルの演習をしっかりと積むこと。これができれば、理科は強力な武器になります。