東京都立の公立高校に立川高校という偏差値71のトップ校があります。神奈川でいうと、湘南と柏陽の間くらいのレベルの高校です。その立川高校のウェブサイトを見ていたら、推薦入試合格者に対する校長先生のメッセージおよび課題図書があまりにも素晴らしすぎて驚きました。神奈川にも、合格者に対してこのようなメッセージを送る高校が出てきて欲しいものです。
その校長のメッセージがコチラ:http://www.tachikawa-h.metro.tokyo.jp/zen/16suigou.pdf
1日最低3時間は勉強せよ
一部抜粋してみます。
立高に入学する前に、心がけておきたいことは、学習習慣の確立である。ほっとして、のんびり過ごして欲しくない。すでに、高い志と高い目標に向かっての助走(序章)の時期であることを認識しよう。64日間で多くのことを学ぶことができる。一日一日を無駄にせず、時間を大切に使おう。1日最低3時間は家庭で学習する習慣を身に付けよう。
これは合格者に対するメッセージです。立川高校を目指す受験生に対するメッセージではないことを念を押しておきます。すでに高校に合格している中学生に向けて、「1日最低3時間は家庭で学習するように」と言っているのです。1日最低3時間とは、受験生とほとんど同じくらいの勉強量です。つまり立高の校長先生は、「合格したからといって勉強を終わりにするんじゃねーよ。」とおっしゃっているのです。
しかも、具体的に何を勉強すれば良いのか、そしてなぜそれを勉強しなければいけないのかも明確に書かれてあります。
中学での貯金はすぐに尽きてしまう
次に、これは現実的な話である。立高入学後、1学期は中学の知識で、努力もせず済んでしまう。夏が終わり、2学期、新しい学習内容に入ると、たちまち、数学が不得手に陥る生徒が出る。結果、在学期間に数学が伸び悩み、思った志望大学に入れないということがある。栄冠を勝ち取った卒業生の多くは、数学を制した。だから、この64日間に、数学の計算力や計算スピードを磨こう。そして、中学校での関数や図形の問題を、高校入試問題集で再復習して欲しい。大学入試問題では関数や図形が出題されることが多い。
もうこれは正論過ぎです。高校入学後しばらくは、どの科目も「中学校での勉強の貯金」が効きます。しかし、そこで勉強を舐めてしまって勉強しないでいると、その貯金はあっという間に無くなってしまい、気付いたときには全く学校の勉強についていけなくなります。その最たる例が、引用元にある通り数学です。
ちなみにこんなデータがあります。下の参照元によると、文系学生が数学を諦めた時期の第1位が高校2年生(13.9%)、次いで第2位が高校1年生(13%)だそうです。
参照:もう理解できん……文系大学生が数学を諦めた時期Top5! 1位高2「数Bむずすぎ」
中学数学と高校数学の難易度は比べ物になりません。中学校の頃に少々数学が得意だったからと、少しでも手を抜いてしまうと高校数学はたちまち分からなくなってしまいます。中学校の頃に数学に苦手意識を持っていた人なら、言わずもがなです。入学までにきちんと克服しておかないと、高校1年生の時点で数学で詰み、たとえ文系を選択したとしても大幅に進路が狭まることになります。それを見越した上での、中学数学(特に関数・図形)を強化しておきなさいというメッセージなのでしょう。
最低5冊以上の本を読め
さらに校長先生のメッセージは続きます。
最後に、立高の課題図書(立高ホームページに掲載)の5冊から10冊ぐらいに挑戦しよう。
推薦入試合格から入学までの64日間で、課題図書を最低5冊は読めということです。64日間で5冊以上ということは、約12日で1冊を読み終わるペースで読んでいかなければいけません。しかも、その5冊は、内容の薄っぺらい小説の類いではなく、立川高校の課題図書の中からとなると、そりゃ、1日最低3時間以上の勉強も必要となってくるでしょう。
立高課題図書のラインナップを見てみると、なるほど良書ばかりです。その中でも特にオススメの本をピックアップしてみます。公立入試日が全国で1〜2位を争うほど早い神奈川県の中3生も、入学までの間に読んでおくことを強く強くお勧めします。国語の弱いうちの塾生は特にです。
- 下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) 内田樹著
- 教養としての大学受験国語 (ちくま新書) 石原千秋著
- 思考の整理学 (ちくま文庫) 外山滋比古著←激オススメ!
- ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書) 堤未果著←オススメ!
- 5分でたのしむ数学50話 エアハルトベーレンツ著
- 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) 福岡伸一著←激オススメ!
- ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)本川達雄著←オススメ!
- 幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ) 蓼沼宏一著
- 読書力 (岩波新書) 斎藤孝著←オススメ!
まとめ
そう言えば1年前もこんな記事を書きました。
参照:たかだか高校受験の合格発表で大騒ぎするんじゃない
もう一度言います。高校入試が終わったからと言って勉強自体が終わったと思っている人は、学歴まで終わってしまいます。高校入試はあくまでもスタートライン。希望の高校に合格しても不合格だったとしても、ようやく次の進路へのスタートラインに立っただけに過ぎません。もちろん、高校受験期のように生活の全てを勉強に捧げなさいと言っているのではありません。ただ、やはり勉強をゼロにしてしまってはいけないのです。
神奈川の中3生にとって、高校入学まであと約40日もの時間があります。夏休みと同じくらいの長さです。もちろん各学校から宿題が出されるでしょうが、それでも部活も何もない長い40日間を、学校の宿題をして終わりでは勿体なさすぎます。このようなゆったりとした貴重な時間に、普段はなかなかできない読書をしましょう。受験勉強期は傾向が違うからと飛ばしてきたような、全国入試の他の都道府県の数学の問題にチャレンジしましょう。難関私立入試の問題にじっくり向き合っても良いはずです。
本当の勝負は、これからです。