なぜ今、新聞なのか。この夏、小学生新聞を活用した家庭学習指導を実施します。

以前「なぜ新聞を読む子は賢い子が多いのか:小中学生こそ積極的に新聞を読め。」で新聞を読むことの重要性について書きました。実は6月30日に朝日新聞本社に出向いて、新聞を使った作文や学習の指導法についての指導者講習も受けてきました。2015年度夏期講習の概要でも少し触れましたが、この夏休みに小学部の夏期講習で小学生新聞を使用した自宅学習を取り入れます。

なぜ今、新聞なのか

子どもこそ、スローなメディアで思考力を鍛える

インターネットの発達で、子どもだけでなく大人でも新聞離れが進んでいるといいます。新聞の購読者数は1987年にピークを迎え、その後きれいな右肩下がりの直線で下がり続けています。わざわざお金を出して新聞を購読しなくても、インターネット等でいつでも無料で最新の情報が手に入る時代に、新聞を教材として使用することは、時代に逆行していると思われるかもしれません。新聞よりも、ネットの使い方をマスターさせ、ネットでの情報収集力を身につけさせるべきという意見もあることでしょう。

刻一刻と最新の情報が更新されるネットに比べて、新聞は確かにスローなメディアです。朝刊だけしかとっていない場合、一日一回、昨日のニュースがようやく朝に届けられます。私は、このような新聞が持つ「スロー性」にこそ、小学生が取組むべきメリットがあると考えています。

ネットメディアは、スピーディーである反面、一つひとつのニュースに対する掘り下げが非常に浅い場合がほとんどです。ネット上では大量の浅い情報が、刻一刻とどんどん提供されるので、情報の受取側に対して非常に高度な「情報リテラシー」が要求されます。情報リテラシーが十分に備わっていない人がネットメディアを利用すると、一つひとつの情報を深く掘り下げたり考察したりすることなく、受け取った情報をバカ正直に「消費」していくだけになってしまう危険性があります。

一方で、スローメディアの新聞の場合、情報を一つひとつじっくりと考察する時間の猶予が受取側に少なくとも1日は与えられるわけです。しかも、トピックと概要のみしか伝えられないネットメディアと違い、新聞はニュースの背景まで伝えてくれる。このような新聞の持つ性質から、情報リテラシーが十分ではない小学生が、世の中の動きを追いかけながら、情報の読み取り方を勉強したり、一つの情報に対してその背景をじっくり勉強したり、時には辞書を引っ張って新聞特有の語彙を調べるという勉強法を可能にしてくれるというわけです。

読み書きに必要な、「抽象語」を学べる

新聞を読むことの一番わかりやすい効果と言えば、時事問題に強くなるということ以上に、漢字の熟語や抽象的な語彙が身に付くということにあるでしょう。日常生活の中では、語彙はあるレベルまで達するとそれ以上になかなか増えていきません。特に抽象的な語彙などは、よほど親が日常会話の内容に幅を持たせる努力をしない限り、会話では身に付かないものです。たとえば、新聞でよく使われている「需要」と「供給」という言葉。これらが日常会話で飛び交っている家庭は、ほとんどないでしょう。

語彙力があるということは、日常会話では使われない「抽象語」が豊富に身に付いているということでもあります。読書も抽象語を身に付けるために有効な手段の一つですが、小学生が読むような文学的文章や小説などには、このような堅苦しい抽象語はあまり登場しません。しかし新聞だと、現実の社会で多く使われている抽象語や、論理的文章、事実を述べる文章でよく使われる言い回しや定型表現が多数登場します。こうした文章に日常的に触れることで、読み書きに必要な抽象語や表現の言い回しが身に付くのです。

もう一つ無視できないことは、高校入試や大学入試などの入試問題は、新聞記事のような実用日本語で書かれているという点です。小説やエッセイのような文学的文章で入試問題が書かれているわけではありません。そういう意味では、入試問題の文章と最も相性が良いのが、実は新聞記事ということになります。実際、入試問題には新聞記事から引用された問題が多く登場します。特に、特色検査ではその傾向が顕著です。新聞を継続して読んでいくことで、文字数の圧迫が強い入試問題を難なく読むことのできる読解力が最も手っ取り早く身に付くのです。

数字に強くなる

新聞記事には客観性を持たせるために、色々なデータ、つまり「数値」が登場します。割合を示す%、算数で習うほかに滅多に使う機会がない「億」や「兆」といった桁の多い数字、データの単位数の取扱(1000人単位なのか、万人単位なのか)など、新聞記事を読むということは、言い換えると「数値」が散りばめられた情報を読むということでもあります。

昨今の入試では、「情報活用力」が重視されるようになりました。ちなみに、第2回の特色検査対策講座のテーマはまさに「情報活用力」です。リード文を読みながら、与えられた数値を正確に読み取り、数値が示すことをリード文と照らし合わせながら分析するのが、「情報活用力」なる問題の典型的な例です。これは、まさに新聞記事で培える能力そのものだと言えます。入試問題のリード文にあたるのが記事の文章、データにあたるのが記事中の表。普段からこれらを目にしているのとしていないのでは、「情報活用力」に差が生まれるのは当然です。

新聞を使った自宅学習の仕方

ではここから、うちの塾の夏期講習でどのように新聞を使った学習をするのかを書いていきます。

気になったニュースのスクラップを作る

まずは毎日送られてくる新聞をザッと読み、「ニュースあれこれ」の中から気になったニュースを切り取り、専用のノートに貼り付けます。そして、その記事をノートに書写しながら、わからない言葉の意味を辞書で調べて書いておきます。これで、新聞記事の表現に慣れるとともに、語彙力を鍛えます。

書写したニュースの感想を書く

ニュースを書写と意味調べをしたあとは、そのニュースについての感想を40字程度でまとめます。感想を短くまとめるという手間を加えることで、書写したものが本当に読み込めているかどうかのチェックができます。また、たった40字でも毎回感想を書くことで、時事的なニュースに対する自分の意見を考えるキッカケにもなります。この記事でも書きましたが、人は一度も考えたことのないことや知らない事象に対してモノを書くことはできません。もちろん意見を持つことも、です。考えたことがあるから、知っているから意見を述べることができる。それが問題になっても、知っている分解きやすくなるのです。

おうちの人に一言もらう

最後は、そのノートをおうちの人に見せて、一言感想をもらいます。これによって、同じニュースを子どもと親とで共有することができ、そのニュースを題材とした親子の会話を通して、子どもはより見識を深めることができます。お母さんお父さんはこのニュースについてどう見ているのか、どういう意見を持っているのかを知ることで、同じ情報でも色々な見方ができることを学ぶことができるのです。

夏休み中、小4〜小6までの全ての小学生に対して、この一連の流れを最低週3日を義務付けてやらせようと思っています。

最後はニュース作文にチャレンジ!

この新聞を使った自宅学習の締めくくりとして、自分がスクラップしたニュースの中で最も印象に残った一つに対してもう少し掘り下げ、原稿用紙2〜3枚程度でニュース作文を書かせる予定です。ちょうど朝日新聞社のニュース作文コンクールが10月にあるので、それに応募してみようと考えています。

このときに、私が朝日新聞社の指導者講習で学んできた、上手な作文の書き方のコツを子どもたちにも伝えていきます。

是非この機会に夏期講習にご参加ください

新聞を使った家庭学習は、夏期講習を受講する小学生全て(小4は夏期講習はありませんが、新聞の家庭学習は行います)で実施します。もちろん、夏期講習を体験される小学生も対象です。ご興味ある方は、お問い合わせよりご連絡ください。この夏で、子どもの読み書きの力や語彙力、社会への関心も大きく変わります。