小田原2015年度特色検査研究:分析と対策法をまとめてみた

2015年4月28日

3回目の特色検査研究は、地元小田原高校です。うちの塾生の1人が今年小田原高校に主席合格を果たしましたが、それでも特色検査の得点は7割ほどでした。後ほど詳しく書きますが、小田原高校の特色検査は、情報処理・知識運用・発想力などの多様な力が求められるので、他の高校の特色検査のようにトップ層でもなかなか8割9割を取るのは難しい内容になっています。

では、小田原高校の特色検査の詳しい分析&対策法を書いていきましょう。

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問題 / 模範解答

問題構成

小田原高校の特色検査は、毎年一貫したテーマが存在するという、非常に工夫が凝らされている試験になっています。2015年度のテーマは「魚」でした。大問は大きく分けて問1〜問3の3問構成なのですが、問2でⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳとに別れており、それぞれに関連性のないことから、大問6問での構成と言った方が良いかもしれません。大問6問に対して設問が合計20問あり、平塚江南の21問に続く問題量の多さとなっています。ただし、実際の小問数はもっと多く、解答しなければならない問題は27問あり、実質上の県下最多の問題数と言えます。

特定の科目にそれほど偏りはありませんが、2015年度は実質27問の小問に対して、文系が17問・理系が10問と、やや文系が多めです。うちの卒塾生のうち、もう一人小田原に合格した生徒はめちゃくちゃ理系が苦手な子だったのですが、文系でしっかりと点数が取れたので、大きく失点することはありませんでした(6割程度の得点でした)。

平塚江南は問題数のわりに時間的には厳しくないということを平塚江南2015年度特色検査研究の記事で書きましたが、小田原は話は違います。大問が6問と多く、そのうち5問はそれぞれ約1ページ程のリード文をしっかりと読み込まないと解答できない設問設計になっているので、どうしても時間がかかります。時間内に全て解くのは厳しいでしょう。それゆえ主席合格者でも特色検査の得点が7割になってしまうのだと思います。

では、それぞれの設問の分析を見てきましょう。

大問1:小田高が大好きな古文英文融合問題

大問1は、古文をベースとしたところに英語が組み込まれた、古文英文融合問題です。2013年度にも古文と英文の融合問題が出題されていて、小田高はこのパターンが大好きなようです。2014年度は古文と英文は別々に出題されていましたが、いずれにせよ3年連続古文が出題されています。

小田高の特色検査の古文を解くのには、基本的に特別な古文の知識などを必要としません。通常の共通入試の国語の勉強で、古文の助動詞の意味や活用等を習うと思いますが、その知識だけで十分です。ただし、ザッと流し読みしただけでは解けないような問題が並びます。きちんとリード文を読んで内容を掴んでいるかどうか、それを英語に変換したり、部分的に空欄になっている語句を推測できるかどうかが問われている。つまり、古文という素材を利用した、情報処理型の問題であると言えます。

ちなみに大問1には社会の知識が必要な問題も含まれている。また、高度な古文や英語の知識は要らないけれど、読解できるレベルの最低限の知識は必要になる。つまり、小田原高校の大問1は、知識運用と情報処理の2つの能力が必要とされる設問設計になっています。

大問2:バラエティ豊かな問題で必要とされるいくつもの能力

大問2中には、それぞれ独立した形で問題Ⅰ〜問題Ⅳが含まれています。問題Ⅰは英文読解、問題Ⅱは数学(算数?)と推理を交えた問題、問題Ⅲは社会と推理推論を交えた問題、問題Ⅳは数学の図形問題と、本当にバラエティ豊かです。このバラエティ豊かな大問2を解くには、「知識運用」「情報処理」「推理推論」の3つの能力が必要になります。

問題Ⅰ:「知識運用」「推理推論」が必要な英文読解

問題Ⅰの英文読解の最初の2問は、ただ英文がしっかりと読み取れているかどうかを問う内容で、完璧に「知識運用型」の問題です。しかし次の3問目に、英文の内容を理解した上で、空欄に適切な文を作文する「推理推論型」の問題が登場します。

問題Ⅱ:「情報処理」「推理推論」の力が求められる、中高一貫校型の算数

問題Ⅱの理数問題は、「情報処理」と「推理推論」の組み合わせです。この問題Ⅱは、公立中高一貫校の適性検査に非常に似た作りになっていて、問題を解くのに必要なの知識・解法は、小学校で習う割合と単位くらいでしょう。あとは、リード文に書かれている内容をもとに、設問の数字をいかに適切に組み合せて答えを導けるかどうか、最初の2問はそのような「情報処理力」を試されています。ところが、3問目は大きく問題形態が変わり、問われている事象に対しての自分の考えを論理的に述べる「推論型」の問題です。

「知識運用」「推理推論」の2つの力が融合されている社会

問題Ⅲの社会の問題は、「知識運用」と「推理推論」の組み合わせです。円安円高と輸入量輸出量の関係を知っていれば解ける問題が1問、あと3問は「推理推論」が試されています。たとえば、問題Ⅲの(4)は「水産業者が森林保全を積極的に行う理由を、森の果たす役割を具体的に挙げながら説明せよ」とあります。これは、リード文のどこにもヒントが書かれてありません。自分の持っている知識を活用しながら、その理由を推理し論理的に述べなければいけないのです。この問題については、「知識運用」と「推理推論」の2つが融合されている、非常に高度な問題だと言えるでしょう。

「知識運用」「情報処理」「推理推論」全ての力が必要な数学図形

問題Ⅳは、ハニカム構造という正六角形を並べた図形の問題です。数学の三平方の定理の知識があれば解けますが、三平方の定理で正八角形の面積の問題を求めたことのない人にとってはちょっとキツいかもしれません(ちなみに学校では間違いなく習いません)。ただし、塾に通っていて正八角形の面積を求める問題まで解けたとしても、「ミツバチの巣が正六角形であるメリットを説明せよ」という問題を解くには、別の能力を必要とします。これは最初の正三角形・正六角形・正八角形の面積と周りの長さを求める問題で出た答えを、いかに活用しながら推測するか、つまり「情報処理」と「推理推論」の2つの力が問われているのです。

大問3:拍子抜けするほど簡単な自由英作文

大問3は、オマケで付けたのかと思うくらいの、拍子抜けするくらい簡単な自由英作文でした。「小田原高校に入学したら、何がしたいのかをbecauseを含めた15語以上の英文一文で書け」という、小田高受験生レベルであれば、できて当然のサービス問題が最後に登場するのです。

簡単な問題を最後に持ってくるというところが、非常にイヤラシいですね。冒頭でも述べたように、小田高の特色検査は時間的に非常に厳しく、制限時間内に余裕で最後まで解き終わるという人はほとんどいないでしょう。以前書いた「特色検査で絶対にやってはいけない3つの解き方」の記事にも書いたように、小田原高校の特色検査は、バカ正直に最初の問題から順番に解いていくのではなく、自分ができそうな問題や得意分野の問題をまず最初に探し、それらから順番に片付けていくという「要領の良さ」も求められているのです。

対策法:要領の良さと問題選定眼を養え

以上のように、非常にたくさんの力が必要とされるのが小田原高校の特色検査。まずは「知識運用型」の問題で落とさないように、学力検査の5教科で8割以上取れるくらいの基本的な知識を身に付けることが最も大切です。その次に、小田原高校だけでなく他の高校の過去問や中高一貫の適性検査を使いながら、「情報処理型」の問題を練習していく。最後に余裕があれば「推論型」の対策もするべきでしょうが、そこまで余裕のある受験生はほとんどいないでしょう。

ただ、最初にも述べたように、小田原高校の特色検査は主席合格でも7割程度です。合格者平均だと5割くらい、もしかしたら5割を下回るくらいかもしれません。なので、全ての問題を解こうとせず、自分の勝負ポイントとなる科目、能力の問題を上手く選定できる「問題選定眼」を身に付け、50分でいかにたくさんの問題が解けるかを練習することが最も重要です。

問題選定眼や要領の良さを身に付けるためには、まずはたくさんの特色検査(模試でも可)を解きながら、自分の得意不得意を知ることから始めましょう。その上で、不得意なものを得意なものに昇華させるにはどうすればいいかを考えましょう。もし、対策可能であれば、少しでも多く得意分野を増やすこと。対策してもなかなか身につかないのであれば、潔く切り捨て、他の分野・もしくは能力を磨いていく方が得策です。