高校受験まで残り4ヶ月!「子どもを潰す親」にならないために。

気が付けばもう10月も半ばを過ぎ、2015年も残すところ2ヶ月半、神奈川県の公立入試まであと4ヶ月になってしまいました。塾人の私は、そろそろ冬期講習の予定も立てなければいけないし、その後すぐにやってくる受験シーズンの予定も考え始める時期です。こうやって先のことばかり考えているせいか、時間の流れが恐ろしいほど早く感じます。「一年があっという間に感じるのは歳を取った証拠」と言いますが、本当にその通りだなと思います。

この時期になると、我々塾講師だけでなく、受験生の保護者の方も焦りや不安が日に日に増していくことでしょう。今日は、高校受験生をお持ちの保護者の方に対して、これから気をつけていただきたいことを書いてみます。

大人の焦りを受験生に押し付けない

子どもと大人では時間の流れ方が違う

f7e57e8ffa5a9ac826d02623a16b2138_sこの時期、親や塾講師など周りの大人が焦り出す一方で、当の受験生である中3生たちにとっては、受験なんてまだまだ先の話だと感じているのか、どんなに志望校まで程遠い成績であっても現段階ではのんびりとしています。大人からすると、「いつまでのんびりしているんだコイツは!もうすぐ受験だぞ」と小言の一言でも言いたくなるのですが、大人とは全く異なる時間の感覚を持つ受験生にとっては、最近夏が終わったばかりでクリスマスも正月もまだまだ先の話なのです。ましてや、そのまた先の来年の2月にやってくる入試なんて「遠い先の未来」という認識でしかありません。

子どもの時間は、大人とは比べようがないくらいゆっくりしています。基本的に子どもは今を考えて生きていて、大人は未来を考えて生きているからです。受験生の子どもがいる保護者の方は、この時間感覚のズレを理解する必要があります。親ばかり焦ってしまい、そのイライラや不安を子どもにぶつけてしまっても、そもそも時間の感覚がずれている両者が分かり合えることはありません。むしろ、親子関係に軋轢を生むだけで、お互いに良いことは全くありません。

子どもと大人は成長スピードが違う

すでに成長期をとっくの昔の終えてしまった大人は、去年の自分と今年の自分とを比べてみてもほとんど違いは感じられないでしょう。それゆえ、時間があと僅かしかないとなれば大人は必要以上に焦ってしまうのです。

しかし子どもは違います。中学2年生と3年生を比べてみると、肉体的にはもちろん、精神的にも学力的にもまるで別人です。それだけ、子どもは1年という短い期間にもの凄いスピードで成長します。神奈川県の公立入試まであと約4ヶ月ですが、4ヶ月というと1年の3分の1です。それだけの期間があれば、まだまだ成長していきます。

子どもが本来持つ成長を信じましょう。中学3年生は学力的にも一番の伸び盛りです。本気になった子どもは、たった僅かな時間でも驚くほど伸びていきます。

「勉強しなさい」と叫び続けない

親からの「勉強しなさい」は受験生に無意味

この時期によく保護者の方から質問されるのが、「全く勉強しないのですが、『勉強しなさい』と言った方がいいのでしょうか」という類いのものです。それぞれのご家庭の方針もあるでしょうが、親が「勉強しなさい」と言って素直に「ハイ」と勉強する子どもであれば、そもそもそのような質問を塾の先生にする事態にはならないでしょう。

私個人の意見としては、中学3年生の子どもに親が放つ「勉強しなさい」という言葉ほど無意味なものはないと思います。お互いにイライラするだけです。そもそもの話にはなりますが、「勉強しなさい」という言葉は、実は子どものためを思った言葉ではなく、子どもが勉強に一生懸命になっている姿を見ることによって親自身の不安を解消したいがために出てくる言葉だと思っています。中学3年生は人生の中で最も多感な時期です。親の「勉強しなさい」の言葉の裏にある、そのような感情に気が付かないはずがありません。自分のために発しているのではない「勉強しなさい」という言葉に対して、嫌悪感すら覚える子もいるでしょう。

「勉強しなさい」という言葉を使うのは、塾の先生や学校の先生など、直接子どもに勉強を教える人に任せておきましょう。親が言うよりもその方が有効です。私なんて受験生に四六時中「勉強しろ勉強しろ」と言っています。そこで家でも「勉強しろ」と追い打ちをかけられたら、子どもにとってたまったもんじゃありません。

子どもを変えた、「勉強しないなら受験するな」という言葉

では、親はどんな言葉をかけてあげればよいか。私が毎年思い出すのは、この塾を立ち上げて初年度、1期生のあるお母さんが12月の3者面談で涙ながらに子どもに対して言った言葉です。

「勉強したくないならしなくてもいい。高校は義務教育じゃないんだから、勉強したくないのなら働きなさい。お母さんはあなたに高校に行って欲しいとは頼んでいない。あなたが高校に行きたいと言ったからこうやって塾にも通わせている。でも、何の努力もせず適当にしか勉強しないで、とりあえず受かったところに行く、公立が落ちても私立があるからいいやっていう考えだけは絶対に許さない。でも、あなたが一生懸命努力した結果なら、たとえどこに行くことになってもお金は出します。」

つまり、高校に行くのは自分が決めたことなんだから、勉強しないなら受験するな、ということです。私は冗談か脅しかと思って聞いていましたが、このお母さんは本気でした。

「もし、第一志望の公立に落ちたら、働きます。」

お母さんの涙ながらの訴えが心に響いたのか、彼も泣きながら私にもお母さんにもそう宣言し、この3者面談をキッカケに、この子はまるで別人のように勉強に精を出すようになり、無事第一志望の公立に合格していきました。

何もこのお母さんのように「勉強しないなら働け」と、世の全ての受験生の保護者の方に言って欲しいのではありません。親自身の不安を解消させるための「勉強しなさい」という言葉よりも、「なぜ勉強するのか」「なぜ受験するのか」を子どもに能動的に考えさせる言葉の方が何倍も効果があるのです。

模試の点数で親が一喜一憂しない

もう一つ、注意していただきたいことは、模試の点数で親がいちいち一喜一憂しないで欲しいということです。模試の点数が悪くて怒り出す保護者の方もいらっしゃるようですが、親が怒ることで成績が改善されるなら誰も苦労はしません。模試の点数が伸び悩んで一番焦っているのは、親ではなくて子ども自身です。どんなに普段はひょうひょうとした態度を取っている子でも、やはり入試間近になると、「どうしよう」と内心は不安でいっぱいなのです。

ちなみに、普段は生徒にとって鬼のような存在である私ですら、受験期の模試の点数については何も文句は言いません。その代わり、悪かったテストの分析と改善点の把握、これからの勉強プランの計画修正についてはしつこくしつこく求めます。怒ることで改善できることなら、子どもに嫌われようといくらでも怒る。でも、怒っても改善できないことなら、冷静に改善点を模索する。塾講師だけでなく受験生に関わる大人の鉄則です。

まとめ

このブログでも、保護者対象の説明会でも同じことを繰り返していますが、高校受験生に対して、親ができることというのは実はたかがしれています。高校受験は、人生で最も多感な15歳が迎える試練です。いつまでも小さい子どものように、勉強しない子どもに「勉強しろ」と言い続けるのも、親が勝手に焦るのも、成績についていちいち小言を言うのも違うと思います。

一番は、やはり自分の子どもを信じてやるということ。過度ではなく、心地よい程度の期待をかけてあげるということ。子ども自身に考えさせるということではないでしょうか。

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