神奈川県公立入試2019特色検査全問題分析

2019年2月15日(金)に、神奈川県公立入試特色検査が行われました。

これまでの特色検査を巡る経緯

これまでもブログで書いてきたように、今年の特色検査は2018年度までの特色検査と大きく変わりました。2018年度までは各高校が独自に特色検査を作成していましたが、今年からは県教委が一括して問題を作成。特色検査実施校全校とも共通の「共通問題」と、県教委が作成した問題から各高校が選択する「選択問題」で、特色検査が作成されることになりました。

参照:新学力向上進学重点校4校の特色検査が2019年から一部共通化!その影響を考えてみた。

全校共通問題

問1:英語読解問題

全校共通問題の問1は、2018年度までの厚木・柏陽で毎年出題されていたような英語読解問題でした。一部、各言語の母語話者数と話されている国・地域の数の資料を読み取って計算する問題もありましたが、ほとんど教科横断的な要素はなく、共通問題の長文読解をやや難しくしたレベルの単純な英語の読解です。多くの特色検査受験生にとっては、この問1は易しく感じたでしょう。

問1は各5点×5問=25点満点分の配点があります。ここで25点満点をしっかりと点できると、だいぶ楽になりますね。

問2:文章読解をベースにした教科横断問題

問2は、2018年度までの平塚江南や横浜翠嵐・柏陽で出題されていたような、国語の文章読解をベースにした教科横断問題でした。3つの文章を読んで、文章の内容理解に対する問題や、理科、数学の問題に発展していく、まさに典型的な教科横断型の問題です。

この問2の共通問題も決して難しくはありません。2018年度までの平塚江南以上柏陽未満のレベルで、特色検査としては易しめですね。

ちなみに、この問2で出題された文章がめちゃくちゃ素敵です。学ぶことの本当の意味を、真摯に受験生に問いかけます。問題の内容はさておいて、この文章を県教委が意図的にチョイスしたのであればセンス良すぎです。

問2は各5点×5問=25点満点分の配点がありました。つまり、問1と問2の「全校共通問題」で50点分、残り50点分が「選択問題」という出題となっていたということです。

選択問題

ここからは選択問題です。うちの塾生が受験した特色検査校は、横浜翠嵐、厚木、平塚江南でした。この3校のうち、横浜翠嵐と厚木の選択問題が全く同じ、つまり共通問題合わせて全てがまったく同じ特色検査ということでした。

他にも現時点で入ってきている情報によると、湘南・平塚江南・希望ヶ丘でまったく同じ選択問題が出題されていたそうです。また柏陽は、横浜翠嵐・厚木の農産物貿易の問題と、湘南・平塚江南・希望ヶ丘の音楽の問題が出題されていたとのこと。他の問題が出題されているとの情報が入ってきていないので、選択問題は4つ用意されていたと推測できます。

保健体育を題材にしたプログラミング的思考力問題

横浜翠嵐・厚木で出題されていた問題です。保健体育に関するの知識問題、治験に対する仮定検証、理解フローチャートを使ったプログラミング的な思考判断が要求される問題の4題でした。

この問題の目玉はプログラミング的思考力問題ですね。2020年度より必修化されるプログラミング教育に向けての準備なのでしょう。ただ、プログラミングを勉強していなくても論理的に考えると問題なく解ける問題で、共通問題同様難易度は低めです。

農産物の貿易を題材にした資料読み取り問題

横浜翠嵐・厚木・柏陽で出題されていた問題です。世界のトウモロコシの生産量と輸出量・輸入量の資料を正確に読み取る必要がある、社会と数学横断的な内容でした。このようなグラフの読み取り問題は、これまでも希望ヶ丘や柏陽・湘南などでもよく出題されてきた特色検査の典型的問題で、目新しくはありません。計算はやや面倒臭いですが、その計算力とグラフを読み取る力があれば、問題なく解けたはずです。

パズル的小問集合

湘南・平塚江南・希望ヶ丘で出題されていた問題です。かつての希望ヶ丘や柏陽・湘南でよく出題されていたような立体の問題(展開図)と、希望ヶ丘が好きそうなパズル問題2つ、これまた希望ヶ丘が好きそうな論理パズル的問題が1つの、計4問からなる小問集合でした。4つの問題に関連性は全くなく、1つ1つの難易度は低めです。2018年度までの希望ヶ丘と同じくらいの難易度でした。

音楽を題材とした教科横断問題

湘南・平塚江南・希望ヶ丘・柏陽で出題されていた問題です。いかにも湘南が好みそうな、音楽を題材とした問題で、音符や音階に対する基本的な知識がないと解けない問題もありました。特色検査は「5教科横断」ではなく、「9教科横断」であるということのメッセージなのでしょう。

正確に言うと、音楽そのものではなく音の高さと振動数を題材にした問題で、音楽と言うよりも数学の要素が濃い問題です。H28年度の柏陽でも同じような題材がテーマの英語読解問題が出題されていましたね。

4つの選択問題のうち、確実にこの問題が最も難しかったと思います。リード文からメロディーロードの仕組みを読み取り理解し、速さや溝の間隔などから振動数を計算して求めていく手数の多さは、高度な読解量に加え、情報処理や数学の力が要求されるものでした(特にエ)。

まとめ

以上を踏まえると、横浜翠嵐や湘南は、特色検査の平均点がかなり上がることになるでしょう。一方で、平塚江南や希望ヶ丘などでは、これまでよりもしかすると平均点が下がることになるかもしれません。

2019年度の特色検査は難易度よりも、英語・学ぶことの意味・プログラミング的思考・9教科横断と、県教委が目指す教育の方向性がぎゅっと凝縮された試験内容だったと感じました。

今年の特色を踏まえて、2020年度以降の特色対策などについては、また落ち着いた頃に書いていきます。

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