神奈川県公立高校入試2019問題分析《数学》

2019年2月14日(木)に行われた神奈川県公立入試の問題分析の数学編です。

国語はすばる進学セミナーの中本先生の記事「問題分析 神奈川県公立高校入試2019 国語」をどうぞ。

2018年度からの変更点

選択と記述問題の併用式

2019年度も2018年度入試を踏襲し、回答方式はマークシートと記述の併用式でした。

易しめの問題は4択もしくは6択の選択問題、難易度が高めの問題は勘では当たらないような完全記述式、というのも2018年度と変わらずです。この併用式によって、中堅下位層にとっては比較的点数がとりやすく、上位層にとっては実力がきちんと反映される内容のテストになっています。

大問の内容は大きく変わらず問題数が増加

2019年度の大問とその内容も、2018年度から大きく変更はありません。

<2019年度大問>
問1:計算(5問)
問2:小問集合(6問)
問3:小問集合(3問
問4:関数(3問)
問5:確率(2問)
問6:空間図形(3問)
問7:平面図形(3問

赤字で表しているものが2018年度からの変更点です。2019年度の数学は2018年度と比べると、問3で1問、問7で1問と、問題が2問増加しました。増加したものは2問とも図形で記述形式の問題です。つまり難易度が高めの記述形式の問題が2問追加されたということになり、2018年度と比べると難化したと言えます。

大問分析

問1計算・問2小問集合

問1の計算問題、問2の小問集合は全て4択の選択問題です。問1・問2については、2018年度と各小問の出題分野までピタリと一致しています。

問2の(オ)は平方根のやや難しめ問題として定着しましたが、2019年度は基本的な平方根の大小で簡単になりました。また、(カ)は確率・統計の小問ですが、今年は中3の標本調査が出題されましたね。神奈川の入試は2月14日と全国的にも早期に実施されるせいか、中3の最後にやる標本調査は過去15年振り返っても出題されていなかったのでやや驚きましたが、珍しいだけで難しはありません。

問1・問2の難易度は2018年よりも解きやすくなりました。

問3小問集合

問3の小問集合は2018年度より1問増え、3問になりました。全て記述方式で、難易度が高めです。

(ア)は円周角の問題。「有効な補助線(OからC)を引く」という手数を考えると、やや解き難い問題かもしれません。

(イ)はここ最近の神奈川で定番になった難易度が高い平面図形の面積比の問題。これも(ア)同様、中点連結定理を見抜いた上で「有効な補助線(DからE)」を引く必要があります。さらに、Tの面積が四角形ということで、これも簡単には求められません。以上のことから正答率は低めでしょう。

(ウ)は意外にも中1の方程式の定番の文章題です。定番中の定番で基礎的な問題なのですが、大多数の人が「子どもの人数」をxとおいて解くのに対し、これは「みかんの数」をxとするとの指定がある。そのことにより、若干解き難かったかもしれません。

問4関数

問4はいつもの関数ですが、(イ)の直線の式を求める問題で、正解までたどり着くための手数が増えました。

関数の(ウ)は2016年から難度が高めの問題が続いていますが、今年もそれは変わりません。ただ、今年は四角形ADBFの面積が簡単に求められるので、△BDGの等積変形が利用できれば簡単だったかな。

問4の難易度は例年並みか、(イ)の手数が増えた分を鑑みてやや難しくなったか、というところです。

問5確率・問6空間

問5はいつも通り、さいころ2個の確率です。ただ、2019年度確率はルール設定が複雑。複数のルールを正確に把握する理解力がいつも以上に求められます。焦っていたら解けないでしょうね。ルールを理解すれば、問題自体は簡単です。

問6の空間図形は(ア)(イ)は例年通り易しくて、(ウ)も例年通り難しいです。展開図を正確に作図し、かつ有効な補助線を引き、かつ相似を見抜き、かつケタの多い数字の計算に耐える計算力が必要です。

問5のルール理解が複雑になった分、やや難化したと言えるかな。

問7平面図形

問7は2018年度からガラリと変わりましたね。まず定番の証明ですが、穴埋め選択形式になりめっちゃ簡単になりました。一方、小問が1つ追加され、その1つの(イ)はやや解き難い二等辺三角形になるための条件を問う問題。あまり解いたことのないタイプの問題で、面食らう人が多かったでしょう。

(ウ)はそれほど難しくはありませんが、このようなタイプの平面図形の問題は過去神奈川県で出題されてこなかったので、練習不足ゆえに難しく感じた人は多かったと思います。

まとめ

まとめると、2019年度はまず単純に難度の高めの記述式問題が2問追加されたこと、確率のルールが複雑であったこと、証明の後の問題が神奈川では珍しいタイプの問題だったことを踏まえると、2018年度と比べると難化したと言えると思います。

記述式問題で勝負しなければいけない上位高校受験生は、特に難しく感じたでしょうね。上位層の数学の平均点は下がるかもしれません。ただ、記述式問題では勝負しない、選択式問題での得点で勝負する中堅層以下の高校では、数学の平均点にそれほど影響はないかと予想します。

最後に、中2生以下の未来の受験生へ

最後に、中2生以下のこれから受験を迎える未来の受験生に数学のアドバイスをしておきます。

前途の通り、神奈川の数学は「選択式問題」と「記述式問題」に分けています。そして上位層は、難度が高く、勘では当たらない「記述式問題」でどれだけ得点できるかが勝負になります。

2019年度の記述式問題7問のうち、6問は多くは中3の夏以降に習う分野からの出題です。さらに言えば、7問中5問が図形が絡む問題です。つまり数学で高得点を狙うには、中3の夏以降に習う分野、特に図形分野をどれだけ鍛えておくかが勝負になります。

図形分野は中3の相似・三平方の定理まで勉強しないと総合的に鍛えられないので、大切なことはとにかく早期に中3の全範囲を履修し終えることです。学校のペースで勉強していると、図形分野を習い終えるのは1月頃で、まずアウトです。

少なくとも秋頃前には中3の相似三平方までを勉強し、秋以降からは難度の高めの図形問題対策を十分やること。これが、トップ層のための神奈川数学の攻略法です。