【学校訪問レポート】この4年間で秦野高校はこう変化してきた。

秋です。学校見学レポートの季節です。
今年の学校見学も、秦野高校からのスタートです。

(過去のレポートもどうぞ)
進学校?部活校?秦野高校の現実(2014年)
大学進学実績で大躍進!変わりつつある秦野高校の教育改革の秘訣。(2015年)
これが秦野高校の「学校力」!創立90年を迎えた秦高がとにかく熱い!(2016年)

この4年で、秦野は確実に変わった

4年前に神戸校長が秦野の校長に着任されてからというもの、毎年秦野の学校訪問を続け、今年で4回目になる。この4年間で秦野高校は明らかに変わった。1年にたった1度しか訪れていない私でも、その変化が肌で感じるほどの変わり様である。

「10年前20年前の秦野と今の秦野とは確実に違います」

10年前は教諭として秦野高校で教鞭をとられていた現副校長の久保寺先生も、こう力説された。

「授業を受ける生徒の背中が、ピンと伸びているんです。10年前はこうじゃなかった。」

ハード面での変化

この4年間、神戸校長の元、いろいろな仕掛けや仕組みづくりが行われてきた。目に見える部分でいえば、ICT環境の整備だ。あの内田洋行が手掛けた最新式のICT利用教室をはじめ、88台ものタブレット端末、校内のWifi環境の整備など、県内公立高校でこれほどのICT環境が充実しているのも秦野高校くらいだろう。

その他にも、地域のトップ校にもかかわらず、それまでは国際交流を全くしてこなかったことを問題視し、H26年にオーストラリアにあるカジョリーナ・シニアカレッジと姉妹校提携を結んだ。それ以来順調に交流は進み、今年は7月下旬にカジョリーナから生徒18名を迎え入れ、さらに8月の夏休みの期間に秦野の生徒28名もカジョリーナを訪問しているとのこと。ちなみに、この28名のうちの2名はうちの塾の卒業生だ。

姉妹校提携を結んでいる公立高校は他にもあるが、人数制限や成績による選抜があったりなど、希望者全員が参加できる制度を整えている高校は実は多くはない。そんな中、希望者する生徒全員にちゃんと門戸を広げているというのも、なんとも秦野らしい。

「やる気のある子は全員連れて行ってあげますよ。そのために姉妹校を結んだんです。そんなの当たり前じゃないですか。」と神戸校長はあっけらかんと言う。

いや、当たり前なんかじゃなかった。少なくとも以前の秦野は。言い方は悪いが、ただの旧態依然とした田舎のトップ校に過ぎず、国際色もICTも何もなかった。部活と学校の授業だけが全ての、視野の狭い高校だった。

ソフト面での変化

目に見えないソフト面でも、校長はこの4年間で様々なことを仕掛けてきた。

生徒達だけでなく教職員にも「視野を広げよう」と訴え、大学進学だけでなくその先を見据えたキャリア教育、校長独自の全国ネットワークを生かした教職員研修会を実施してきた。

「視野を広げると面白い世界が見える。面白いと思えば人は動く。生徒や教職員の心に火を付けるんです。」
この4年間で神戸校長からこの言葉を何度聞いたことか分からない。

とにかく、時には暑苦しいとも思えるほどひたすら熱い校長だった。手を変え品を変え生徒や教職員の心を火を灯そうと訴え続ける。たとえ、失敗しても何度でも何度でも何度でも。

ただ熱いだけでなく、行動力もある。「生徒のためならなんでもやる」と何度も繰り返す言葉に嘘はなく、自ら率先してとにかく動くその熱さと行動力は、まず周りの教職員の心を焚き付ける。そして校長の想いに触発された若い教職員が中心となって、生徒の指導にあたる。その想いが生徒たちに通じ生徒の志も高くなるという、校長を出発点とした熱い気持ちのスパイラルが、この4年で秦野高校が変化した一番の要因だと感じる。

合格実績での変化

次に、この4年間での合格実績をまとめてみよう。
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[tablehead title=’,H28,H27,H26,H25′ class=”]
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22
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14
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29
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15
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17
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26
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34
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23
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122
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209[/tablecell]
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116[/tablecell]
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H26年に大躍進を遂げたが、H27年、H28年はあまり変化なし。ちなみにH28年の国公立22人の中には、現役で東大合格1人を含む。

2014年、神戸校長が就任1年目の時に訪問した際に、「数年かけて秦野高校を国公立大に40人が進学するような高校にする」という数値目標があったが、結果22人と4年で40人には及ばなかった。

公立トップ校は基本的に国公立大の進学を一般受験で目指す傾向にある。ただ、今現在の秦野はと言うと、厚木や小田原等のような公立トップ校と肩を並べるレベルとは言い難い。もちろん中には国公立大を目指すレベルの秦高生もいるだろうが、全員が全員国公立を目指す高校ではない。

秦野は今も「国公立を目指す学校」という位置付けなのだろうか。

「生徒には、教育的観点から国公立大受験を勧めているが、家庭や個別の事情もあるので、個々に対応しているのが現状です。推薦が悪いとは思わないが、生徒達には簡単に推薦に流れるのではなく、“頑張り”が効く人間になって欲しいと思っています。一生懸命頑張って、何かを勝ち取ったという経験をしてもらいたい。」と校長先生はおっしゃった。

ただ、カリキュラムは高2まで全員に数ⅡBまで課していて、国公立大受験を意識したものにはなっている。これについては、

「受験の実績だけ追っているのではありません。もちろん実績も大切ですが、それよりも、きちんと全ての科目の基礎学力を身に付けることも教育的観点から大切なことです。」とのこと。

授業の変化

秦野高校には若手でやる気のある先生方が多い。そして今の自由に物が言える雰囲気のもと、その若手の先生方が中心になって積極的に教務に取り組んでいるとのこと。

そのため、熱心な先生も多く、とりわけ数学に関しては、できるまで追試追試で追いかける力の入れよう。早朝や放課後、土曜日を利用しての個別補習も積極的だという。やる気のある子はどんどん伸ばしてくれる環境だろう。

週末課題も多く、勉強に関しては結構厳しい高校の部類に入るだろう。

まとめ

残念なことに、神戸校長・久保寺副校長のお二人とも、今年度いっぱいで退職される。神戸校長が秦野高校に就任してからこの4年間で、秦野は、だいぶクセの強い高校に変化した。クセの強い、生徒や教職員がイキイキとして、そして地域に愛される高校に変化した。「なんでもやってみよう」という精神が溢れる高校に変化した。

私の懸念は、お二人の退職によって、この高校の良い雰囲気が途絶えてしまうことだ。

「それは絶対にあり得ません。私たちだけじゃなくて、教職員も、同窓会も、生徒達も、地域も、みんな10年前の秦野高校では考えられないくらいイキイキとしている。この雰囲気が途絶えることは、ありません。」

と、校長先生はおっしゃった。久保寺副校長も、横で深くうなずいていらっしゃった。

毎年色々な公立高校を見ていて思うことがある。良い公立高校って何だろうと。面倒見の良さや施設の充実など、公立が私立に勝てる訳がない。大学進学に向けての進路指導や受験指導を求めるのなら、それこそ学校なんていらない。1日中予備校に籠もった方がよっぽど効率的である。

じゃあ良い公立高校って何だろう。

その答えを、私はこの4年間で秦野高校に見た気がした。「雰囲気」だ。そこに集う生徒が、教職員がイキイキとしているかどうか。いろんなことにチャレンジしてみようとする精神と、それを寛容に受け入れる土壌があるかどうか。

それらがある高校には、「未来」が見える。進学先の偏差値だけで決して決まらない未来が。高校が地域と共にこれからも発展していく未来が。

秦野高校、間違いなく良い公立高校です。

神戸校長・久保寺副校長、4年間ありがとうございました。来年以降、お二人がいなくなってからも、変わらず毎年訪問しようと思います。