急に寒くなってきたと思ったら、もう10月も中旬になってしまっていたのですね。今日は、読書の秋だからこそ、中高生に読んでもらいたい1冊を紹介します。どれだけ勉強嫌いの人も、本を読み終わった後に不思議と「勉強したい!」という気持ちにさせられてしまう良本です。
喜多川泰さんの「手紙屋 蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜」。
大学受験を控えた女子高生の和花が主人公。どこにでもいる、普通の甘ったれた高3生の女の子です。高校時代はバンドに明け暮れ、ロクに勉強もせずに高校3年生になってしまいました。将来について考えるものの、全然ピンと来ない。「とりあえず大学行った方が遊べるしいいかな」と思うものの、勉強なんてしたくない。「高校出たらすぐに就職したら、自分の自由になるお金がもらえて、好き勝手に洋服やバンドに使う楽器などを買ったりできる」と考えるものの、就職に踏み切る勇気もない。
本当に、イライラするくらい甘ったれですね。でも、こういう高校生って普通にどこにでもいるんだと思う。実際、私が高校生の時もこの主人公と同じように思っていたくらいですから。
「そもそもなんで勉強するんだろう」
「大学受験のために勉強するのなら、大学受験をしない人は勉強しなくていいのか」
そんな誰もが抱くような悩みを抱えた和花が、あるキッカケで「手紙屋」さんと文通をします。文通を開始して早々に、手紙屋さんから「勉強禁止令」を出されてしまった和花。高3の夏休みに「勉強禁止」って、なかなか勇気がいります(笑)。手紙屋さんは、和花に勉強禁止令を出している間、十通の手紙を通して、何のために勉強をするのか、勉強の本当の意味を伝えていくというストーリーです。
「手紙屋 蛍雪編」からの名言いろいろ
私は、勉強は一つの道具にすぎないと思っています。ですから、「やらないよりは、やったほうがいいだろう」という考え方は間違っていると思うんです。むしろ、変な使い方しかできないのなら、勉強なんて道具は捨ててしまった方がいい。
『勉強という道具は、自分をピカピカに磨いて、昨日とは違う自分になるためにある』
勉強するということを別の言葉で説明してみると、こうなります。
『今までこの地球上に存在した人々が経験し、発見しては次の世代へと伝えてきたすばらしい知識や知恵を、今度は自分が受け継ぎ、自分のものとすること』
いいですか。自分が生きる意味は、自分でつくっていけるものです。生まれながらに与えられて生きる意味を探そうと思っても、答えは見つかりません。待っていると自然に見つかるようなものでもありません。
そもそも私たちの人生が、やらなくては生きていけないことだけをやるために存在しているとしたら、これほど退屈なものはありません。だからこそ、私はあなたに「そんなことできなくても、生きていける」というものを、たくさん自分のものにして欲しいと思います。あなたの人生を楽しく、豊かなものにするためにもね。
追いつめなければ動けない人は、常に追いつめられた人生に甘んじるしかないのです。そういう人生を幸せな人生とはいいません。
どんな生き方をしてもいい。でも、人の役に立つ人になりなさい。そのために勉強するんだよ。
他にも色々とありますが、あまり核心的な部分を書くと、ネタバレし過ぎになってしまうのでこの辺にしておきます。
著者はなんと横浜の塾の先生!
ちなみに、この著者である喜多川泰さんとは、横浜市にある「聡明舎」という学習塾を作った方です。現在は代表の座を退いておられますが、まだ講師としてご活躍されているみたいですね。何を隠そう、私が独立する前の大手塾にいた頃、当時まだ代表をしておられた喜多川先生の塾の目の前の教室で働いていたことがあります。その頃から、教室からアフロの先生が出てきたりして(今はそんなことはなさそうですが)、「あの塾は何だか変わった塾だなー」という印象を持っていました。
この本には、勉強する意味はもちろんのこと、例えば勉強を継続するために大切な要素とか、受験勉強の効果的な進め方とか、塾の先生だからこその視点でたくさん役に立つことが書かれてあります。
大学受験生、高校受験生にはもちろん、一人でも多くの中高生に、また中高生の子を持つ保護者の方に是非読んでもらいたいおすすめの一冊です。