神奈川県公立入試を、得点分布から分析してみた。(第5回「社会編」)

世間はゴールデンウィーク最終日ですが、慧真館は今日から授業スタートです。私事ですが、ゴールデンウィーク中はほぼ自宅に引きこもり、塾のウェブサイトなどのお仕事をしていました。このブログもほんの少しカスタムされているのに気付いていただけたでしょうか。・・・気付かないですよね。別に気付いてもらわなくてもいいんです。自己満足ですから。

さて本題。今日はしばらく放置していた「神奈川県公立入試〜」シリーズの5回目、社会編を書いてみたいと思います。

2013年度に大波乱を起こした社会

入試制度改革初年度の2013年度、出題傾向と難易度が激しく変化し大波乱を巻き起こした科目が社会。2013年度社会の総評については、昨年度書いた記事で触れたので参考にしてみてください。

やっぱり難化した!?2013年度神奈川県高校入試分析

上の記事でも触れた通り、社会は2012年度と比べ物にならないくらい難化したので、当然のことながら得点分布も2012年度から大きく変化した。
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得点分布の最頻値で見ると、2012年度(黄緑色のグラフ)が80点台に対して2013年度(赤色のグラフ)が30点台と、これでもかというほど点数が落ち込んだ。8割以上の得点取得者の割合で見ても、2012年度が全体の約26%と、約4人に1人が8割を超えているのに対し、2013年度では全体の約6.5%の割合しか8割を超えていない。

では今年の2014年度の社会科はどうだったかというと、結論から言えば問題の難易度・傾向・受検生の得点推移ともに、2013年度と大きな変化はなかった。つまり、2013年度と同じような問題傾向で同じようなレベルの問題が出題されたが、2年目となる2014年度の受検生も結局点数が取れていないということだ。

上の青色のグラフから読み取れるように2013年度(赤色のグラフ)と得点分布はほぼ変わっていない。2014年度の最頻値こそ40点台で全体の16.9%ではあるが、2013年度の最頻値だった30点台も16.8%と、その差わずか0.1%。また、相変わらず8割以上の得点取得者の割合が全体の約6.3%しかいない。このことから2014年度もほぼ2013年度と同じような分布で推移していると言えるが、実は社会の平均点は昨年度よりも下がっている。

社会の難しさの原因は何か

「社会なんて暗記科目だから、ちゃんと覚えていれば点数は取れる」という考えの人が多いが、一昔前であれば暗記中心の勉強法で十分対応できた。しかし、現在の教育のトレンドは「思考力」と「記述力」。神奈川県の公立入試問題も、しっかりとこのトレンドを踏まえた問題を出題してきている。

では社会の何がそんなに難しいのか。主な原因は次の3つ。

  • ・解答条件が複雑・・・(例)5つの選択肢から3つ選び、古い順に並び替えるなど
  • ・情報が少なく推理が必要・・・(例)「郡」という一語だけで時代を特定するなど
  • ・複数の資料を用いた説明記述・・・もはや国語力

この3つのように、単純に語句を暗記しているだけでは点数に繋がらない問題が増加していることが、社会が難しくなった一番の要因と考えられる。

社会の入試対策法

社会は地理・歴史・公民の3つの分野からなるが、神奈川県の公立入試の傾向として、特に歴史の分野でより深い知識が要求される。日本史や世界史の時代の流れを正確に掴んでいないと、おそらく歴史で目も当てられない点数を取る。先ほど単純暗記では通用しないと言ったけれど、こと歴史に関しては、時代の流れや出来事・その結果を正確に暗記しておかなければ話にならない。

公民分野で易しい問題が多いのも、神奈川県の特徴の1つ。教科書の用語中心の出題がほとんどだから、しっかりと教科書内容を暗記していればそれほど解きにくい問題はない。思考力と記述力が教育のトレンドになろうと、まず必要事項を暗記するのが社会の基本である。

しっかりと基本事項を暗記、つまりインプットした上で、今度はインプットした知識を活用するためのアウトプットの練習が必要になる。このアウトプットの練習を怠ると、今の神奈川県の入試では点数が取れない。せっかくたくさんの知識が頭に入っていても、それを問題中で活用できないと話にならないのだ。

アウトプットの練習としては、とにかく多くの傾向の問題に触れ、知識の活用法を学ぶこと。全国の他の都道府県の問題や中堅私立の問題に取り組むことが、アウトプットの絶好の練習となる。

最後に

理科の分析でも触れたが、社会も理科と同様に、いや理科以上に「正確に問題文を読み取り、記述する」という言語能力が必要となる。理科や社会の知識があるのだが、「正確に問題文を読み取る」ということができないことが原因で、得点できない受検生が多い。

正確に問題文を読み取るとはどういうことか。「日本語を母語としているのなら、日本語で書かれている問題文がなぜ読み取れないのか。」と疑問に思われる方もいるだろう。正確に問題文を読み取るということは、すなわちこの設問が何を解答することを求めているのか、この資料から何を判断することを求めているのか、つまり「答えるべき内容」を読み取るということだ。
勘がいい人ならもうお気付きだとは思うが、問題から答えるべき内容を読み取るということは、まさに国語そのものである。

このシリーズのまとめで何度も書いているが、神奈川県の入試が確実に「国語力重視」にシフトしてきている。英数理社の基本的な知識や解き方を身に付けているだけでは、根本から神奈川県入試に対応できなくなってきたということだ。

次回の「神奈川県公立入試〜」シリーズ6回目で、5科目の総評として、このあたりのことをもう少し詳しく書いてみようと思う。